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特集「女のわがまま」

2016年9月21日

特集「女のわがまま3」⑥
キャット・バルー(1965年 コメディ映画)

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監督 エリオット・シルヴァースタイン

出演 ジェーン・フォンダ/リー・マーヴィン

 

シネマ365日 No.1881

男あっての世の中さ 

特集「女のわがまま3」

1894年、オハイオ州の田舎に、師範学校を卒業したキャット・バルー(ジェーン・フォンダ)が帰郷した。学校の先生のはずが、この娘は無法者を志願することになる。牧場を営む父親が開発に反対し、不動産会社の社長が雇った殺し屋に殺されてしまったのだ。バルーは列車の中で知り合ったお尋ね者とその甥、牧場に残った忠実な牧童、彼が伝説のガンマンといったシェリーン(リー・マーヴィン)を雇い、敵の殺し屋ナンバー1の悪名高いストロウン(リー・マーヴィン二役)に対決しようとする。映画は絞首刑を待つ、キャット・バルーの回想で始まる。バンジョーをかき鳴らしてナレーションを受け持ち、口上を歌うのがナット・キングコールだ。DVDのパッケージを見たら、だれでもこの映画は悲劇だと思うだろう。うらぶれた初老のガンマンが、馬に乗ったままレンガの壁に身を寄せ、行き倒れ寸前で死を待つ。そんな一場面だ。でも違う。彼こそ伝説のガンマン、シェリーンであり、行き倒れには近いが原因はアル中だからだ▼映画会社・コロンビアの女神が踊る、ヒッチャカメッチャカのオープニングで映画は始まり、人物はすべて「ちゃらんぽらん」、その男たちの尻を叩きながら、キャット・バルーが先頭に立ち、列車強盗を敢行する。男たちは危ない目に遭いながら、バルーを助け、団結し、絞首刑寸前にバルーを救出し、一同うち揃い、一目散に行方をくらます。大活躍はもちろんキャット・バルーだ。ジェーン・フォンダは気持ちよくのびのびと演じ、大きな瞳は綺麗に澄み、小気味いい啖呵にほれぼれする。しかしこの映画の裏に生き生き脈打っているのは、キャット・バルーを助けるアメリカ男たちのマチズモだろう。レイシストや男性優位論ではなく、女を拠り所にするのは男のアイデンティティの一つであっていいという、屈託のないマチズモが、ラディカルで、わがままと身勝手が大好きな女の居心地をよくさせているのだ(笑)▼父親が殺された途端、無法者になると宣言し、不動産会社の給料を積んだ列車を襲うから協力して、え? やらない? あなたたち、それでも男なの! 意気地のないやつには頼まない、わたしが一人でやってやると、アメリカ版「緋牡丹お竜」は出撃する。チンケな犯罪者だった叔父・甥も、真面目な牧童も、飲んだくれのガンマンも、ゾロゾロ馬に乗って走っていく。シェリーンはいっぱい引っ掛けなければ仕事にならない。キャット・バルーが父の仇とする殺し屋が、実は「銀鼻」のストロウンだと知る。強敵だ。シェリーンは猛然と酒を断つ。熱湯の風呂に入り、酒を抜き、体を鍛え、銃を手入れし、つなぎのパッチ一枚になり、ベガスのステージに出演かと見まごう、金ピカ、銀ピカの衣装に着替える。着せ替えるのは牧童である。「殿、お召し変えを」とばかり、恭しく着替えさせ、ヨレヨレの爺さまは、まばゆいばかりのショーマンの出で立ちとなる。華麗なる変身シーンは本作の見どころの一つ▼今でもよくわからないのは「我が妻、バルドー、ドヌーブ、J・フォンダ」を読む限り、どうしてロジェ・バディムと、今をときめく3人の女優が結婚したのだろうということだ。ジェーンが彼と結婚したのは28歳。本作の公開年だ。18歳のジェーンと知り合ったバディムは、交際を深め、当時のパートナーだったカトリーヌ・ドヌーヴに、ジェーンと結婚することを告げる。24歳になってもジェーンは「繭から出ていない段階で、自己発見に至る道を探していた」とある。ドヌーブは「仕方ないわね」という感じだったそうだ。このあたりの女性側の描写が簡略すぎるのも、バディムという男性をわかりにくくさせている。のち、バディムとジェーンが別れたのは、ジェーンが社会運動にのめり込むようになってからだ。バディムは女が「自己発見」すると、興味をなくすタイプの男性だったのかもしれない。そんなことを思いながらこの映画を見ると、本作の男たちが、マチズモを裏返した、いかに陽気なフェミニズムを同居させているかがわかる。西部劇の形をとった「王女様の物語」は、ハンサムな王子ではなく、脛に傷のある出生・年齢不問の男たちが鉄火の姉御とともに行方をくらますシーンで終わる。しつこいようだが、キャット・バルーの強気は見せかけ、実は俺たちがいなければ何もできない、女を救済するのは男という、意気揚々とした信念を、この映画は貫くのである。

 

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