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特集「ベストコレクション」

2016年9月15日

特集「天高く初秋のベストコレクション」⑮
特捜部Q キジ殺し(2016年 ミステリー映画)

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監督 ミケル・ノルガード

出演 ニコライ・リー・コース/ファレス・ファレス/ダニカ・クルチッチ

 

シネマ365日 No.1875

北欧ミステリー快進撃

特集「天高く初秋のベストコレクション」

よかったですよ。犯人当てではなく、重厚なプロセスと、彫り込みの深い人物像(特捜部Qとそのメンバー)、事件の背景と動機の残酷さなど、どこを切り取っても一流の手さばきです。北欧ミステリーの系譜といえば「ミレニアム三部作」「ブリッジ」「キリング」「真夜中のゆりかご」北欧に近い感覚として「チャイルド44森に消えた子供たち」があります。それぞれ佳品でした。森と雪の北欧って、自然が厳しいでしょう、暗い深い森、透徹した蒼い湖、スタイリッシュな家屋に重厚な家具、年代物の地下室、それらの映像が、物語に独特の美しさを加味するのよね▼「特捜部Q」とは、捜査が打ち切られた事件の残務を処理して解決の糸口を見つける。あんまり陽のあたらない部署で、薄暗い物置のようなオフィスだ。部員は責任者カール(ニコライ・リー・コース)と、部下のアサド(ファレス・ファレス)、女性秘書のローセの3人。アサドは仕事人間のあまり、人とうまくやっていけないカールと上司・同僚の間に立って、行き過ぎをとりなすときもあるが、結局はカールの指示に全面協力。ローセは新任秘書。カールの仕事ぶりについていけないものを感じつつ、人間コンピューターのような資料断捨離能力と洞察力で、男たちの行き詰まりをしばしば打開する。スタートがそもそもいわくに満ちている。20年前の事件を再調査してくれとマークは頼まれた。土砂降りの雨の中、カールを待ち受けていたのは、自分の子供、双子の兄妹を暴行のうえ惨殺されたヤーアンス元警部だった。犯人は逮捕され刑期3年ですでに出所していた。独自に事件を調べようとした警部は解雇された。未解決事件を多数抱えているからと断ったカールは、その夜、ヤーアンスが自殺したことを知る▼再調査すると、事件の背後に名門寄宿学校に通うセレブの子弟らがいた。兄妹の惨殺だけでなく、何件もの暴行殺人があり、犯行がことごとく日曜だとローセが調べ上げ、行方不明になった女子学生がひとりいることを突き止めた。20年後の現在、彼らはコペンハーゲン経済界の大物となっていた。ひとりはディトリウ、ひとりはウルレクだ。行方をくらました女学生はキミー(ダニカ・クルチッチ)だ。寄宿学校の中で、金持ちでハンサムなディトリウは女子たちの憧れの的。キミーはディトリウと付き合って有頂天になるが、彼はとんでもない冷酷な性格で、ウルレクといつもつるんで、狩りの獲物を追い立てるように、残酷で陰惨な所業を繰り返していた。ディトリウと関係を持ったキミーは物理の教師を誘惑するよう言われる。物理の単位が足りないから、教師をやめさせたい、彼の部屋に入って強姦されたことにしろと。教師は罠にはまり、双子の兄妹は部屋にいるところを集団で襲われ強姦のうえ殺害される。現場で目撃したキミーは、隠していけず警察に通報するが、ディトリウに感づかれる▼キミーは妊娠していた。ディトリウは手下にキミーを襲わせキミーは病院で死産した。双子の兄妹の犯行はビャーネという犯人が挙げられたが、わずか3年で出所していた。カールとアサドが、20年前の事件をビャーネの元に聴取に行ったことがディトリウとウルレクに知れ、彼らは自分たちの犯行を隠ぺいするため、唯一の目撃者であるキミーを殺そうとする。特捜部はなんとかディトリウとウルレクの証拠をつかもうと躍起になるが、彼らも尻尾をつかまさない。アサドがふとディトリウの妻テルマと会話した時のことを思い出し、テルマは夫とうまくいっていない、何か情報が得られるかもしれないと察する。テルマは夫とは心は離れ離れになっていた。ウルレクはテルマに惚れていた。ウルレクの弱みは何だと訊くカールに「わたしよ」とテルマは答える。そこから楔が打ち込まれた。厳重なセイフティが施されたウルレクの屋敷に忍び込んだカールとアサドは、ウルレクがその収集癖のため、20年前の保存品から証拠を持ち出す。だが屋敷から脱出する一歩手前で、麻酔銃で捉えられてしまった。地下には彼らが狩猟の標的にする、ダチョウやヒョウや、種々様々な動物が捕獲されており、その檻のそばに転がされた二人に銃口が向けられた▼同じ頃、キミーもまた、自分を殺そうとする男ふたりと決着をつけるため、同じ場所にたどり着いていた…キミーが悲劇的でしてね。カールは必死でキミーの自死を止めるのですが、ディトリウを射殺したキミーは「愛している」とつぶやきながら、自分もまた火の海に身を投じる。甘い結末ではありませんが、冴えない特捜部で、真実を求め、のたうち回りながら、犠牲になった死者の無念を晴らそうとするカール、彼の「行き過ぎ捜査」に辟易しながら最後までついていくアサド、頭脳と粘りで緻密に事実を積み重ねていくローセのチームワークが、ハリウッドのケバケバしい情熱とは、全く違う魅力を出し、北欧ミステリー今や快進撃。

 

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