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特集「女のわがまま」

2016年9月20日

特集「女のわがまま3」⑤
ランド・オブ・ウーマン 優しい雨の降る街で(2007年 日本未公開)

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監督 ジョン・カスダン

出演 アダム・ブロディ/クリステン・スチュワート/メグ・ライアン/オリンピア・デュカキス

 

シネマ365日 No.1880

クリステンの猫背 

特集「女のわがまま3」

予定調和の見本みたいな映画です。出演者はそれぞれしんどい問題を抱えていましてね。母親サラ(メグ・ライアン)は夫が浮気、自分は乳がん、高校生の娘ルーシー(クリステン・スチュワート)は母親に批判的で母娘はしっくりいかない。向かいの家にロスから恋人にふられた26歳の脚本家カーター(アダム・ブロディ)が、ここミシガン州に越してきた。おばあちゃんフィリス(オリンピア・デュカキス)の介護と、失恋の痛手を忘れ出直すためだ。フィリスは自称133歳。認知症があり「死ぬ、死ぬ」が口癖。どっちを向いても出来れば関わりたくない人たちだ。お芝居みたいな「苦悩」の中にいるみなさんのなかで、唯一存在感・現実感を放っているのがおばあちゃんのデュカキスだ。孫を愛してはいるが、ちょろい悩みに世話をやく気はない。あいつらの心配事など、5キロも走ってヘトヘトになれば、ぐっすり眠れて解決するといいたそうだ▼サラは乳ガンである。ガンだと診断され落ち込まない人はいるまい。ましてサラは夫が浮気中。娘は「ママはそれを知っていながら何にもいわない。快適な家にさえいられればいいのよ」と、何が気に入らないのか、偽善者呼ばわりである。この母娘、揃って向かいのイケメンのカーターと仲良くなる、というより越してきた早々から「仲良くなりたいオーラ」が放散して眩しい。他に男はおらんのかよ。サラは妻として母親として尽くしてきたあげく、夫に裏切られ、娘は夜遊びにかまけ、母親への冷たい態度を改めようとしない。カーターはやっと得た大人の話し相手だ。一緒に散歩するようになり、カーターもサラの、言っちゃナンだが、ミシガンの田舎で出会うとは思っていなかった垢抜けた態度物腰、言葉の選び方に惹かれていく。同時に高校生の分際で、一人前に社会と母を批判するルーシーの屈折にも関心を持つ。つまり、主人公はどっちの女からも求められる理想の境遇だ。失恋の痛手など早々と吹っ飛んでしまう頃に、元カノから泣いて電話がかかってくる、金平糖みたいな甘い映画である▼サラは乳がんの末期で手術した。薬の副作用で毎日が苦しい。頭髪が抜ける。サラは思い余ってスキンヘッドにしようと鏡に向かい、ハサミでチョキ、チョキ斬り始めるが、すぐ帽子をかぶったシーンだから、スッパリ丸坊主にはならなかったようである。こういうときはデミや、シガニーや、ナタリーやケイト(ブランシェット)のように、蛮勇を振るう女優であるべきだと思うが。まあいい、アタマの一つや二つにこだわってどうする。メグ・ライアンがゾンビみたいな顔色になったから、てっきり先は短いと思ったら、手術は成功し回復ほど近いという。ああそう。よかったわね。それにしても変哲の「へ」もないわね。娘のほうはどうか。ボーイフレンドとごちゃごちゃあって、ママはわたしをいやらしい子みたいに思っている、とカーターに打ち明ける。さすがにカーターは「世の中は面倒で問題だらけだ。思った通りにならない。怖がるのはいいが、周りが見えないのはダメだ」と突き放す。するとどうだ、ルーシーは走って後を追い、これでもかとばかりカーターにキスする。その前にカーターはママを抱きしめキスしていた。こいつ、いい目ばかりしているじゃない▼文句をつけながらでも最後まで見たのは、絵のようなハート・ウォーミングで、何も考えなくてよかったからだろう。しかしながら例えば、こういうセリフどう思う? ママ「わたしに何を怒っているのか話して」娘「難しいわ。だってずっとそうだった。何でもママのせいにして…もっとママを知りたいの」ママ「この先どうなるかわたしにもわからない。でもずっと愛している。わたしを受け入れて欲しいの」娘「失敗するかもしれないけど、そばにいるわ」リアリティ不在なんてものじゃないわね。ホントの母娘がことほどかような説明的言辞を要するだろうか。母親が知っている娘とは、自分のお腹を蹴っているようなやつを、可愛いと思って育てていたのよ。それについでだからいうけど、大方の娘は、ああだ、こうだと文句垂れたところで、最終的に母親にアタマ上がらないことくらい、わかっていて勝手なわがままを言うのよ▼それと、だな。クリステンの猫背があんがい、よかったな。あの子、普段からああなの? 背中が鉄板みたいにまっすぐな人も、もちろんいうことないのだけど、姿勢がいいっていうより「威風堂々」となると、ちょっと引くわね。クリステンは軽い猫背で、上手にルーシーの性格の「影」を出していたわ。

 

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