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シネマ365日

2016年8月25日

特集「B級クィーン1」③ 
ボーダーライン(2002年 サスペンス映画)

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監督 イヴリン・パーセル

出演 ジーナ・ガーション/マイケル・ビーン/ショーン・パトリック・フラナリー

 

シネマ365日 No.1854

ムショの精神科医 

B級クイーン ジーナ・ガーション

イヴリン・パーセルはジョナサン・デミと結婚し、一緒に映画を作っていた時期がありましたね。しばらく聞きませんでしたが、2013年にイヴリンは「ヒート・ストローク」を撮っています。よかったわ、健在で。「ライアー・ハウス」に続くジーナ・ガーション主演の映画です。わたし「ショーガール」以来彼女のファンでして、同作がケチョンケチョンに酷評されたとき、やたら腹を立てた覚えがあります。映画なんて面白けりゃいいだろ、それに、ジーナ・ガーションもエリザベス・バークレーも、大根かもしれないが面白い女優だろ、と一人で息巻いていました(笑)。賛成してくれるかどうかわからないけど、ジーナ・ガーションに対しては、彼女の出演するB級はみな面白いという、B級信者の妙な拠り所みたいなものがありまして、だから「バウンド」を見たときは、よくやってくれたウォシャウスキー兄弟(当時)よ、と絶賛したわよ。あの映画、実質主演はジェニファー・ティリーだけど、ジーナ・ガーションの鷹のような目は、フィルムノワールにあつらえたような、衝撃的な目だったわ▼猛禽類の鷹の目と、いつも締まっていないアヒル口のギャップが、またなんともいえません。「口閉じろ、口」と思わず注意したくなるほどの無防備な唇から、視線を上げると眼光炯々、射すくめるような双眸が。な、なんだ、この人、どうなっているの、と惑乱しているところに、おもむろにセリフなんか入ると、中身はどうでもとても重みがあるように感じさせるから不思議です(本作のセリフの中身がないという意味ではありませんが)。ジーナの役は刑務所勤務医の精神科医ライラです。ムショでセラピーを受ける囚人たちはみな彼女のファン。そら、そうだろ。美人セラピストが懇切丁寧に相談に乗ってくれる、中には「出所したくない」なんていいだす困った囚人も現れる。エドもそのひとり。刑期を無事終え娑婆に帰るのに、「先生のセラピーを受けたい、他の医者にはかかりたくない」とジェームズ・ディーンのような拗ねた視線でライラを見つめ、ライラは噛んで含めるように社会復帰の心得を諭すのです▼ライラは離婚係争中で、ふたりの娘の親権を夫と争っている。裁判所の指示で夫の単独親権となり、娘たちは夫が連れていった。毎日刑務所で殺人犯やレイプ魔と話す環境は、子供の養育上望ましいものとはいえない、がその理由だ。患者に対する医師の仕事に、望ましいも望ましくないも、あるの。ヘンなの。ライラは寂しくてすっかり落ち込み、薬に頼り、酒も飲むようになる。そこへ元夫と愛人の殺される事件が。犯人は娘たちを納戸に押し込めてから殺人に及んだ、というから「ずいぶん配慮のある犯人じゃないか」と刑事はライラに嫌疑をかける。刑事のひとりメイシーがマイケル・ビーンだ。「ターミネーター」で28歳の青年だった彼は、苦み走った46歳の壮年になっています。ライラと恋人同士だ。捜査を進めるうち、状況証拠が重なり(まさか…)という疑問に苦しむ。エドは妹と一緒に暮らしながら、真面目に働いていたが、新しいセラピーの先生とは気が合わない、というより、ライラが恋しい。自分がこんなに愛しているのだからライラも愛してくれているはず、いや、きっと一緒に暮らすのを待っているはず、という彼の妄想は次第に膨らんでいく▼え〜と、ジーナ・ガーションの作品の特徴として、突っ込みを入れる気になれば、いくらでもできるというおおらかな傾向があります(笑)。本作も例にもれず、犯人は早い段階ですぐわかりますが、そこはそれ、ライラが酒を飲んで薬も服用して、記憶が飛んでしまっているときに犯行が行われたから曖昧でも仕方ないとか、ライラの女友だちがこよなく優しく、見るほうとしては「バウンド」再びか、と思ってしまうとか(思わんか)、そういう落とし穴らしきものは設けてあるけど、まず誰も落っこちないでしょう。それを作り込みが浅いといって目クジラたてるより、小さなことは気にすんな、と大目に見てしまうところがジーナ映画なのだ。得なのである、この人、ナオミ・ワッツと一緒で、女性に嫌われないタイプだと思うわ。ジーナ自身、オスカー狙いとか、映画賞狙いとかの欲があまり見受けられません。B級大好きを自認し我から楽しんでいる。とびきりキツイ美人顔を、間の抜けたアヒル口が救っている。B級だけれど演技の見せ方はツボを外さない。力量はあるのにガツガツしない。そんなサラサラしたところが好感度につながるのだと思える。

 

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