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シネマ365日

2016年10月19日

特集「腐女子が萌える」②
バスケットボール・ダイアリーズ(1996年 事実に基づく映画)

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監督 スコット・カルヴァート

出演 レオナルド・ディカプリオ/ロレイン・ブラッコ

 

シネマ365日 No.1909

終わりよければ全てよし

特集「腐女子が萌える映画」

レオさま初主演作だって。21歳です。仔馬のようなスレンダーな体が初々しいわ。この2年後が「タイタニック」ね。思うのだけど、経験や訓練によって上達できるのは技術とか、スキルとかいうものであって、気持ちとか志とか情熱とかいう「心の部分」は、年をとったからレベルが上がる、あるいは下がるってものでもないのね。意思の強さとか、志の高さというのは、持って生まれた素質がとても大きいのでは。そう思ったのも、レオさま、21歳かそこらで、熟年顔負けの成熟した演技を見せているからよ。ほとんどすべてのシーンに出ずっぱり。初主演に燃えているわ。バスケ・シーンも、さぞ練習したのでしょうね▼彼のファン層は広いと思う。少なくともわたしの友人たちは、彼がオスカーを取り損ねるたびに「残念ね、あの子、頑張っているのにね〜」と親身な感想を漏らした。女も身すぎ世すぎを経た年齢になると、底の割れた美形ごときで、いちいち面倒くさい褒め言葉などいわなくなる。彼女らは実感としてディカプリオが「頑張っているな〜」と思ったのだ。ハリウッドの超セレブであるにもかかわらず、劣悪なコスパ(ギャラ取りすぎ)俳優として名前があがってこないのも、強い俳優として、説得力を持っているからだろう。でもそれは21歳の頃からの、たゆまぬ努力だったのね、ウルウル。主人公ジム(レオナルド・ディカプリオ)はミッション高校の不良生徒。教室でバシッ、バシッと重い音が響き、その度同級生たちが顔を背け、あるいはうつむいたりするのは、ジムが神父に、尻を太い棒で叩かれているからだ。懲罰が終わってもジムは反省の色などない。仲間のミッキー、ペドロ、ニュートロンとともに町に繰り出し、喧嘩はする、脅しはする、母親(ロレイン・ブラッコ)の厳しい叱責も馬の耳に念仏である▼そんな彼だが、バスケットボールと日記を書くことは好きだった。日記帳には詩も書きつけている。7歳の時からの親友であるボビーは白血病で2年前から入院中だ。ジムは見舞いに行き、抗がん物質の投与で毛髪のなくなったボビーの、はかなく、寂しげな様子をみて、病院を連れ出し、ストリップを見せにいくが、ボビーは余計辛くなって病院に帰ろうという。ジムの思いやりは空回りだ。彼の詩はこんな具合だ。「僕は星空の下で裸だ。僕の裸身と星だけだ。いくらでもマスがかける…」。「白い船が人工の波間に消える」「この家が好きだ。多すぎるほどの窓。朝に向かって開き、夜の帳に閉める」。どこがいいのかさっぱりわからないが、心情の吐露にはなっているのだろう▼ボビーが死んだ。信じられないほど痩せ、細くなって。「僕にとって初めての死」と書き、ヘロインを打ったときのことを思い出す。それまで粉で吸っていたが、売人が「吸うより注射でやってみな」といった。「長く熱い波が体を覆い、痛み、悲しみ、罪悪感が全て消えていった」ボビーは幻想の中で花園を走り、空を仰ぎ、両手を広げて青空に抱かれる。驚いたのは母親だ。それまでろくな息子ではなかったが、ドラッグには手を出さなかった。バスケの全国大会出場を目指し、練習に励んでいた。母親はトイレにしゃがみ、壁にもたれて顔を歪め、意識もうろうとしている息子を見て「いったいどうしたの。信じられない。これがお前だなんて。ジム、何があったの?」息子は口汚く罵る。「うるさい。掃除でもしていりゃいいのだ。トイレを磨け」。正気の域ではない。ドラッグによって、何でもできる気になり、神経はとめどなく錯乱し、陶酔の世界に浸っていく。母親は気が狂ったように「神様、息子をお守りください。愛しているのよ、ジム」と呼びかけるが、息子の行状はますます泥沼へ。本作が公開された当時、R指定を受けたのは、麻薬依存や売春と、ジムが教室で銃を乱射するシーンがあったからだ。ジムが妄想のなかで、黒いトレンチコートを着て教室に入り、生徒や教師を無差別に射殺するのである▼ジムはミッキーたちと酒場で、元の仲間が全米高校選手権試合で勝ち、チームを代表してインタビューを受けているのを見た。彼はテレビに向かい「母に一言いわせて。母さん、ありがとう」と嬉しそうにいっていた。ミッキーたちはジムに「過ぎた夢を追うな」などというが、ジムの表情は苦く暗い。練習もろくにせず、ドラッグで体はボロボロ、試合中足がもつれて倒れる、こける、あげく失神したジムは警察の取り調べを受け、退学。母親の家は追い出され、ジャンキーたちの溜まり場で寝起きする。ドラッグを買うため街頭の男娼となった。再起するチャンスがなかったわけではない。バスケ仲間のレジーが雪の中に倒れているジムを助けた。かつてドラッグ中毒だったレジーはジムを部屋に閉じ込める。禁断症状でわめき散らし、口から泡を吹くジムに一晩めを離さず、朝になって落ち着いたのを見届けてレジーは仕事に出た。その隙を見てジムは家中を家捜しし、金をかき集め、売人の元に走った▼金がなくなったジムは結局母親に助けを求めた。ドア越しに「金をくれるだけでいいんだ、母さん、あんたの息子だろ、助けてくれよ、なぜ金をくれない、頼むからドアを開けてくれ」汗と涙と、唾液でドロドロになった顔で声を限りに叫ぶ。心を鬼にした母親は警察に電話した。「強盗がいます、ナイフを持っています」。取り押さえられたジムは少年院送り。そこで半年間。身を切るような痛みの禁断症状を耐え、強姦に会い、更生者の「社会復帰の会」で経験を話すまでになった。ジムは17歳までに日記「マンハッタンの少年」完成、22歳までに3冊の詩集を、その後4冊のアルバムを出した。「あと1回で終わりにしようと思いながら終わらなかった。自分をコントロールできると思っていてもできなかった」とジムは回顧している。初めからやめときゃいいものを。触らぬ神にタタリなし。母親の気丈な判断に救われたようなものよ。

 

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