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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年10月1日

特集 LGBTー映画にみるゲイ192
アクトレス 女たちの舞台(上)(2015年 ゲイ映画)

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監督 オリヴィエ・アサイヤス

出演 ジュリエット・ビノシュ/クリステン・スチュアート/クロエ・グレース・モリッツ

 

シネマ365日 No.1891

欲望より価値のあるもの 

特集 LGBTー映画にみるゲイ

ヒロイン、マリア(ジュリエット・ビノシュ)と、秘書のヴァレンティン(クリステン・スチュアート)、そして演出家クラウスが述べ合う、ゲイ役についての見解が、この映画の中心軸を作っています。マリアは出世作となった「マローヤの蛇」で、主人公シグリットを演じました。20年後の今、もう一度オファが来ましたが、それはシグリットではなく、振り向いてくれない彼女に恋し、自殺する四十女ヘレンだった。マリアは受けるのを渋る。クラウスは当代きっての演出家だ。彼は訊く「なぜヘレナはシグリットにひかれると思います?」「若さよ。今のわたしはヘレナの年だけど、ヘレナは演じられない」「僕の見解は違います。ヘレナは裕福で責任ある仕事をしているが、秩序とは無縁の女性です」「結婚し、子供もいて社会的に成熟しているのに、それを犠牲にする破滅型かも」「違います。シグリットはヘレナの暴力性を呼び起こす女性なのです。隠され抑圧された暴力性を。ヘレナはそれを容認できない」「わたしもそうよ」「ヘレナとシグリットはひとりなのです。対立はない。表裏一体の同一人物です。シグリットを演じられたらヘレナも演じられる。ウィリヘルム(原作者)は、続編を考えていました。20年後、シグリットがヘレナになる物語です」▼オリヴィエ・アサイヤス監督はここで終末への伏線を張っています。今回シグリットを演じるのは、ハリウッドの若手有望株、ジョアン(クロエ・グレース・モリッツ)だという。ヴァレンティンはマリアの右腕であり、24時間起居を共にし、マリアの行動のすべてを把握している若くて有能な秘書だ。この彼女がジョアンのことを「いちばん好きな女優」という。「わたしより好き?」「そういう意味ではないわ」マリアは何でもヴァレンティンに打ち開ける。「ヘレナの役が怖いのよ。いま離婚調停中だし、孤独でとても心細いの。この役には心が弱すぎる。もう一つの理由は、ヘレナを演じた女優が翌年自動車事故で死んだことよ」縁起が悪いというのだ。確かに心が弱くなっていますね。ヘレナは自らの破滅に魅了されている、という見方にヴァレンティンは異を唱えます。「シグリットは全て承知でヘレナを魅了する。テーマは破滅型の女ふたりがなぜ惹かれ合うか、なのよ。心の奥底に眠る真実を探る物語よ。ふたりの関係の不毛さがシグリットには苦痛だった。ヘレナだってまだ若いわ。未来があるのにそれを棄てたのよ。彼女は拒まれて苦しむ、自分の弱さが許せなかったのよ」▼マリアと原作者との関係も興味深い。「彼に惹かれたけど、惹かれていると感じるだけでよかった。それ以上の感覚は危険だと思った。あの感覚は欲望より価値があると、直感でわかったの」「つまり、彼に恋していた?」とヴァレンティン。「違うわ。単純化して考えないで。恋じゃない、それ以上のものなの」でもヴァレンティンの指摘は単純かもしれないけど的確です。マリアは女優の本能で、ヘレナという役に自分を変える何かがあると思うようになり、出演契約に応じる。脚本ができ、スイスの自宅でヴァレンティンと二人三脚、本読みが始まります。マリアとヴァレンティンの関係も微妙ですね。ヴァレンティンが、ボーイフレンドに会いに行きたいから車を貸して欲しいとマリアに頼む。恋人がいるのはいいことだわとマリアは応じるが、ヴァレンティンが車を出そうとするとキーがいつもの場所にない。「投げて」とヴァレンティンが声をかけ、マリアがキーを投げる。ヴァレンティンが受け損じる。「ごめん」というが、わざとのように方向違いに投げ、ヴァレンティンが出て行くと、走って2階に上がり、車の行方を見送るのだ。普通こんなことする? おかしいだろ。本読みに入りヘレンとシグリットをめぐる、マリアとヴァレンティンの意見のぶつかり合いが白熱します。それは単に役作りの捉え方というより、マリアとヴァレンティンの在り方のように思えます。女優マリアに対するヴァレンティンの望み、優れた女優とはこうあるべきではないか、それをマリアは実現するべきだという、ヴァレンティンの希求といってもいい。そんな自分の気持ちや意思を受け入れようとしないマリアに、ヴァレンティンは絶望する。

 

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