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特集「ベストコレクション」

2016年11月5日

特集「凍れる月のベストコレクション」⑤
選挙の勝ち方教えます(2015年 日本未公開)

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監督 デヴィッド・ゴードン・グリーン

出演 サンドラ・ブロック/ビリー・ボブ・ソーントン

 

シネマ365日 No.1926

道をつくればいいのよ 

凍れる月のベストコレクション

米国大統領選投票が目前。世界中の熱い視線が注がれる。そこで、というわけでもないけれど選挙戦の熾烈な舞台裏を扱った本作、いい映画なのに劇場未公開だった。ワケわからないわね。それに「選挙の勝ち方教えます」という邦題も、内容と全然ニュアンスが違う。ハリウッドの女優が滅多に巡り会えない役をサンドラ・ブロックがやっているのに、彼女のヒット作のグレイシー・ハート(「デンジャラス・ビューティ」)のノリでつけたのかもしれないが、もういい加減に、映画を見ないでタイトルをつけるのはやめにしてほしい。サンドラは、選挙戦略をプロとするコンサルタント、ジェーンの役だ。彼女は過去の選挙戦で敵陣営のコンサルの罠に落ち、現場から去ることを余儀なくされた。今は雪の山中で陶器を焼いている。そこへ旧友のネルがボリビア大統領選の陣営入りをしてほしいと頼んできた。敵の参謀になった男はパット(ビリー・ボブ・ソーントン)。彼こそジェーンをはめた男。このままでは「死んでも死に切れないはず」と読んだネルの狙いは的中し、ジェーンは参画を決めた▼2002年に候補者が対立したボリビア大統領選が下敷きになっています。ジェーンが引き受けた候補者ペドロは、28ポイントの大差をつけられていた。演説中、卵をぶつけられたペドロが、怒って相手を殴り飛ばすと、陣営は謝罪文を出すという。ジェーンは出すなと止める。候補者の印象が悪くなるという参謀たちとは反対に、謝ったら最後、非を認めたことになる、国民が望んでいるのは話のわかる大統領ではない、増税に喘ぐ貧しさ、仕事のない社会構造、発展のない未来、どうやって生きていけばいいのかわからない国民に、現状が危機であることを訴え、甘い考えを捨てさせ、ともに戦う意識を持たせることだ、対立候補は汚い手段を使って挑発してきたのに、謝罪などする必要はない▼ペドロはアメリカの大学で学び、一期大統領を務めたが次期選挙で落選した。彼はアメリカナイズされ、地元のことを考えず高慢で冷たい、が対立側の攻め方だった。ジェーンはいう。「人の性格は変えられない。しかし理想像は変えられる。その人の言葉は忘れられても印象は残る」そこでペドロに「あなたの印象は敵を撃ち殺す人。嫌われているけどかまわない。どだい、愛と恐怖が共存するのは難しい。未来に怯える有権者は戦時のリーダーを選ぶ。彼らが求めているのは卵をぶつけられて容赦しない、猛然と殴りかかる力強い男です。人に好かれず高慢ちきな男かもしれない、でも彼は戦う男、国民の命を救うことを訴えるのよ。国の危機なの。ただの選挙ではない、我々の売りは危機よ」-Our brand is crisis-これが原題です。投票まで90日。ジェーンは躊躇なく、どんな政治家も嫌がる「ネガティブ・キャンペーン」を張ります。敵候補者の演説の一言一句を分析し、評判を落とすためのネガティブ・イメージに置き換える。雄弁=ペテン師、女性に親切=堕落している、フレッシュ=経験がない、毎日、新聞の政治記者に連絡し敵候補のマイナスネタを与える、引用した言葉、会った人物の発言を調べ、彼に不利になるよう利用する。ペドロ陣営のポイントはじりじりと上がっていった。味方陣営ではジェーンの過激な方法が間違っているのでは、と非難が上がる。彼女は一言のもとに退ける。「間違いはただひとつ、負けることよ」▼敵陣営も同じ攻め方できた。ペドロの息子がドラッグにはまり、ある宗教に入っていること。テレビ・インタビューの席上、そこを突いてくるのは目に見えている。ジェーンはいう「認めなさい。息子の弱点もドラッグも。そしていうのよ。確かに問題のある息子だ。それでも息子を愛している。言葉に詰まり後が続かなくなったらカメラを見るのよ。目をそらさないで!」その通りにした、ライトの眩しさでペドロは目をしばたたき、涙ぐんだ。息子への愛を表明し、目頭を押さえる候補者に支持率は跳ね上がった。パットが会いに来た。「あなたもわたしも、選挙の駒でしかない」とジェーンはいう。「下劣で最低の人間よ。わたしはいい人間だけど、下劣で最低の手段であなたを勝たせた。でも今度は、わたしの力でこの戦いは勝利寸前よ。勝つチャンスをあなたにつぶさせはしない」。28ポイントの敵方大量リードを跳ね返し、ジェーンはペドロを逆転勝利に導きます。宿敵との因縁の勝負に決着をつけた。でも選挙とはそれで終わる単純な勝負ではなかった▼エディという少年がいる。高校生くらいだろうか。親の代からのペデロ派で、国を救うのはペデロしかいないと信じている。ペデロのためにならどんな危ない選挙戦もやった。無事勝利して国の未来が見えたはずだった。ある日、少年はペデロの執務室で、彼が公然と公約を破る現場に遭遇する。ジェーンに訴えた。ジェーンはいった。「選挙には勝てても彼を善人にすることはできない」「あなた自身はどうするのですか。いろんな偉人の言葉を引用するけど、あなた自身の言葉はどうなのですか」。エディは新大統領の政策反対デモに公然と参加した。ジェーンは世界を変えようと本気で立ち向かっている彼の姿に、自分がとっくに失った純粋な情熱を覚える。大統領パレードの日、賛成・反対派がぶつかり合う大通りで、ジェーンは車を降りた。危険だ、戻れという声を背にジェーンは消えた。後日彼女の姿は「南米連帯ネットワーク」の活動に見出される。彼女は自分がいるべき居場所を見つけたのか。映画は彼女の行動が正解だとも正解でないとも答えを出さない。このセリフだけだ。「誰かがいってた。道が気にいらなければ、新しい道をつくればいいのよ」お見事なほど始めから終わりまで、仕事一辺倒の映画ですね。ラブシーンもなければキスシーンもない。恋愛もなければ不倫もない。そんなもの(ケッ、面倒くさい)って感じです。最近のサンドラの映画、そんなのが増えてきたよ。「ゼロ・グラヴィティ」がそうだった。「デンジャラス・バディ」は女子友情ものだった。「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は家族ものだった。本作の主人公は男性だったのを、サンドラが是非自分にと訴え、脚本のピーター・ストローハーンが書き換えたものだ。興収はいまいちだったのは、まさか大統領選のタイミングで圧力がかかった? まあいいか。うまくいかなかったことが失敗とは限らないのだ。意欲的なサンドラ姉御の挑戦だったと、認める人はいっぱいいるさ。

 

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