女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集「女のわがまま」

2016年9月22日

特集「女のわがまま3」⑦
裏切りの街角(1956年 犯罪映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ロバート・シオドマク

出演 バート・ランカスター/イヴォンヌ・デ・カーロ

 

シネマ365日 No.1882

みじめでも愚かでもなく 

特集「女のわがまま3」

「アンナと俺はここの常連だった」というスティーヴの語りで映画は始まる。2年前結婚して7か月で別れたふたりだ。アンナがイヴォンヌ・デ・カーロ、スティーヴがバート・ランカスター。男は、離婚はしたが女に未練がある。一度はこの街、ロスを去ったが女に会いたくて戻ってきた。女も思い切れないものを持っている。スティーヴは孝行息子だ。真面目で正直で、働き者だ。父親のいない家で、母親は長男のスティーヴを頼りにし、弟は兄貴を尊敬している。ただ一つ、彼らは嫁のアンナが気にいらないのだ。スティーヴの親友がラミレスである。警部補をしている。頭の切れるできる男で、友情に厚い。これがまたアンナが嫌いなのだ。嫌いというより、あの女と結婚するのをどうにかしてやめさせるべきだったというのをやめない。いうなれば四面楚歌のアンナだから、スティーヴはさぞ大事に扱っただろう…確かに、スティーヴは「自分なり」に大事に扱ったのだ▼なぜ離婚したか。常連だったナイトクラブで再会したふたりは懐古する。「わたしを探した?」とアンナ。「ここにいるときがいちばん楽しかった。好きだからケンカできたんだ」「仲直りするのが楽しかったわ」男が来る。悪名高いギャングのスリムだ。「すまんがそこは俺の席だ」とスティーヴをのかせる。付き合っている男がやばい。スティーヴはアンナを忘れようとする。アンナから呼び出しがあり、スティーヴは会いに行く。「なぜ俺を呼んだ」もうケンカ越しだ。アンナに言わせるとスティーヴとは「人を怒らせることばかりする男」なのだ。口を利けばつっけんどん。頭ごなしに命令し、女の機嫌を取らない。元の鞘に戻る? また結婚する? さすがにお互いに「無理だ、もうやめにしよう」といった舌の根も乾かぬうちに「スリムとは別れろ」などと言い出す。「土曜日は仕事が休みだ」からビーチへ行こう、「ビーチで盛大にケンカするの?」「そうだ」。こうなるともう、デキてしまったのと同じよ▼デートの約束を取り付け上機嫌の息子に母親は嘆く。「なぜあの人じゃないとダメなの。わたしにわからないとでも? それだけじゃない、一度失敗しているのよ」。ところがアンナはあっさりスリムと結婚したのだ。今度こそスティーヴはアンナを諦めるだろう…4カ月後、スティーヴはアンナを訪ねる。ううむ、完全な危険水域ですわ。そして繰り返す。なぜ結婚した。アンナはきっぱり「スリムはわたしを求めてくれた。あなたの母親も親友も、わたしと別れろといった。あなたを追いかけ、機嫌を直してというのに疲れたの。スリムはわたしを求め、欲しいものを何でも与えてくれた。わたしについてきてくれたわ」。ならば幸福のはずがそうじゃない。スリムはDV男だったのだ。アンナの肩や腕には殴られた痣がついていた。スティーヴはいたたまれない。彼は愛想が悪いだけで、心の温かな男だ。ただ女を甘やかすのが下手なのである。母親以外にそれをわかっているのが、親友のラミレス。「あの女のことは忘れろ」と口を酸っぱくしていう。「スリムがお前の息の根を止めるぞ」「俺は好きなときに彼女に会う。お前にもスリムにも邪魔させない」「あの女は性悪女だ!」▼スティーヴの仕事は現金輸送会社の警備員である。スティーヴとアンナは密会を重ね、ある日、その現場にスリムが来た、スティーヴは現金強奪の計画を話していたところだとその場を取り繕い、強奪計画に加わってしまう。スティーヴはどうする。アンナと落ち合う場所を決め、現金を奪ったらそこへ行くと打ち合わせをした。当日、スリムは現金を奪ってスティーヴを射殺しようとしたが、被弾したものの、反撃したスティーヴに金を半分残したまま逃走した。スティーヴは強盗から金を半分守り、撃退した勇気ある警備員として新聞にでかでかと書かれた。病院にいるスティーヴを、警部補が訪ねてくる。「君はアンナとスリムに利用されたのだ。彼らは協力者を探していた。そこへ君が現れた。どうして仲間になった? 馬鹿正直なお前が手玉に取られたのだ。スリムは死なずに逃げたぞ。女がお前を裏切っていたらお前は安全だ。だが、女がスリムを裏切っていたら、必ずお前を殺しにくるぞ」▼病院を抜け出し、隠れ家にいったスティーヴをアンナが待っていた。スティーヴを車でここへ連れてきた男がスリムの手下だと知ったアンナは言下にいう。「逃げるのよ、ここへ向かっているわ」「君は奴と手を切れ、奴と話す」「あなた、何をいっているの。あいつは殺す気よ」アンナはもう身の回りのものをトランクに詰め込んでいる。「逃げるのか、俺を置いて」アンナはあっさり「仕方ないわ」車はないし、怪我しているスティーヴを「連れて逃げられないわ。あなたは甘すぎるのよ。お金を捨てろとでも? 人間は柔軟でなきゃ。わたしはあなたみたいになれない。ちがう人間なのよ」「君と別れてあの町を歩き回った。俺の望みは君を胸に抱くことだった。でも君は違った」「わたしのせいじゃないわ」突き放す女。どこまでも線は交わらない。いつの間にかスリムがドアに立ち、抱き合っているふたりを見て「スティーヴ、そんなにアンナが好きか。お前の勝ちだ。彼女はやる。お前のものだ、抱けよ、しっかりと」いうなり、ふたりを射殺する。パトカーのサイレンが遠くで聞こえる▼この映画、とてもシャープでピシピシと場面が切り替わり密度が高く、わずか87分の尺が充実して長く感じられます。女のために人生の破滅に向かいながら、それがみすぼらしくもなく、惨めでもなく、愚かにも見えず、なぜか心の中が満ち足りている男を、バート・ランカスターが重厚に表現しました。

 

Pocket
LINEで送る