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シネマ365日

2016年9月27日

特集「橋をめぐる映画」④
橋(1960年 ドイツ 戦争映画)

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監督 ベルンハルト・ヴィッキ

出演 フォルカー・ボーネット/フランク・グラウブレヒト

 

シネマ365日 No.1887

守ったものはなに? 

特集「橋をめぐる映画」

戦争の無意味さに、胸が痛くなる。見ていて辛くなる。オープニングからしばらくの間に、子供たちの学校での授業、クリーニング屋を営む母親の配達、ガールフレンドに話しかけたい少年、それら細やかに描かれる日常の穏やかな生活が、余計に悲劇をあぶり出す。日本でいえば、彼らは中学生くらいだろう。英語の授業中、父親が自分に内緒で母親を疎開させようと駅に連れて行くのを見つけたヴァルター(ミヒャエル・ヒンツ)は、授業を放り出し自転車で走る。駅で母親の乗った列車を追う。息子と仲の悪い父は、別れの言葉も交わさせず引き離した。洗濯屋を営むジギの母は、息子が徴兵されないか心配でたまらない。叔母さんの家に預けようとするが、ジギは母親のそばにいたい、「僕の代わりにウサギを預けて」という。エリートの家に生まれたユルゲン(フランク・グラウブレヒト)は、軍人の父が誇りだった。カールの家は散髪屋だ。帰宅したカールは父と女店員の不倫を見てショックを受ける▼7人の少年に召集が来た。翌日出頭した彼らは、祖国のために身を捧げる勇気と行動を誓う。その夜非常召集がかかり、部隊は深夜に出動することになる。少年兵の訓練に当たっていた伍長が指揮官である中佐に報告した。「今朝入隊したばかりの新兵が7人います。みな子供です」「なんだって。やっとれん」「彼らの部署ですが、町はずれの橋はどうでしょう」「爆破予定の橋だぞ。意味ないだろ」「爆破するまで守らせます」「君に任せる」伍長は少年兵の「お守り」役として、橋に連れていき「重大な任務だ」と訓示した。橋を見た少年たちは「家が近いじゃないか。バカみたい」「文句いうな、しっかり運べ」と保塁を積む。伍長はコーヒーを飲ませてやる、とどこかに調達にいき、逃亡兵と間違われ射殺された。伍長を待つ少年たちに撤退する部隊が、傷病者や病人を乗せたトラックで橋を通過した。包帯でぐるぐる巻きになった兵士の一人が「何をしている。このあたりは撤収だぞ。家に帰れ」と叱りつける。その橋は味方が無事に退却すれば、あとは米軍の進路を断つため爆破すれば用済みになった。少年たちはしかし「逃亡を教唆するのか」「何も知らず英雄ごっこか」。兵士はポケットから何かをつまみ「坊主、チョコだ。人生の名残にな」少年に投げた▼伍長は逃亡したと少年たちは判断した。「帰ろう」「何だって?」「こんな小橋を守って何になる」「一歩の守りが祖国の守りだ」彼らは橋を動かなかった。米軍の戦車の振動が聞こえた。少年たちは銃撃した。それを知ったドイツ軍の爆破班は「どこの馬鹿だ。黙って通らせときゃ、今頃爆破できたのだ」。戦車の猛攻を受け、ジギは死んだ。戦車から降りた米兵が怒鳴った。「子供は撃たん。幼稚園へ帰れ」。「幼稚園」という英語だけ聞き取った少年は相手が侮辱したと受け止め、発砲し、腹を撃たれた米兵は内臓を露出させて死ぬ。しかしカールも被弾して死んでいた。橋の近所に住む古老は「まだいるのか、早く家に帰れ」再度促した。少年たちは聞く耳を持たない。うろたえて発砲して彼を死なせてしまう。戦車との銃撃戦で少年兵たちも死ぬ。残るのは重傷を負ったハンスとアルベルトの二人だけになった。アルベルトが話しかけていた途中でハンスは死んだ。戦車は通過し、硝煙に煙る橋に爆破班がきた。アルベルトを見て「何をしている」「橋を守りました」「ご苦労」。自分たちを奇異な目で見ているアルベルトにひとりがいう。「この橋を壊すのさ。帰って家で祝え」「黙れ」とアルベルトが叫ぶ。「失せろ、ここから失せろ」「落ち着け、これは命令だ、そこをどけ」「失せろ、消えろ」怒りに燃え、夢中になって抵抗する少年は味方を射殺してしまう。「帰ろう、ハンス、家に帰るんだ」ハンスを引きずって歩きかけたアルベルトは、よろめいて手を離し、硝煙でススだらけになった真っ黒な顔に涙をつたわせて去った。橋は再び静かになった。敵味方の死体だけがある。守ったものは何だったのだ。

 

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