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特集「ベストコレクション」

2016年9月13日

特集「天高く初秋のベストコレクション」⑬ 
ジャングル・ブック(2016年 ファンタジー映画)

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監督 ジョン・ファブロー

出演 ニール・セシ

 

シネマ365日 No.1873

残念だったカー

特集「天高く初秋のベストコレクション」

モーグリ役のニール・セシはニューヨーク出身のインド系アメリカ人。インドを舞台にした映画にインド系アメリカ人を持ってくるところが、人材豊富なハリウッドというか、資金豊かなディズニーというか、やりくり算段、あるもので間に合わせる汲々とした発想が全然ないですね。そのせいかまあ、全編見事な映像に圧倒される。モーグリ以外はCGだけど、こうなると実写だろうとCGだろうと、口アングリするしかないのが、かえって楽しくなる。オオカミに育てられた少年モーグリ(ニール・セシ)が、ジャングルの動物社会で生きる友情物語。アニマル共同体は規律を守り、掟破りを許さない厳しいルールの世界でもある。それはそうと、ひとつ残念なのがカーの扱いね。カーとは巨大なニシキヘビです。声はスカーレット・ヨハンソンが受け持ち、劇中、見せ場としてはしっかりこしらえてあるし、吹き換えの朴ロ美の声もセクシーで妖艶だった。でもちょっと違うのだ▼モーグリが猿にさらわれた、黒豹のバギイラと熊のバルーが、モーグリ奪還のため、猿の住処、密林の奥地にそびえるアンコールワットのような宮殿の廃墟に走る。猿とは密林の動物たちにすれば、ルールを守らない自分勝手な連中で、狩りの協力もせず、マナーが悪い、よってつまはじきされ、自分達だけで生きている、ならず者の集団であるとキップリング(原作者)は規定しています。原作は関係ないとしても、もちろんいい、しかしここで絡み合う、バギイラ・バルー・カーの三者の関係性とキャラの特色が、ジャングル・ブックを特徴づけているファクターの一つです。猿たちは群れをなし、しかも凶暴だ。こっちはバギイラとバルーだ。いくら獰猛な黒豹と大熊でも、多勢に無勢だ。助太刀がいる、と軍師バギイラは考えます。バルーは「カーがいい」と推薦する。あいつは蛇だぞ、とさすがのバギイラも気色悪がる。バルーは「猿にも弱点はある。あいつらはカーに睨まれると、足がすくんで何もできなくなる」▼皮を脱いだばかりのカーは(巨大な皮の抜け殻が映画にもありました)腹を空かせていた。蛇とは本来冷血動物独特の冷たい性格で、興奮することもなければ激することもない、どんなトラブルにも超然と、我関せずの態度をとる。このときはでも人質がモーグリと知り腰を、いや、鎌首をあげます。敵陣に討ち入った黒豹と大熊の阿修羅のごとき奮戦は映画の通りです。猿の魔王、恐竜のようなキング・ルーイの迫力にも満足。しかし、何が言いたいかというと、本作の「友情物語」の、最強のエピソードであるべきはずの、カーの「男前」がなくて残念だったという、それだけ。氷のようなカーが暗い神殿に現れ、ひゅうひゅうと舌を出し入れしながら猿の群れの中央に進む。まばたきをしないカーの目から猿たちは目をそらせることができない。ゆらゆらとせり上がる鎌首につられ、一匹また一匹とカーの前に吸い寄せられ、丸呑みにされる。悪夢のような光景にバギイラとバルーはモーグリを連れ、雲をかすみと廃墟を後にします。帰途、モーグリが「カーが鼻から血を出して、フラフラとダンスをするのに笑ってしまった」というとバギイラが足を止め、厳しく叱りつける。「カーはお前を助けるため、厚い壁を鼻柱で叩き割り、猿を招きよせるために、蛇独特のテクを使ったのだ。そもそも俺たちが窮地に至ったのは、おまえが油断して猿に誘拐されたせいだ。それなのに命の恩人を嘲笑するとは密林のルールに反する」そこで黒豹は太い前脚で、規則通り違反者をぶん殴る▼映画にはありませんが、カーの知恵はジャングル最大の危機のとき、もう一度密林の仲間を救います。普段何があっても「関係ない」顔をしているカーが、ここいちばんのピンチには全知全能を絞って突破口を開く。ジャングル・ブックで魅力ある動物は多いけれど、中でもトップクラスだわ。それがグラマーの、やさぐれの占師みたいなことを言う、図体ばかり大きな蛇だったでしょ。で、ちょっとがっかりしたのよ▼母狼ラクシャ(宮沢りえ)もよかったですね。旦那の狼より存在感がありますね。人食い虎が嫌味をいっても脅しても後へひかない。冷静さを保ち、感情に煽られ子供たちに八つ当たりしたりしない。西田敏行のバルーと松本幸四郎のバギイラは、これはもう、貫禄というしかないか。そうそう、イケメン・伊勢谷友介が、憎まれ役の虎を、ドスを効かせた声と口調で吹き替えていました。

 

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