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特集「ナンセンスは素敵だ」

2016年10月27日

特集「ナンセンスは素敵だ3」②
マンモス 世界最大のSNSを創った男(2009年 家族映画)

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監督 ルーカス・ムーディソン

出演 ミシェル・ウィリアムズ/ガエル・ガルシア・ベルナル

 

シネマ365日 No.1917

だからどうなのよ! 

副題からしてジョブズみたいな天才が出てくるのかと思ったら、ちがうのね。ルーカス・ムーディソン監督らしい、調和のとれたつつましい世界だったわ。それにしてもだいぶヘンだわよ、この主人公。レオに扮したガエル・ガルシア・ベルナルは第二のイライジャ・ウッドになるのでは。レオはゲーム・サイトのファウンダーで億万長者。妻のエレンは救急病棟の外科医。夫婦とも多忙で娘の世話はメイドのグロリアに任せている。娘がグロリアになつきすぎているように思え、エレンは母親としての自分に自信喪失する。嫉妬もまじりグロリアにしょうもないことで注意したりする。でも後悔して謝る。グロリアはフィリピン人だ。国には息子がふたり、祖母と暮らす。母親に帰ってきてほしいと涙ながらに電話する。長男は10歳くらいか。「ぼくも母さんの手伝いはできる。働いてお金を稼ぐ」と訴える。レオは天才的な頭脳だが交渉事は自分に任せて、バンコクの取引ではサインするだけでいいと側近ボブにいわれ、ハイそうですか、と毎日観光にでかける▼ボブがレオにプレゼントする万年筆がマンモスの骨でできている。高価ですってよ。そのうちマンモスみたいに滅びるって暗示か。ベルナルお坊ちゃんの、たよりない顔をみていたら、そうも思いたくなる。いくら側近まかせだって、アジア市場の開拓だというときに、そこまで人任せにする創業者はいないだろう。それにこの天才は出張先であやしげな売春宿にでかけ、女と人気のないビーチの粗末な小屋に泊まり込み、浮世を忘れてパラダイスの日を過ごすのだ。バンコクには自家用ジェット機で来た。人間お金ができすぎるとやることが妖しくなるのか。それにやれストレスだ、やれ疲労だとかいったところで、やたらスマホで呼び出されているだけで、まともにどんな仕事しているのか少しもわからない▼外科医の妻も昼夜を問わず手術と急患が入り、娘と食事するヒマもない。グロリアは娘を教会に連れていってくれたり、フィリピンの言葉を教えたり、親身になって面倒みているからなつくのは無理ない。グロリアはでも故郷に残してきた我が子たちを忘れたことがない。せっせと働くのも彼らに仕送りするためだ。長男がお金ほしさに、観光客相手の売春に手を出した。よく意味もわからず「夜あそこにいると金をくれる男たちがいる」という言葉だけで判断し、殺されかけた。グロリアはとるのもとりあえず空港に向かう。家にだれもいなくなった娘は病院のママに電話するが、ママは手術中。虐待で重傷を折った男の子だった。子供は術中死する。親のいない子と、子のいない母が、家と空港と病院で途方にくれ、さびしがっている。こんなシーンはさすがムーディソン監督だと思うのですが、ノーテンキなレオが現れてぶちこわしになるのよ。だいたい、君はなんのためにバンコクに来たのだ。子供は母親かメイドにまかせ(そのほうがいいかもしれないが)、家ではゲームかおもちゃ遊び。天才だから許そう、としよう。妻はあきらかに欲求不満で、夫が仕事だとでかけるのをひきとめ、ベッドにさそいこむくらいだ。外科医の仕事はたいへんだろうけど、メスを動かしながら同僚との無駄話をきいていると、白ける▼バンコクの海岸で数日を過ごした娼婦にも子供がいて、レオの万年筆を盗んで売り飛ばす。桁違いの貧しさのなかで生きている。レオは妻子が恋しくなって契約書にサインし、アメリカに飛んで帰る。妻と娘の顔をみて幸福を噛みしめる。だからどうだっていうのよ!この映画。DVDのケースにこうあったわ。「巨万の冨を築いた超人気ウェブサイト創始者の栄光と挫折」だと。しかし側近の言いなりになるような男は、巨万の冨を稼ぐ前に放り出されているのではないか。逆に外科医の妻は、よくできるいい家政婦にせっかく巡り会えたのだから、それこそ安心して娘を任せたらいいではないか。母娘の絆なんか、きれそうできれない。どこかで聞いたような、さもありそうな話ばかりでなりたっていて、どっきりする生身の親子じゃないのよ。仕事もなにもかも放り出してケータイ切るなりトランクに荷物つめて家を飛び出したグロリアが、わずかに生活感を漂わせていた。娘が「グロリア、どこへ行くの?」と聞いたら「ママを呼んで」と言い捨てる。お前の面倒みているときじゃない、本物のママに頼むわって感じよ。日本未公開だった。これじゃ無理ない。

 

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