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特集「ベストコレクション」

2016年9月11日

特集「天高く初秋のベストコレクション」⑪ 
アルティメット・サイクロン (2016年 パニック映画 日本未公開)

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監督 デヴィッド・ハックル

出演 ジョン・トラボルタ/ケイト・ボスワース/シャロン・ストーン

 

シネマ365日 No.1871

女優陣とトラの映画

特集「天高く初秋のベストコレクション」

アルティメット・サイクロンとは「究極の台風」とでもいうか。日本の台風というより、太平洋南部、インド洋で発生する熱帯性低気圧が「サイクロン」。でもこの映画、あんまり台風のこと描いているわけじゃないのよね。ディザスター・パニックものにはちがいないけど、災害悪天候より、登場人物たちの現在に至った立ち位置を描いています。例えば、シャロン・ストーンが演じる、ラインマンの青年ダンカンの、アルコール依存症の母親。ラインマンとは電力線を架け保全修復し、どんな災害にも電力網を死守する架線作業員のこと。危険と背中合わせの工事中、死傷者は多く、家族は気が休まらない。小さな子供をかかえ、ストレスで神経がすり減る妻たちも少なくない。シャロンは夫に死なれ、収入も乏しく、生活に疲れてアルコールに逃避した初老の母親です。もともと陰のある役がうまいのですが、救いのない老残の女を、ボロくずみたいに突き放して演じました。その凄み、やっぱり並みの女優じゃないです▼ケイト・ボスワースのベイリーは、幼い頃事故で父と母を同時に亡くし、叔父ボー(ジョン・トラボルタ)に育てられた。カフェでウェイトレスをしながら、大学の入学資格は取ったのに、なぜか故郷の町にぐずぐずしている。叔父貴は美しく育った姪が自慢のタネだ、目に入れても痛くない。ベイリーの父、つまり自分の兄の死は、事故とはいえ責任を感じていた。ボーはラインマンを統括する現場監督だ。男の世界の、男の中の男としてトラが登場します。男ゆえというか、姪がなぜ町を離れるのをぐずっているか、そこのところがボーにはピンとこない。群がる男はみな、姪を狙うゴロツキだと見なす。ベイリーとダンカンは恋仲だったのですが、ダンカンはどうせベイリーは大学に進学するため去ってしまうから、傷の浅いうちに別れようと距離を取り、二人は別れたのだと噂が立つようになった▼それとこの人がいます。ジュリー・ベイツです。ニコール・キッドマンに似た感じのシャープな美人です。ボーの家の向かいにラインマン家族が越してきた。夫ユージンはイラクの帰還兵だ。神経が参ってしまい、妻カーリン(ジュリー・ベイツ)を寄せ付けない。寂しくて話し相手が欲しくなったカーリンは、向かいのベイリーをワイン1本さげて訪ねる。ベイリーはグラスに手をつけない。二度目、カーリンと飲みに行ったベイリーは聞く。「母親って楽しい?」「ええ、とても。赤ん坊のときは、時間はとられる、寝不足にはなる、そりゃ大変よ」ベイリーのグラスに目を移し「また飲んでないのね」「飲みたくなくて」一泊おいてカーリンは聞く。「父親は?」ここの呼吸、男性にわかるかしら。アルコールに手をつけないベイリーが、母親は楽しいかと尋ねる、妊娠に決まっている…ベイリーが答える。相手は「ラインマンよ。まだ伝えていないの。叔父は彼が嫌いなの」「どうするの?」「わからない。あなたは?」カーリン、ぎょっとしたように「何が?」「見たの。あなたがタクシーに乗って出かけるところ」「女は何でもお見通しね」暴風雨よりよっぽど大変になりそうな情勢を含みつつ、映画はいよいよサイクロンに突入します。肝心の嵐の描写が物足りないという捉え方もあるでしょうが、きめ細かい女性たちのエピソードが、本作をただひたすら大騒動のパニック映画に終わらせていません。「ソウ」シリーズの美術監督、あるいは「ソウ5」の監督らしいデヴィッド・ハックルの感性だと思います▼ベイリーをつけまわしていたストーカーをカーリンが追い払った、それを根に持ったストーカーがカーリンを襲撃する、一歩手前で夫のユージンが止めに入るが、銃弾はそれてベイリーに当たってしまう。救急病棟に搬送されたベイリーの手術中、嵐によって北米一帯に大停電が生じる。動けるチームはボー隊だけ。ボーはダンカンを連れて架線の現場に急行した…ボーは暴風の中を鉄塔に上がり、接続を直すのですが自らも犠牲になる。覚悟を決めたボーがダンカンに「お前はいい男だ。ベイリーを頼む」と姪の幸福を託します。こういうベタをバシッと決めるのがトラなのだ。女優陣とトラで見せています。台風? どっかいったみたいね。

 

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