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特集「ザ・クラシックス」

2016年7月29日

特集「ザ・クラシックス4」⑦ 
トリコロール/白の愛(1994年 社会派映画)

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監督 クシシュトフ・キェシロフスキー

出演 ジュリー・デルピー/ズビグニエウ・ザマホフスキ

 

シネマ365日 No.1830

死んで妻に復讐する男 

特集「ザ・クラシックス4」

女も女だけど、男も男ね〜と思いながら映画の中盤まできました。ひとことで言うと、一方的に妻に離婚された夫の復讐譚です。離婚の理由は「性的な満足を得られない」つまり夫が不能であるから。日本でも立派な離婚の理由にはあげられるけど、それだけで結婚生活を解消する100%の理由になるのかというと、ちょっと首をひねるのよ。もともと仲のいい夫婦だったら、セックス=挿入がすべてではないだろうし、こういう悩みの代替案って、専門のドクターならひとつやふたつの治験例はあるでしょうよ。でもそんなこと言い出すとこの映画はなりたたないのね。妻ドミニク(ジュリー・デルピー)は、もう少し時間をくれと懇願する夫カルロ(ズビグニエウ・ザマホフスキ)に、時間があろうとなかろうと同じよ、愛していないのだからとバッサリ。夫のトランクを車から放り出して走り去る。ふたりは美容師だ。ワルシャワの美容師コンテストでカルロが優勝し、ドミニクが惚れ、ふたりは結婚しパリにきたのだ▼カルロはカードも差し押さえられる。同郷のミコワイという男と知り合い、トランクのなかに入って4時間、空輸されてポーランドに着くものの、強盗がトランクごとさらい、中からでてきた薄汚いオッサンに腹をたて、ボコボコに殴って放り出す。ヨレヨレで兄のやっている美容院にたどりついたカルロが考えたことは、元妻への復讐だった。地道に働く兄を尻目に、いかがわしい両替屋の用心棒となり、土地の買収で大金を得るや、商才を発揮して事業拡大、たちまち地元のセレブにのしあがる。風体も顔つきもガラッと変わり、どこからみてもバリバリの実業家、というよりマフィアも顔負けの押し出しである。ミコワイはカルロの右腕になった。信頼できる部下や兄といっしょに国際ビジネスを展開、カルロの前にもはや不可能はない。パリにいる美容師の元妻と、ポーランドで成功した元夫。本来ならまじわるはずのない2本の線が、なぜまじわったのか。カルロが復讐のためにとんでもない計画をたてたからだ▼トリコロール三部作のうち本作だけがコメディっぽいといわれるのは、荒唐無稽なこの計画のためだろう。カルロは元妻を呼び寄せるため、偽装死するのだ。ただ死んだだけでは「あ、そう」で終わりだから、全財産を元妻に譲ると遺言する、もちろん弁護士をたてた正式のものだ。死体は忠実な部下が調達し、ミコワイが葬儀一式手配し、もちろん兄も一枚咬む。葬儀の当日カルロは墓地で双眼鏡を手に、元妻が泣いているのを見た。やっぱり、おれを愛していたのだ、とカルロは確信、胸のつかえがおりたのか、つぎなる行動は大胆、妻の帰りを裸でベッドに入って待ち受けた、死人が生きている、ドミニクは仰天する。「君は墓地で泣いていたね」と言ったカルロに「あなたが死んだから」と素直に言う。ドミニクの本心を知って、自信を取り戻したカルロはめでたく彼女を最高に満足させる▼カルロの死に不審を抱いた警察は、全財産を受け取る元妻に殺人の疑いをかけ収監する。カルロは手を回し、刑務所の鉄格子の下に立つ。ドミニクが窓に姿をよせカルロに手話で話しかけた。ジュリー・デルピーが自分で解説していたが、ここの意味は「わたしが刑務所を出たら、あなたと旅立ちましょう、それとも丸い輪でリングを示しているのは、旅に出ないでここに残って、結婚しましょう、かしら。とにかく女は男に愛していると伝えるのよ」。カルロの頬を、滂沱と流れ落ちる涙を映して映画はエンドである▼「青の愛」では全財産を夫の愛人の息子に、本作では復讐の手段とはいえ、全財産を元妻に、キェシロフスキ監督の主人公たちはみな気前がいいわね(笑)。愛情はお金では買えないけど、愛情を示す有効な手段というわけね。自分が死んだだけなら妻はこないけど、全財産を譲られるとなったら絶対来る、なんて読んでいるわよ(笑)。しかしまあ、ドミニクが心底イケズで気の強いだけの女でなく、可愛げのある女で終わったのはよかったわ。ジュリー・テルピーって透明感のある、実際はいざしらず、はかなげな感じを漂わせる女優でしょう。だからラストシーンの手話の(愛している)が効くのよね。これがアンジーやミーガン・フォックスだと、どんな手話をしたところで(よくもやったな、いまにみていろ)だと思っちゃうわ。

 

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