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特集「ナンセンスは素敵だ」

2016年10月26日

特集「ナンセンスは素敵だ3」①
リプリー/暴かれた贋作(2005年 サスペンス映画)

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監督 ロジャー・スポティスウッド

出演 バリー・ペッパー/アラン・カミング/ウィレム・デフォー

 

シネマ365日 No.1916

おバカっぽすぎる

ホントにこれ、パトリシア・ハイスミスの「リプリー」か、と疑ったくらい、おバカっぽいノリなのよ。それはそれでけっこう面白かったのだけど、どこが、と聞かれたら本筋には全然関係ない、ウィレム・デフォーの必殺ワンシーンでした(笑)。彼の役はアメリカ人の絵画のバイヤー、マーチンソン。ダーワットという新進気鋭の画家の大ファンです。彼を売り出す画商ジェフがアラン・カミングだ。初展示会が大成功し、ダーワットはシンシアにプロポースしたが彼女は「ノー」。ショックのあまり無謀飲酒運転し、大木に激突、死んじゃう。心配してダーワットを追いかけてきた友達4人が、詐欺師のトム・リプリー(バリー・ペッパー)、売れない画家のバーナード、シンシアとジェフだ。4人は画家が生きていることにして、彼の描きかけの絵を売りさばき一儲けしようと一致する。宗教にはまっているバーナードだけが反対するが、シンシアが「一枚につき一回のセックス」という条件であっさり宗旨替え▼ところがマーチンソンが贋作だと気付き大騒ぎする。慌てたジェフはトムに連絡。彼はロンドンで知り合った、フランスの大富豪の令嬢、エロイーズを追いかけ、お城のような館にいた。彼女の父親はしっかり身元調査し、リプリーが学歴詐称、クレジットカード偽造などの詐欺師だと看破。でも娘は「それが何よ」と意に介さない。まあ、ここまででもかなり大雑把で、辻褄合わせだけの進展なのです。ハイスミスらしいのは冒頭のエピグラムだけといってもいい。曰く「これこそが罪であり、嘆かわしいものだ。殺人ごときで興奮し、盛り上がる人々が」。だから詐欺師を主人公にしたというわけか。でもその割には後半ぞろぞろ死体が上がってくるのだけど。最初の死体がマーチンソンです。「納得いかない、ダーワットに合わせろ」と追い込まれ、ジェフがまた調子のいい男で、あっさりトムのいるフランスのお城を教える。マーチンソンが来ると聞いてトムは、エロイーズが出かけたのを幸い、ダーワットに変装して迎えるのだ。でも見破られ、争ったはずみにマーチンソンは石の上に転び、頭を打って死亡。打った拍子に頭からカツラがポロリ、ウィリアム・デフォーが実は丸ハゲだった。全然必要なシーンじゃないのだけど、それだけに意表をつきました▼奥さんからマーチンソンの失踪が警察に届けられ、リプリーは館に警部の訪問を受ける。真っ赤なトマトの出来栄えに警部は感心するが土の下は死体だ。殺す、死体を始末する、警察が追跡する、一瞬の差で死体を移動する、リプリーは七転八倒しながら、警部を巻くため、エロイーズと列車の洗面所に隠れてセックスするという非常手段で逃げ延び、エロイーズは父親を説得したのか諦めさせたのか、どちらにせよ、リプリーと広大な館の庭園で結婚式を挙げるのだ。で、一連の殺人はどうなった。これがまた荒っぽい解決で、死体をトランクに詰めた車を焼くとか、池に沈めるとか、隠すためじゃなく死体を発見させて自殺を思わせるためなのですけど▼セックスにつられて贋作に精を出す画家とか、アラン・カミングの抜け目のなさと軽薄を一緒にした身の処し方とか、「あ〜ヤになっちゃった、彼しつこいのだもの」と仕事(?)を投げ出すシンシアとか、退屈しないキャラが揃っています。トム・リプリーは才知に富む詐欺師のはずですが、行き当たりバッタリの出たとこ勝負の連続で、アラン・ドロンやマット・デイモンの演じたリプリーとは別人だと思ったほうがいいですが、軽快なテンポで助かっています。でももう少しインテリジェンスを感じさせて欲しかったわ。はっきりいって主役級の4人とは、贋作で儲けるため犯罪を重ねた詐欺仲間なのよ。いうなれば本作のノリの軽さは、「殺人ごときで興奮し、盛り上がる」人々ではなかったという証拠なのでしょうか。

 

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