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シネマ365日

2016年8月7日

特集「気になる女1」⑦ アナ・ケンドリック 
マイレージ・マイライフ(下)(2009年 社会派映画)

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監督 ジェイソン・ライトマン

出演 ジョージ・クルーニー/ヴェラ・ファーミガ/アナ・ケンドリック

 

シネマ365日 No.1836

それでいいのよ 

特集「気になる女1」

ナタリー(アナ・ケンドリック)の人生観は、年齢に似合わぬこだわりがある。彼女はライアンに訊いた。「結婚はしたくないの」「願望はないね。結婚に価値を感じないよ。人間関係は人生をもっとも重くする。肩に紐が食い込む。そんなに言うなら、結婚のよさをアピールしてみろよ」「一生話し相手がいる。孤独死じゃない」「僕の祖父母も両親も、最後は介護施設に入ったぜ。どうして急にそんなこと聞く」「彼に振られたの!」「大丈夫だよ、OKだ」結婚非願望者から「OK」といわれナタリーはますます落ち込む。そこへアレックスが到着。半泣きのナタリーに訳を訊く。「彼がメールで別れを? サイテー男ね」「サイテー男に惚れたわたしがバカなのよ」アレックス騒がず、同情もせず「仕方ないわ。面白い男だったけど、蓋を開けたらサイテーだったってこと、あるものよ」ナタリーはアレックスの対応に、落ち着きを取り戻します▼「一緒に暮らすつもりだったの。わたしの計画では23歳までに結婚して子供も産んで、キャリアも積んで、夜は遊んで、車はチェロキー」アレックスを見て「あなたがたの世代は女性の自立に貢献してくれた。感謝しているわ」「どうも(苦笑)」「でもいくら成功してもいい男を捕まえないと、人生無意味だわ」「アレックス「彼が運命の男だったの?」「うまくいくと思ったの。彼、ポイントは高いし」「ポイント?」「ホワイトカラー、大学卒、犬と映画が好き、背が高くて優しい目、仕事は金融で週末はアウトドア。車はフォーランナー。犬はラブラドール。あなたは、アレックス?」「34歳になると容姿は気にしない。背は自分より高ければいいけど。ダメ男じゃなく一緒にいて楽しい人ね。子供が好きで、欲しがる人。子供と遊ぶ体力のある人。収入もわたしより多いといいわね。逆だと悲惨よ。髪もあるほうがいいけど大きな問題じゃない。あとは優しい笑顔よ」ナタリー「わたし、もう生きていけない。いっそ女に走ろうかな」「経験あるけど、あれは大変よ」。ライアン、アレックスをチラリ。ナタリー「仕事に生きようかな。ベッドで寂しくても妥協したくない」「若いから妥協を負けと思うのよ。自分にあった相手なら妥協と感じない。妥協を批判するのは23歳の女子だけ」▼そうか。妥協は悪いことでも恥ずかしいことでもないのだ。ナタリーはアレックスが信頼に足る大人に見える。でもライアンは「気軽な関係」で片付け、それ以上大事にしようとはしていない。ナタリーは食ってかかります。「一人きりの人生がそんなにカッコいいの? 人と関わらない生き方をしているあなたの殻の中に、飛び込んでくれた女性を<気軽な関係>呼ばわり? あなたこそガキよ」。彼らは出張の旅から本社に戻ります。妹の結婚式を明日に控えたライアンは、アレックスを呼び、家族に紹介する。ところがその夜、妹の婚約者が「やっていけるか自信がないから結婚をやめる」と言い出し、大パニック。姉は「ライアン、あなたは家庭にいないも同然だった。一度くらい家族らしいことをしなさい。彼を説得して」と、もっとも不適任な弟を部屋に放り込む。婚約者は寂しそうに一人「ビロードうさぎ」を読んでいた。ライアンは「僕がこんなことを言うのはおかしいのだけれど」と前置きし「君の人生で幸せだったとき、一人だったか」と尋ねた。「いや」「誰かいたか」「いた」「これからもいてほしいか…」ライアンは黙りこんだ婚約者の肩を抱いて、妹たちが待っている部屋に連れていく▼ライアンはシカゴに飛んだ。アレックスの住む街だ。探し当てた彼はベルを鳴らした。アレックスが現れる。喜ぼうか、どうしようか、戸口に立ったまま戸惑うアレックスの背後を、笑い声を立てた子供が走る。中から男の声で「誰?」「道に迷った人よ」。ライアン黙って去る。駐車場で落ち合い「会いたかったのだ。家族がいるなら言えよ」「あれが本当のわたしよ。お互い合意のはずよ」「わからない」「割り切った関係だったでしょ」「わからない、なぜだ」「あなたは逃避の名人ですもの。あなたはどうしたい?」「わからないよ」「わたしは大人の女よ。会いたくなったら電話して」実質、別れの言葉だ▼本社ではナタリーが解雇した女性が自殺していた。ナタリーはメールで辞表を送ってきて辞めた。「どこへ?」「さあね」と上司。ネット解雇は凍結、出張が再開されることになった。ライアンは「空の戦士」として復活。ナタリーは求職した先でライアンの書いた推薦状を読む。「彼女を採用することは貴社の最高の決断になるでしょう」。ライアンは夢だったマイレージ・1000万マイルの偉業を達成、飛行機に名前を刻まれ今日も空の上。筋書きは平凡で悪くするととりとめがなくなるテーマです。原題からして「Up in the Air」(空を漂う)を、ジョージ・クルーニー、ヴェラ・ファーミガ、アナ・ケンドリックスたちがしっかり地面に縛り付けています。これがベストという選択肢を監督は示していません。アレックスの「割り切った関係」も角度を変えると、ご都合主義のエゴイスティックな、ただの韜晦にも見えます。ライアンも所詮は会社に使われる、雇われ企業戦士と言えるかもしれない、ナタリーだって最初の鼻息はどこへ、現実対応能力の不足は無残なほどだ。でも人生はそんなことを、いちいちほじくり返して損益決算書を出せというようなケチな「子供」じゃない。豊かな混乱の中で、人を生かし、人は生かされていく。行き着く先はわからない。でも生きる途上にいて、今ここに至った自分に(そうだ、これでいいのだ)と、やさしい気持でいえるようになる、そんな映画でした。

 

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