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シネマ365日

2016年8月8日

特集「気になる女1」⑧ カリン・ヴィアール 
フランス、幸せのメソッド(2011年 恋愛映画)

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監督 セドリック・クラピッシュ

出演 カリン・ヴィアール/ジル・ルルーシュ

 

シネマ365日 No.1837

変身の予測に一票 

特集「気になる女1」

ラストに見せるヒロイン、フランス(カリン・ヴィアール)の微笑が意味深なのよ。どう考えても(男をひどい目に合わせてやった、いい気味)って感じなのよね。フランスと相手のステファン(ジル・ルルーシュ)は格差がありすぎる。大企業の一つ、二つを潰すとか、倒産させるとか言っているやり手の金融セレブ男が、失業中の子持ちの、それも出稼ぎに来ている家政婦を、まともに恋愛の対象にするとは思えない。初めからその場の成り行きの相手だったけど、男の軽すぎる扱いに女は失望する。で、ステファンの息子を自分の故郷、ダンケルクに連れていく、早く言えば誘拐ね。と言っても犯罪になるほど大げさな所業ではない、男を慌てさせるだけで終わりにするはずが、男の妻が騒ぎ立てて大事件にしてしまった。警察が出動し、フランスは逮捕。ところがフランスが勤めていた会社を倒産させたのはあの男だとわかり、町中の男も女もステファンに詰め寄る一方、フランスを逮捕させまいと護送車を取り囲む。騒動を窓から見ながらフランスはニヤリ。そこで溶暗のエンドマークだ▼セドリック・クラピッシュは青春三部作「スパニッシュ・アパートメント」「ロシアン・ドールズ」「ニューヨークの巴里夫」の監督です。小粒ではあるけれど、叙情豊かに人生の苦味を織り込んだ作品でした。青春の入り口から中年期の愛の再発見までが無理のない、等身大の成熟過程として捉えられていた。退屈一歩手前で、主人公たちがつぶやく味のあるセリフに、共感を感じました。ところが本作にそれがないのは、徹頭徹尾、男に魅力がないからだと思います。試しに、このおじさんのセリフを一つずつ書き出したら失笑ものね。いいトコないわ。だってね〜、彼が友人と笑いながらしゃべっている電話の内容ときたら「昨日、家政婦とやったのだ、それがけっこうよかったのさ」というノリです。こんな軽い男に自分は20年間勤続した会社をつぶされ、失業し、娘二人を抱えて悪戦苦闘する羽目になったのか。フランスはシングルマザーです。性格は明るいがどうも人が好い。娘たちを妹に預けてパリに仕事を探しに出てきた。家政婦で雇われたのがステファンの家だ。ステファンはどこから見ても情緒のない男。仕事にセンチメンタルは必要ない。必要ないのは感傷であってよいが、情感欠如は人間としての欠陥ですよ▼一人息子はまだ小学校。父親がいつも家にいないからすぐフランスになついた。ステファンとは便宜主義の塊で、元カノ、メロディと別居中、というのも他の女と浮気した。その言い草が「娼婦じゃないか。たった1回のことだよ」。メロディという女もよくわからない。男が娼婦と寝るときだってあるとしても、上から目線で「娼婦じゃないか」というほど、お前、値打ちのある男かよ。娼婦と寝たから別れるのではなく、娼婦の扱いに失望したから別れるという女だったら、もう少し救いがあったと思える。どっちにしても似た者レベルなのだ。そこへ一丁噛むフランスが、男の正体が分かったからと、工場を倒産させ1200人を路頭に迷わせた償いをさせてやると、笑いもできない愚劣な行動に出るなんて、いっそおバカ映画にすればよかったのだ▼もしラストのフランスの謎めいた微笑がなかったら、それでこの映画はおしまいだった。ところがどう思い返しても、フランスが今まで演じてきたほど人のいい女性ではなく、狡猾に、ふてぶてしく、可愛げを装いながらそんなものとっくに棚上げしてしまった、というふうな女になったことを予測させるのよね。案外これが監督の出したかった「女・熟年の開幕」なのかも、と思ったりするのです。超越セレブの雲の上の存在だと思っていた男が、モラルもヘチマもないコンマ以下の男で、それがわかると男の風貌さえ、フランスには品くだる顔に見えてくる。本作が薄い仕上がりの一因は、三部作のロマン・デュリスのような軽妙で繊細な男がいないことね。カリン・ヴィアールは、日本であまり知名度があると思えませんが、セザール賞の常連です。ゆるい映画だったけど、フランスの変身を予想させるラストの微笑に一票。

 

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