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特集「ベストコレクション」

2016年9月10日

特集「天高く初秋のベストコレクション」⑩ 
アメリカン・ホラー・ストーリー/精神科病棟(下)(2011年〜 ホラー映画)

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製作 ライアン・マーフィー/ブラッド・ファルチャック

出演 ジェシカ・ラング/サラ・ポールソン/ジョセフ・ファインズ

 

シネマ365日 No.1870

悪は歩み寄る 

アメリカン・ホラー・ストーリー

この映画の楽しみ方はいくつかあるだろうけど、男の描き方もそのひとつ。威厳を崩さず大真面目に表現している。例えばこの二人、ハワード神父がジョセフ・ファインズです。神父は精神科病棟のトップである。彼の管理下に、シスター・ジュード(ジェシカ・ラング)はいる。ジュードはいつか神父とローマに行き、女子修道院を司る地位に上がることを夢見ている。イケズでサドのジュードでもそういう可愛いところがある。アーデンは修道女のマリーを愛している、と言っても根がヘンタイだから彼なりの愛し方なのだが。マリーが悪魔に憑依され、そのずる賢いこと、神父も医師も手がつけられなくなった▼ジュードと医師は犬猿の仲だ。お互いが目の上のコブで、いつか相手を蹴落としてやろうとチャンスをうかがっているが、そこはそれ、年増のエラソーな女にのさばらせてたまるか、という「ジュード嫌い」で神父と医師は共同戦線、ジュード追い落としを図り成功した、ジュードはあらぬ疑いを医師にかけ、名誉を傷つけた罰として左遷を言い渡されます。ところがそこへ悪魔払いの儀式が必要になった、神父と医師が立会人になる決まりがある。ハワード神父は「君も一緒にいてくれ」とジュードに頼む。ジュードは患者の様子を見て、取り憑いているのは、ハワードの微弱なオーラで追い出されるようなタマではないと見当をつける。案の定、一旦抜け出た悪魔はするりとマリーに乗り移り、マリーはたちまち神父を誘惑した。神父はジュードに嘆く。「僕は貞操を奪われてしまった。聖職者を辞めるべきか。教えてくれ、教会を去るべきなのか、どうすればいい」ジュード眉も動かさず「殺すしかない」…なんたる決断力の違い▼医師はマリーが死の天使に連れ去られ、がっくりきて生きる気力も失せた。病棟の収容者を犠牲にした実験もやめた。彼は奇形となったモデルを洞窟の外で射殺する。マリーの遺体を火葬にすると主張する。悪魔がマリーの細胞まで汚しているから、焼かなければいけないといって炉に入れるのだ。医師は遺体にすがりつき、ストレッチャーの上に重なって、一緒に炎の中に滑り込むのである。これまでの冷酷無慈悲な科学者から、情緒纏綿のセンチメンタリズムへの転換にボーゼン。もうひとり、無実でありながら妻殺しの容疑者として収容されたキットは、宇宙人が降臨した人間という設定なのだが、多分宇宙人とは魂の救済の象徴なのだろう、キットは何度か宇宙人に危機を救われ、彼の子供たちは娘ジュリアも息子トーマスも、学力優秀で心優しく、社会に有益な人物となる。キットは40歳という若さで、膵臓ガンで死ぬのだが、その最期は突如として車椅子から消えていた、というSFふうだ▼ジュードは神父によって、精神科病棟で飼い殺しにされていた。落魄の身を偶然目にしたキットはジュードを引き取る。キットの古い友人となっていたラナは、その経緯を聞いて、キットは何か大きな「救いのミッション」を「宇宙人」から預かっているのだと思う。ラナは精神科病棟のドキュメンタリーを発表し、作家として成功した。だがキットはいう。「君は真実を書いて精神科病棟を閉鎖させるはずだったのに、君の書いたものは真実とはいえず、病棟も閉鎖されていない。施設は棄民の場所となっている。安っぽい有名人ではなく、真実の報道者になるはずだったろう」。ラナは奮起する。インタビューを受け、真実が書けなかったのは当時、ゲイに対する偏見がまだ大きかったのと、言えないことがあったからだ、強姦にされ妊娠した自分の子供は死産したと書いたが、実は生まれた男の子はすぐ取り上げられ、どこに預けられたのかは知らない。その子は紛れもなく殺人鬼・オリバー・スレッドソンの血を引いている、と公表した▼その子は48歳となり、母を殺すことだけを念願に生きていた。取材陣に紛れ、自分の部屋に忍んで来た息子を、ラナは招いて目の前に座らせ「終わらせましょう。あなたは少なくとも今までに5人を殺した疑いがある。でもあなたは悪くない。私の責任よ」いうなりラナは拳銃で息子の額を撃ち抜く。まったく、凄まじい女ばかりね。最後にやはりジュードを。彼女はキットの子供たちを我が子のように可愛がり、死期を迎えた。子供たちはジュードのそばを離れようとしなかった。「二人に言っておくことがあるの。よくお聞き。ジュリア。あなたは男のいいなりになっちゃダメよ。自分を男より下だと思っちゃダメ。今は1970年代よ。望めば何でもできるの。トーマス。お金のためだけに働かないようにね。愛せるものを見つけるの。大きなことをなさい」いつの間にかベッドのそばに死の天使が来ていた。「ジュード、準備はいい?」「いいわ。連れていってくれる?」冷たい接吻を受け、ジュードは安らかに息を引き取る。神父は自殺した。彼を自殺に追い込んだのはラナの手記だとして、彼女は非難を浴びたが、所詮悪魔に惨敗した神父ではないか、自分の手記があってもなくても、首でも吊るか、車に飛び込むか、しただろうとラナは恬淡。思えば精神科病棟・ブライヤークリフが彼女の人生を変えた。病棟に取材を申し込んだ日のことをラナは鮮明に覚えている。野心に燃えたラナにシスター・ジュードがいう。「あなたはいつか思い知るわ。本当の孤独と悲しみを。夢を追う女は多くを犠牲にするのよ」「わたしは大丈夫です」ジュードは笑いながらいった。「淫らなラナ。覚えておいて。悪に近よると悪もあなたに歩み寄るのよ」。

 

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