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シネマ365日

2016年10月20日

特集「腐女子が萌える」③
ベイツ・モーテル サイコ前章(上)(2014年〜 サスペンス映画)

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出演 ヴェラ・ファーミガ/フレディ・ハイモア

 

シネマ365日 No.1910

「サイコ」前夜 

特集「腐女子が萌える映画」

「サイコ」の前日譚です。ノーマン・ベイツ誕生秘話というべきか。彼の背景、特に母親ノーマ(ヴェラ・ファーミガ)との関係がこってり描きこまれます。主役ノーマン・ベイツを演じるのがフレディ・ハイモア。アンソニー・パーキンスのイメージをやや明るくした、イギリス生まれの24歳(2016)、細い長身にワイシャツと丸首のセーターという、ご存知ノーマンスタイルで登場します。舞台は現代のオレゴン州、母親ノーマと引っ越してきたばかりの17歳の高校生です。ノーマンの父親は急死し、保険金で抵当流れのモーテルを購入した。ノーマはこのモーテルを息子と経営し、人生再出発を期しています。「ここでやり直すのよ、ノーマン。きっとうまくいくから」。ノーマンは気立てのいい、穏やかな性格で母親思いです。地元の高校に編入します。転校初日に美人で人気者のブラッドリーに声をかけられ、パーティに誘われたりしますが、彼女の父親が焼死する事件が起きます▼ベイツ・モーテルを開業直前に、元の所有者のキースという男が「俺はこの家の秘密を全部知っている、お前たちがここにいるのは間違いだ」と嫌がらせをしにきます。ママは相手にせず追い返した。ノーマンがブラッドリーに誘われダンス・パーティに出かけた隙に、ママはキースに襲われ、レイプの途中で、帰ってきたノーマンに助けられるが、ママはキースを殺しちゃう。通りかかったパトカーがやってきて、保安官のロメロと副保安官のシェルビーが変わったことはないかと訊く。キースの死体を浴室に隠したノーマンとママはうまく切り抜ける。ノーマンは同級生のエマと友だちになる。エマの父親は大学教授だったが、エマの「のう胞性線維症」(CF)の治療のため大学を辞め、ここにきた。肺に粘液が生じ呼吸困難になる、胚移植の待機中だが、ドナーが現れるまで保つかどうかわからないというエマに、ママは「余命どれくらい」と質問する。キツイ質問だ。ママはノーマンに近づく女の子は皆気に入らないのだ。「27歳くらい」とエマは答える。ノーマンの異父兄であるディランが転がり込んできた。子供のときから「何でもノーマンのため」だった母親をディランは恨み、母親を「娼婦」と呼んでノーマンと大喧嘩になる。「ママはやさしい。欠点はあるが悪人じゃない」とノーマンはいうのだ▼以上がおよその登場人物です。副保安官シェルビーはママに気がある。彼によれば「この町は平和に見えるがちがう。主たる産業だった林業は環境保護のため廃れた。住人はチーズを作り、豚を飼育しているのに豪邸に住み、ヨーロッパ車を乗り回す。つまり、本業以外に稼ぐ方法があるということだ。大麻だよ。500万ドルの大麻畑が森にあり、栽培して町が潤っている。所有者はこの町の家族だ。ジェリー(ブラッドリーの父)が焼き殺されたのは、組織の誰かを怒らせたから見せしめに焼かれたのだ。目には目を、がこの町のルールさ」▼CFのエマは、ノーマンがモーテルの部屋の絨毯を取り替えるときに発見した、古いノートにある文章と絵を突き合わせ、書かれてある内容が、全て事実であると主張し、モーテルの部屋で証拠を見つけます。手短にいうと、キースたちは少女売春と売買をかつてのモーテルの一室で行っており、中国から連れてこられた少女4人が、毎日客を取らされていた。4人のうち一人はオーバードースで死に、3人は彼女を森の中に埋め墓を作った、とある。墓を探しに森に行った二人は、眺望のひらけた場所が、一面の大麻畑であることを知るが、数人の男に見つかって追撃され、命からがら逃げ帰る。このあたりまでは前段ですが、それでもノーマンとノーマの密なる関係はすでに息苦しいほど描かれます。ノーマンは副保安官のシェルビーに近づく母親が気に入らない。ママは女の子と息子が出かけるのに不機嫌になる。ディランは母と弟を「いつも仲がいいな」と憎々しげにつぶやく。ノーマンは暴力を振るい、嫌がらせをいう兄に対し「僕の家族はママだけだ。ずっとそうだ。心が繋がっている。ママと僕は離れられない」と、ますます密着度を濃くしていく▼ヴェラ・ファーミガが、精神の異界を出たり入ったりする、危うい母親をケレン味なく演じています。彼女は42歳(2016)で、貫禄といってしまう年齢ではないと思いますが、とにかくレパートリーの広い人です。サスペンス、アクション、ファンタジー、シリアス、クライム、ミステリーと全ての分野に溶け込んでいく。監督もやっている。いいけど女優ほど、彼女の魅力が発揮できるとは思えません。「ギプスの女」といい、本作の異界の母といい、ヴェラの怪演です。

 

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