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特集「ベストコレクション」

2016年9月1日

特集「天高く初秋のベストコレクション」① 
砂上の法廷(2016年 ミステリー映画)

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監督 コートニー・ハント

出演 キアヌ・リーブス/レネー・ゼルヴィガー/ググ・パサ=ロー

 

シネマ365日 No.1861

嘘の壁

特集「天高く初秋のベストコレクション」

久々にキアヌ・リーブスのまともな映画を見た気がします。よく練られたいい映画だったわ。改めてコートニー・ハント監督のうまさを知りました。彼女の映画にはサンダンス映画祭のグランプリ「フローズン・リバー」があります。この映画に惚れ込んでいたキアヌは、是非ともハント監督と一緒に仕事をしたくて、オファを快諾したそうです。レニー・ゼリヴィガーも久しぶりでした。キアヌは51歳に、レネーは47歳になりました。青春は過ぎゆく。二人とも、疲れと頽廃の影がにじむ、人生の中年を演じて似合う年齢になったのですね。どの程度、評判になったかどうかは知らないけど、2016年公開の作品中でも佳品だと思えます。二転三転する脚本のうまさに加え、キアヌとレネーのどんでん返しにも、キアヌがひとりで締めくくったラストの寂蒔(じゃくまく)にも、深い哀切さがありました▼きっちり構成された法廷劇だし、映画を見て損にはならないと思うからネタバレはやめますね。キアヌは弁護士ラムゼイ役です。巨額の資産家、大物弁護士ブーンが自宅で殺された。発見者は妻のロレッタ(レネー・ゼルヴィガー)だ。息子のマイクが部屋に入ってきて、自分が殺したという。ブーンの友人であるラムゼイが弁護を引き受けるが、マイクは一言もしゃべらない。裁判が始まっても沈黙したまま。事実を話してくれないと弁護士は手の打ちようがない。ラムゼイは窮地に陥る。助手であるジャネル(ググ・パサ=ロー)は「生きた嘘発見器」という特技がある。手の組み方、足の位置、視線の動き、ちょっとした動作で証人が嘘をついている根拠を示す。彼女によると検察側の証人はみな、本当のことを言っていない。「証人は嘘をつく」のがラムゼイの持論だ。検察側証人の「嘘の壁」を切り崩していくキアヌ・チーム、健闘です▼検察の攻勢に防御一方のラムゼイはジャネルにいいます「フォマンとアリの試合を知っているか。チャンピオンに挑戦したフォアマンは7歳下だ。だれが見てもアリの最盛期は過ぎていた。試合は一方的にフォアマン有利で進んだ。アリは打たれる一方だった。ロープ際で耐え、フォアマンが打ち疲れるのを待っていたのさ。フォアマンのパンチが弱くなったとき、アリが息を吹き返した。ノックアウトさ」。ラムゼイに勝算はあるのか。沈黙を守っていたマイクが証言するといった。ラムゼイは自分に断りなく証人申告したマイクに驚く。なぜだ。殺人事件の解明をめぐって、二重、三重の謎と罠が明らかになっていきます。マイクの証言は衝撃的だった。「僕が父を殺した。原因は旅行です。僕は終わったと思っていたけど、終わっていなかった。父のチャーター機にはドアがあって、父は僕が大学に行けば機会がなくなると知っていた」「機会とは」「レイプです。家を出たら僕をレイプできなくなる。昔は父が好きでしたが、嫌いになった」「いつから始まった?」「12歳のときから」「今まで誰かにいったか」「いいえ。機内で言われました。家に帰ったらまたやると」。陪審員席には声にならないうめき声が渦巻いた。裁判は逆流したのだ。一挙にラムゼイ有利に傾いた。ジャネルだけは冷静だった。「証人はみな嘘をつく。彼が事実を話していないとは思いませんか。マイクが父を刺しておらず、虐待が嘘だったら?」ラムゼイの答えは意外にも素っ気なかった「そうだな…どうでもいいさ。マイクを無罪にすることが大事なのだ」▼父による虐待が母親にもあったことは息子も知っていた、近所にも知られていた。「父は母に冷酷でした。バカとも、醜いとも言っていました」「彼女は毎日ひどい扱いを夫から受け、生気を失っていた」「大した学歴もないくせにとロレッタに怒鳴った。よせよ、と止めたら口出しするなと決めつけた。彼との友情はそこで終わりました」。検察は食いさがる。「父親の虐待は息子だけの証言だ。だれも見た者はいない」みな嘘をついているとしたら真実はどこに。それはどうやって見つければいい。いや、見つけ出さねばならぬ真実とは、果たしてあるのか。犯罪の裏に何がある。なぜブーンは殺されなければならなかったのか。ラムゼイは被告の無罪にこだわった。真実より無罪だ。マイクが12歳から受けていた性的虐待が決定打となり、ラムゼイは「無罪」を勝ち取る。映画は回想シーンが所々で挿入されます。ラムゼイはあるとき、ブーンから冗談のように言われたことがあった。「女房が浮気している」どう返事していいかわからないラムゼイにブーンは笑い飛ばす。「冗談さ。俺なしにあいつは生きていけないよ」▼逆巻く虚実、と書いても大げさではないと思います。レネーもキアヌも頑張った。ググ・パサ=ローがよかったですね。弁護側が無罪を獲得したあと、彼女の目がキラキラと光を放つシーンがあります。彼女は何を見ているのか。そこに真実があります。

 

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