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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年10月8日

特集 LGBTー映画にみるゲイ199
あるスキャンダルの覚え書き(上)(2007年 ゲイ映画)

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監督 リチャード・エア

出演 ジュディ・デンチ/ケイト・ブランシェット

 

シネマ365日 No.1898

悪夢のような味方 

特集LGBTー映画にみるゲイ

凄まじい。ジュディ・デンチが悪魔的なまでに奸智のバーバラを、ケイト・ブランシェットが、おぞましいまでに愚かなシーバを演じて堪能させてくれるわ。どっちもロンドンの下町の、労働者階級の家庭の子供達が通う中学校の教師です。バーバラは定年1年前の厳格な歴史の先生、シーバは着任したばかりの美術の先生。バーバラの異様にねっとりした視線がシーバに絡みつきます。彼女がシーバについて、日記につけるモノローグだけでも独立した物語になります。こうきます「みなが彼女に注目した。彼女は淀んだ池にさざ波を起こした。どこか現実離れした女。妖精だ。謎めいているのが愚かなのか、わざと着古したような服装、ボロみたいなコート。わたしもみんなと同じよ、というポーズか。でも本質はまるで違う。デブのスーと並ぶと金髪女とズボンを履いた豚だ」▼美術室で大喧嘩があり、バーバラが止めに入った。原因は一人がシーバのことを「すぐやらせる女」だと言い、怒った生徒が殴りかかったのだ。バーバラの的確な処置にシーバは感激する。日記は続く「澄んだ声をしている。口の中が空っぽで清潔なのだ。きっと虫歯もゼロだろう。白桃のような透明な肌に血管が透けるようだ。考え方もきっと透明にちがいない。彼女が魅力的なのはわかる。でも教師としてはどうだろう」。シーバは「家族に是非会って」と、バーバラを自宅のランチに招く。バーバラは嬉しくて、精一杯おしゃれをする。新しい服を買い、美容院に行き、当日花を持って。ところが…「夫はきっと弁護士で子供達もマトモだと。でも違った。父親のような年寄りの夫。わがまま放題のパンクな娘。息子は世話の焼ける道化師。思わず不謹慎な想像をした。旦那がしなびた口でシーバの乳房を吸う姿だ」この辺りからジュディ・デンチは物の怪じみてきます。「食後は一家でゾッとするダンス。ブルジョワの家庭はやることが妙だ」。妙なのはバーバラだけど▼先輩教師としてシーバにアドバイスする。「生徒たちに不安を築かせてはダメよ」「あなたの対処法は、バーバラ?」「わたし? 人気はないけど尊敬されているわ」「あなたが好きよ、バーバラ。なんでも話せるわ」。日記にこう書く「シーバは最悪な母親の話や、父を亡くした悲しみを話した。リチャードと出会い関係を持ち、彼が妻子を捨て、彼女との性愛に溺れたことも。上流の人は簡単に、他人に対して素直さを示す。でもシーバの場合は、階級の特徴を超え、無謀なまでに屈託がなかった。院長に告白する見習い修道女のよう」…シーバの「告白」の一つはこうだ「結婚生活や子育てはとても素晴らしいけど、生きがいを感じないの。義務感はあるけど。地下鉄のホームと電車の間の隙間みたい。埋めがたい空白よ。夢見た人生と現実の人生とのね」。シーバに打ち明けられ、バーバラはその日の日記に「金星」を張り感動を再確認する。「わたしたちは必ず友だちになれるとわかっていた。わたしたちは理解し会っている。Sとわたしは日々の暮らしがいかに凡庸か見抜くことができる」…バーバラはシーバが落とした金髪を拾い、大事に日記に挟む▼この映画サスペンスでもあります。このままではすまない不吉な予感をジュディ・デンチの存在が掻立てる。美術室に明かりが灯っている夜、シーバだろうと思って迎えに行ったバーバラは、シーバと少年スティーブの不倫の現場を目撃する。相手は15歳だ、犯罪ではないかとバーバラが難詰すると「異常と思うでしょうが関係を持っても許されると思ったの」とドン引きするシーバの回答。言い分を聞くと「わたしは真面目に生きてきた。貞淑な妻、よき母。ベン(息子=ダウン症)の介護者。でも心の声が叫び続けていた。なぜ快楽を味わってはいけないの? 簡単だった。飲んではいけないお酒に手を出すように。忘れていた甘い囁き、道徳に背く醜い過ち。愚かと知りながら流れに身を委ねた」。少年はジゴロも顔負けだ。やすやすとシーバを呼び出し、倉庫の陰に連れ込む。「好きになさい。先生はやめて」とシーバ…「もう一度したい?」「ええ、もう一度」▼バーバラはどう出たか。「欺かれた怒りに一瞬目がくらんだが今こそ彼女を支配する絶好のチャンスなのだ。わたしに対し永遠の借りを作り、わたしは全てを手に入れられる」。シーバは裏表のない女性である。バーバラに「校長に報告する義務があるでしょうけど、新年まで待って。クリスマスを家族と過ごさせて」。バーバラは優しく「だれにもいわないわ、シーバ。いったところであなたも学校も、だれもトクしない。これは個人的な問題よ。封じておきましょう」「辞職すべき?」「そんなことしたらかえって勘ぐられる。でも関係は清算して」シーバは感動し、涙ぐんで「約束する」と誓う。

 

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