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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2016年10月15日

特集 LGBTー映画にみるゲイ206
ぼくのエリ 200歳の少女(2010年 ゲイ映画)

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監督 トーマス・アルフレッドソン

出演 カーレ・ヘーデブラント/リーナ・レアンデション

 

シネマ365日 No.1905

トン、トン、ツー 

特集「LGBT—映画に見るゲイ」

一生をエリに捧げ、家族も友だちも棄て、ひとり列車に乗って故郷を離れる少年の孤独な純愛に胸がふさがるわ。少年はオスカー(カーレ・へーデブラント)。母子家庭で学校のいじめられっ子。いつも部屋で犯罪や事件のドキュメンタリーを読む閉じこもり気味な12歳。ストックホルムの郊外。雪の夜、オスカーのアパートの隣の部屋に中年の男性ホーカンと娘エリ(リーナ・レアンデション)が引っ越してきた。オスカーは学校から帰るとナイフを持ち、中庭に出て、その日自分に向けて言われたイジメのセリフを、裸の枯れ木に向かって意地悪くいい、ナイフで木を傷つける。「何を見ている、いえよ、オレか、生意気だぞ」そこへ「何をしているの」声をかけたのがエリだ。エリは音も気配もなく、ふっとオスカーの前に姿を現わす。「君の家の隣に越してきたの。悪いけど友だちにはなれない」いきなり心の中を見透かされオスカーは戸惑う▼北欧の雪景色、枯木立、まっすぐな白い一本道、樹氷に輝く林。スウェーデンの冬の景色の、鋭角な映像がミステリアスなエリを際立たせていく。エリは学校にもいかない。昼は外に出ない。エリの部屋には何も家具がない。何を食べているのかもわからない。エリの世話をしていたおじさんはある日死んでしまった。エリの吸血用の血液を集めるため、彼は殺人を犯し、採血した血の入ったポリタンをもち帰るのが彼の仕事だった。ある日見咎められ逃走に失敗した。硫酸を自分の顔にかけ身元が分からないようにしたのち、自らをエリの吸血に供して死んだ。エリはそれからひとり暮らしだ。血液を自分で手に入れるため再々人間を襲撃します。オスカーはエリが好きだ。キューブを貸してあげると、翌日綺麗に色の揃ったキューブが中庭のベンチに置いてあった。「君、匂うよ」「…」「寒くないの。どうして?」「感じないから」「誕生日は」「知らない。だいたい12歳くらい」「プレゼントをもらったことは」「ない」「これ、あげる」オスカーはキューブをエリに渡す。「オスカー・やり返すのよ」エリはオスカーがいじめられていることを知っている。「やり返したこと、ないでしょ」「相手は3人だよ」「思い知らせてやるの。手伝うから」▼エリが窓から入ってきたことがある。「どうして窓から?」「飛んできたの」「そうか」エリはベッドに入りオスカーの背中にくっつく。「エリ。僕と付き合ってくれる」「どういう意味」「僕のガールフレンドになること」「無理だよ。女の子じゃないもの」「関係ないさ」「付き合うと何か変わる?」「いいや」「じゃ、付き合うよ」。朝になるとエリはいなかった。置き手紙があった。「ここを去って生き延びるか。止まって死を迎えるか。君のエリ」。課外授業でスケートに出たオスカーは、いつものように絡んできた、いじめグループ3人組のリーダーを棒で叩きのめした。帰ってエリにいった。「オスカー、やったね」「僕は負けなかったよ。棒でぶんなぐってやったのだ」。オスカーは「血の契り」をしようと、自分の掌を斬りエリの掌と合わせようとした。床にしたたりおちた血を、エリは我慢できなくなって啜る。呆然と見ているオスカーに「出て行って、早く!」▼エリがヴァンパイアだと知ったオスカーの態度が変わる。エリを見下し、訪れたエリに人差し指でチョイチョイと小招きする。「入っていい?」ヴァンパイアは許可がないと訪れた部屋に入れない掟がある。「チッ、チッ」とオスカーは舌を鳴らし、指を動かすだけ。エリは恐る恐る足を踏み入れるが、たちまち発作を起こし、目、耳・口から血が噴き出した。うろたえたオスカーは「入っていい、いい」と叫び、ようやくエリはおさまる。ここ、なんなのでしょうね。秘密を知った人間の傲慢さか、それともヴァンパイアは強烈なパワーがあるにもかかわらず、人間から化け物扱いされてきたからか、人間の厭らしさはこういうものだという監督のサディッションか。エリはオスカーに「人を殺したいと思っているでしょ。相手を殺しても生き残りたい。それが生きるってこと。わたしを受け入れて。少しでいいからわたしを理解して」▼エリがいう「わたし」なのですけどね。これはちょっと〜わからないと思いますよ。エリが風呂場で服を着替えるところをオスカーが覗く。エリの下半身が一瞬映ります。ボカシが入っていますが、原作によるとこの局所に外科手術の跡があり、エリは女の子ではなく去勢された男の子だとオスカーにわかります。「女の子じゃないもの」とエリがいったのを「女の子じゃなくヴァンパイアだから」と受け取っていたのですが、実は男同士だったということね。「200歳の少女」なんて人を愚弄したタイトルのおかげで、ラストまで何の話だか、わからなかった人がいても無理ないと思うわ。連続殺人事件で町は騒然となってきた。目撃者もいる。「もうここにはいられない」とエリはいう。ラストシーンは、ガラ空きの列車に、オスカーがひとり、ポツンを座っています。旅装である。彼は町を出たのです。大きな箱のようなトランクの中から「トントン」と音が聞こえる。モールス信号だ。オスカーとエリは壁越しにモールス信号を交わし合っていた。オスカーがトランクの外をトントンと叩く▼ヴァンパイアは年を取らない。ホーカンもかつてはオスカーのような少年だったに違いない。彼はエリを守るために顔を焼いたのである。オスカーはそれを承知でエリと一緒にいようとしている。彼は12歳だ。エリが生き延びる血液入手のため殺人を犯し、罪を背負い、人と世間を避け、町から町を転々とするこれからの人生を。気が遠くなるような静けさの中で聞こえる…トントン・ツー。

 

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