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特集「ナンセンスは素敵だ」

2016年10月31日

特集「ナンセンスは素敵だ3」⑥
女だけの都(1937年 コメディ映画)

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監督 ジャック・フェデ―

出演 フランソワーズ・ロゼー

 

シネマ365日 No.1921

ひとつも古くない

ジャック・フェデ―という監督にご記憶ないでしょうか。「外人部隊」「ミモザ館」「テレーズ・ラカン」、ハリウッドではグレタ・ガルボの最後のサイレントになった「接吻」や、イギリスではマレーネ・ディートリッヒの「鎧なき騎士」があります。ジャン・ルノワール、ジュリアン・デュヴィヴィエ、ルネ・クレール、マルセル・カルネと並ぶ、フランス、クラシック映画5人監督のひとり。ジャック・フェデ―がほかの監督とちがうところは、奥さんにフランソワーズ・ロゼーがいたこと。本作の主演女優です。多くの映画を夫とともに撮りました。どれもみな骨太の佳品です。とくに本作はロゼーのみならず、コメディを得意とした監督の代表作となりました。ロゼーの肝っ玉母さんがのびのび、しかも貫禄です。彼女は有名なコメディ女優だった母親から、お前はブサイクだから女優にはなれないと反対されたにもかかわらず、パリの国立高等演劇学校で演技を学び、巡業にも出て舞台をこなし、徐々に名をあげていきました。26歳でフェデ―に出会う。フェデ―以外にも多くの名監督の作品にでて、スケールの大きな風格のある演技で国際的に活躍した名女優です▼映画の舞台は17世紀のフランドルのブレダ。南オランダと北フランスに当たる地方です。ブリューゲルやボスの絵そのままの風景がスクリーンに出てきます。小さな町は城壁で囲まれ、川沿いで女たちが洗濯、ニワトリが歩き、農夫が荷車を引いて通る平和な風景。年に一度の祭りの準備でみな忙しい。そこへ突如騎馬の伝令が。スペインの公爵が兵隊をひきつれ町にやってきて今夜投宿するという。スペイン兵ときいて町役場のお偉方の頭には虐殺・強奪・強姦がひらめく。槍で串刺しにされた女や、レイプや、吊るし首になった想像シーンはかなりリアルでグロイです。幹部らは町長が急死したことにして、喪中につき公爵一行に素通りしてもらおうと、虫のいいことを思いつく。町長夫人コルネリア(フランソワーズ・ロゼ)は、年頃になった娘たちや、まだ小さい息子の世話に余念がない。召使たちを指図し、あれこれ祭りの支度を整えている。そこへスペイン兵が攻めてくる、夫は死んだふりしてやりすごす、ですって? スペイン兵よりその方針にコルネリアは驚く▼コルネリアは町の広場に女たちを集める。「敵がそこまで来ている、わたしたちは素手で戦うのよ。大昔から女のほうが武装した男たちより強いのよ。わたしたちが家や子供を守りましょう。いいですか、長い間、女が男のいいなりになっていたのは、わたしたちの母やその母が、ただ従っていた、それだけのことです。わたしたちはフランドル全土の模範となって、女性の名誉と精神と勇気を示すのです」と鼓舞する。コルネリアは主だった女たちに盛装させ、喉が乾いて到着するにちがいない遠来の客たちのために飲み物を用意し、手筈を整え、「お客さま大歓迎」とアーチを掲げる。思いがけない歓待に公爵は感激、悲嘆にくれている最中にもうしわけない、一夜滞在したら早朝には出て行くと、丁寧に答える。そこへ農婦がバタバタと、鴨が盗まれたと走りこんできた。兵士のひとりのポケットから「グワグワ」と鴨の鳴き声が。隊長は「逆さ吊りにせよ」。鴨一羽で可哀想だという農婦に「規律だ」と一言。スペイン兵の一行は、統制が厳しいのであります▼コルネリアは公爵や隊長やらの部屋をわりふる。町長の部屋に弔問にきた公爵は「なぜ泣かない」とコルネリアにきく。彼女は「ほっと致しましたので」(笑)。女たちと兵隊たちはすっかり打ち解け、しっぽりと、それぞれの部屋の窓のカーテンが閉まる。兵隊たちは酒場で羽目をはずし、陽気に騒いで舞踏会が始まる。コルネリアは恋仲の若いふたりを紹介し、酒場にいる生臭坊主を呼んで式をあげさせる。町長が生きている、すべて芝居であると坊主は見破っているが、袖の下をもらって知らぬ顔をする。コルネリアは雷が鳴って公爵にしがみつく。一夜あけ、スペインのご一行は粛々と町を出て行った。歓待の感謝として公爵の「一年間の租税免除」措置をコルネリアが告げると歓声があがる。「これも町長の機転のおかげです」とコルネリアは夫に花をもたせ、バルコニーにひっぱりだす。人の機微を描き込んだ映画です。ひとつも古くなっていません。

 

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