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シネマ365日

2016年9月28日

特集「橋をめぐる映画」⑤
哀愁(1949年 恋愛映画)

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監督 マーヴィン・ルロイ

出演 ヴィヴィアン・リー/ロバート・テイラー

 

シネマ365日 No.1888

堂々たるメロドラマ 

特集「橋をめぐる映画」

ヴィヴィアン・リーは本作の前年「風と共に去りぬ」でアカデミー主演女優賞を受け、トップ女優の地位を確保していた。27歳だった。彼女の代表作はこの後「欲望という名の電車」が続くものの、早すぎるといえる、53歳で没する。今でいう双極性障害にも悩まされた。ローレンス・オリヴィエとの熱愛・離婚・結婚、「欲望という名の電車」で受賞した二度目のオスカーなど、彼女の生涯にはまばゆい成功がいくつもあるものの、陽中の陰ともいうべき暗さをどうしても拭えない。それがヴィヴィアン・リーの女優としての武器ともなり、強さともなったといえば言い過ぎか。スカーレット・オハラの、輝くばかり恵まれた青春を戦争が粉砕する。なにもかも失った焦土から土くれを手に立ち上がる女は、果たして幸せを呼び寄せる女なのか、それとも波乱を呼ぶ女なのか、そのへん、ビミョーだなあ…ついそう思ってしまうのがヴィヴィアン・リーで、一言でいうと彼女には、嵐の予感がいつもつきまとうのである▼本作の出だしは退屈だった。なんでこんな凡庸な映画に彼女は主演する気になったのか。ロバート・テイラーは美男の菊人形みたいだし、いうセリフもいちいち紋切り型だ。すぐ涙ぐむヴィヴィアン・リーを見ていたら、どうやってこの映画は100分以上、持たせるのだろうと思った。ヴィヴィアンは白鳥の湖を踊る、格式高そうなバレエ団の踊り子マイラである。先生はレッスンに厳しく、戦時中(第一次世界大戦)なのに空襲だろうと警報だろうと「わたしたちの舞台に関係ありません」といってのける剛の者だ。ウォータールー橋で出会った青年将校ロイ(ロバート・テイラー)とお互いに惹かれあったが、ロイは当日すぐ任地に向かわねばならず、二度と会えない運命だと諦める。ロイはこれをお守りにとマイラに渡すのがビリケンの小さな人形だ。通天閣のビリケンさまを手のひらサイズに縮小した、かわいらしいお守りである▼戦地への出発が2日間延期になり、その間にロイは結婚しようとマイラにいう。ロイの上官の許可も取れたが、結婚式は午後3時以後になるとできないという教会の決まりで、翌朝になった。その夜ロイは急遽、戦地に出発となり、マイラはウォータールー駅に見送りに走るが、一目会っただけで列車は出発した。夜の公演に遅れたマイラはバレエ団をクビに。マイラをかばった親友のキティも辞めた。マイラは新聞の戦死者の欄でロイの死を知り、ショックで病気になる。収入の道も途絶え、キティは娼婦となって医者と薬代と二人の生活費を稼いでいることを隠していたが、やがてマイラの知るところとなる。自責の念でマイラは悄然。思い悩みつつウォータールーの橋に佇んでいたマイラは、男の声に振り向き、うつろな表情でついていく。ここからである。ヴィヴィアン・リー本来の力のある演技が表現されるのは。どうにもこうにも、彼女にとって緊急危機管理のときでないと、地力は出ないのかと思ってしまうのだ。タイプでいえば、どう見ても平時のリーダーではないのですね▼娼婦がすっかり板についた頃、常のように駅で客を探していると、戦死したはずのロイが帰還した。奇跡だと喜ぶロイにマイラは泣く。生きていたと知っていたら何としてでも食いつないだだろうに。マイラはロイと結婚を決意する。キティは「彼は知らないの?」「彼に話すわ。のるかそるかよ。生きていきたいの。最後のチャンスよ。彼のために生きるわ」「彼があなたを愛しているならうまくいくわ。やってみるのよ。行きなさい」とキティは温かく送り出しますが、なんだか切ないですね。女にばっかりモラルの縛りがきつくて。ロイの実家はスコットランドの名家である。ロイが婚約者を連れてきたとあって、大パーティが開かれる。母親、叔父、親戚一同の祝福に囲まれ、マイラはいたたまれず、とうとう母親に事実をうち開ける。「お母さま、お話しなければならないことが」「どんなことでも言って。娘よ」「わたしはここへきてはいけなかったのです。ロイに合わせる顔がありません」「マイラ、他に男の人が?」「お母さま、そんななまやさしいことではありません!」母親はたちどころに事実を察する。「その通りなのです、お母さま、わたしはひどい貧乏で、彼は戦死したと思い、そして…」母親はショックだったものの冷静に受け止め、ここにはおれないというマイラに「この問題は明日、もう一度話し合いましょう。わたしにも責任があるわ。ロイにはいわないわ」と諭す。いいお母さんよね▼翌朝ロイは置き手紙を読む。「感謝の気持ちは言葉では言えません。ただわたしたちには未来がないのです。愛をありがとう。マイラ」。ロイは元のマイラのアパートに走る。キティは「どこ行っちゃったのかしら。思いつめて。もう二度とあんな暮らしには戻らないって…」キティとロイはウォータールー橋にタクシーを飛ばした。橋に立ちそこがどんな場所か、ロイは初めてマイラが何をしていたかわかる。そしてつぶやく「マイラは二度と戻らないよ」。マイラは橋の上でトラックに飛び込みます。現場にはビリケン人形のお守りが落ちていた。ロイは遺品としてそれを受け取りました。数年後の1939年、ロイは再びウォータールー橋に佇みマイラの言葉をかみしめる。「愛していたのはあなただけよ」…つけかけたケチも引っ込んでしまう、威風堂々たるメロドラマです。

 

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