女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集「女のわがまま」

2016年9月19日

特集「女のわがまま3」④
プセの冒険 真紅の魔法靴(2011年 日本未公開 ファンタジー映画)

Pocket
LINEで送る

監督 オリヴィエ・ダアン

出演 ロマーヌ・ボーランジェ/エロディ・ブシェーズ/カトリーヌ・ドヌーヴ

 

シネマ365日 No.1879

戦争は馬鹿らしい

特集「女のわがまま3」

オリヴィエ・ダアン監督の初期の映画です。フランスが総力あげたファンタジー映画と銘打ってあります。わりとよかったですよ。ディズニーみたいな大仕掛ではありませんが。ご存知シャルル・ペローの「親指小僧」が原作の実写です。「親指」だけでなく「ヘンゼルとグレーテル」や、どこかで読んだ覚えのある童話がいくつか思い当たります。ダアンはこのあとイザベル・ユペールの「いつかきっと」、「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」ではマリオン・コティヤールにアカデミー主演女優賞をもたらしました。最新作ではニコール・キッドマンの「グレース・オブ・モナコ公妃の切り札」があります。大物女優と相性がいいのでしょうか。本作ではチョコっと、カトリーヌ・ドヌーヴがプセを助ける女王役で顔出し。この人、オファーがあればなんだろうと出るのだわ。仕事して動いていれば機嫌いいのね。泳ぐのをやめたら死ぬマグロみたい▼たかが童話とあなどるなかれ。プセの母親にロマーヌ・ボーランジェ(「太陽と月に背いて」「伴奏者」)。衛兵のひとりにロマン・デュラス(「ニューヨークの巴里夫」「彼は秘密の女ともだち」)。人喰い鬼に妻にエロディ・ブシェーズ(「天使が見た夢」)らを贅沢に使っています。物語をまとめる手際もなかなかのもので、この映画がおもしろいのは童話の形でカモフラージュされた悪やいやらしさのヴェールを、あっさり脱がしているところです。たとえばプセの父親は、戦禍で畑を荒らされ食べ物がとれない、子どもたち(5人もいる)を飢え死にさせるくらいなら、ひと思いに森へ捨てよう、と妻にいい、ふたりで息子らに「薪拾い」だと嘘をつき森へつれていく。人喰い鬼は子供が大好物で血をしたたらせて食べてしまう。プセの兄貴らは、いやなこと、しんどいことはみなプセにおしつける、プセが帰り道の道標のかわりに置いた白い小石のおかげで最初の「捨て子」のときは無事家に帰れた、二度目は小石がなかったのでパンをちぎって置いたらカラスが食べてしまった、兄らは「プセがバカをやるからだ、おれたちが死んだらお前のせいだ」と怒る。人喰い鬼はプセに騙されて自分の娘たちを食べてしまい「復讐だ」とわめく▼戦争で財産を失い、命を奪われ、略奪されるのはいつも庶民である、食えなくなれば生き延びるため、子を捨てる弱者切り捨て、児童虐待は昔からあったのだ。自分の愚かさを棚に上げ弱いものをこき使い、失敗はみな人のせいにする、そういう略図がつぎつぎ展開されるのであるから、まるで人間と社会の見取り図である。ドヌーヴが治める国はどうやら開戦か和平かで判断が迫られているらしい。幕閣らは「ご判断を、陛下。どうか出兵の許可を」とつめよる。ドヌーヴは窓を見ており背中をみせ、なかなか振り向かない。本作の前に「ヤング・ブラッド」でフランス王妃、のちに「アステリックスの冒険」でイングランド女王、若いときは「ロバと王女」と、女王や王妃や王女がよくめぐってくること。本作の女王陛下はなにやら報告を待っているご様子。「好きなのね、戦争が」と一言。「結果は死と不幸の連鎖。戦いに未来はない」と発言し、戦争従っている男の閣僚たちは苦虫をかみつぶす。これもどこかの国へのあてつけでしょう▼プセが戦場の、瀕死の兵士から預かった封書を女王に届けたら、それが戦争を回避できる秘策が書いてあったらしい。これで戦争しなくてもすむ、と女王は満足気にうちうなずく。女王でなくとも、戦争に巻き込まれるほどばからしいことはないとどの国の国家経営者は知っているはず。長引けばながびくほど国力は疲弊し、財力は破綻します。つぎこんでも注ぎ込んでも、ブラックホールのごとく金を吸い込むのが戦争である。それをなぜはやくやめないか。勝てばもうかる、その一念にこりかたまってしまうのではないでしょうか。孫子も兵法に書いています。いちばんいいのは戦争をしないこと。全力を尽くし交渉でおさめ、万が一にも首を突っ込んだら初戦で叩くだけ叩き、疾風迅雷のごとき勝利を収め、交渉の主導権を取って速やかに停戦に持ち込む。ドヌーヴ陛下が「孫子」を読んでいたかどうか知りませんが、ガンとして戦争を否定する「わがまま」を通す名君だから、引き受けたのに決まってらい。

 

Pocket
LINEで送る