女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

シネマ365日

2016年8月2日

特集「気になる女1」② ヴェラ・ファーミガ 
ギプスの女(上)(2008年 ミステリー映画)

Pocket
LINEで送る

監督 カルロス・ブルックス

出演 ヴェラ・ファーミガ/ニック・スタール

 

シネマ365日 No.1831

手足を切断して 

特集「気になる女1」

エロチック・サスペンスというより、もっと硬派だわね。カルロス・ブルックス監督についてのデータがあまりないのだけど、85分の尺で充分、充実していました。ヴェラ・ファーミガがよかったです。彼女の代表作は他にもあるけど本作はイチオシ。「不妊」で悩む主婦が、子作りのため一線を越えていく「情事 セカンド・ラブ」に続く主役です。35歳でした。脚本もカルロス・ブルックスね。うまいわ。ヒロイン・フィオナ(ヴェラ・ファーミガ)は、変態趣味でも頭のおかしな女でもない、真面目な目的で下半身不随のアイザック(ニック・スタール)に近づいたことがわかります。監督は彼女の本意を最後まで伏せて「身体完全同一性障害」という医学的な症状をうまく絡ませ、フィオナが手足の切断された相手、あるいは麻痺した相手に異様に興奮する性向があるかのように思わせました。二つの流れは無関係ではありませんが、特にエロチックとか、ベッドシーンが変態的とかいう映画ではないです▼アイザックはニューヨーク公共放送のDJ。8歳のとき交通事故で両親を亡くし、自分は下半身麻痺となった。セックスはできるが立てないし歩けない、一生車椅子生活だ。障害はあるが明るい青年で、職場の同僚たちはデートの相手を見つけてやったりするが、アイザックはかつて恋人から「結婚するのは歩ける人」と言われた苦い経験がある。「脚の切断を25万ドルで医師に頼んだ」男がいるという情報が局に入り、アイザックが取材に行く。情報提供者は「古代中国の少女」と名乗った。後日アイザックのパソコンに「少女」から「車椅子とのつながりを話す集会」があるとメールが入り、アイザックは出席する。5人の参加者が車椅子で出席して、彼らは一様にアイザックのようになりたい、つまり、麻痺した無感覚な体になりたいというのだ。アイザックが、いつか歩けるようになるため日々努力しているといったら、みな白け「今のままがパーフェクトなのに」と不満そうに車椅子をたたみ、健全な自分の足でさっさと歩いて出て行ってしまう。なんともない体を麻痺させたい? アイザックにしても観客にしても、狐につままれたような開幕です▼そこへ「古代中国の少女」ことフィオナが現れる。彼女は「健常者が麻痺を望む理由を研究対象にしている」と言います。美術館で発掘した考古物の保存修復の専門家です。アイザックがフィオナの家に招かれると、ギプスを装着して現れた彼女が「10代のころからギプス姿で歩き回れる家を夢見ていた」と打ち明けます。夢は叶ったわけですがフィオナは満足せず「いよいよ明日、公共の場に車椅子で出掛ける」ついては一緒に行って欲しいとアイザックに頼む。デートの場所はレストランだった。車椅子で入ってきた彼女は興奮気味に「見て、あの人わたしをじっと見つめているわ。信じられない。なんとも言えない気分よ。長年この瞬間を夢見てきたの」と興奮を示す。フィオナの説明によれば、ギプスや車椅子に憧れるのが「愛好者」で次が「偽装者」。彼らは実際にギプスや器具を身につけ「たまに障害者の気分を味わう人たち」、その上は「志願者」で、実際に麻痺を望み行動に移す。「偽装者や切断希望者は身体完全同一性障害と呼ばれ、数千人はいる。病理は不明だが障害は彼らの夢」で、彼らは「完全な身体を求め、手足を失う」▼フィオナとアイザックは関係を持つ。アイザックは欲しかった靴を買い、履いたとき足首が動いた。必死で練習し松葉杖で歩けるようになった。奇跡だ。フィオナは「車椅子生活になることをカムアウトする」というのだ。さらにエスカレートし「もう志願者でいたくない。麻痺した体にしたい。あなたの手でやって」とアイザックに頼む。冗談じゃない。アイザックは靴を脱ぐと歩けなくなる。まじないみたいだけど、実際そうなる。それを知ったフィオナは靴を奪い、返して欲しければ「わたしを麻痺させて。わたしは本当の人間になるのよ」と繰り返す。どういう意味かさっぱりわかりません。最大の謎をこしらえておいて、映画はどんでん返しに向かって進んでいきます。

 

Pocket
LINEで送る