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特集「ベストコレクション」

2016年11月7日

特集「凍れる月のベストコレクション」⑦
マギー(2016年 家族映画)

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監督 ヘンリー・ホブソン

出演 アーノルド・シュワルツェネッガー/アビゲイル・プレスリン/ジョエリー・リチャードソン

 

シネマ365日 No.1928

シュワ、激シブ! 

特集「凍れる月のベストコレクション」

ンま。シュワちゃん、激シブだわ。ハラハラと涙をこぼすシーンなんか、胸に迫ったわ。いい役を選んだわね。自分で製作にも噛んでいるし。低予算だったから撮影を延長するわけには行かず、一人で繰り返しセリフを練習し万全の準備で臨んだ、とインタビューで答えていたけど、それにも増して段取りがよかったのは監督のヘンリー・ホブソンで「とにかく用意周到なんだ。みな一致団結してスムーズに進んだ」とシュワちゃんの機嫌のよかったこと。彼の娘役にして、タイトルロールのマギーにはアビゲイル・ブレスリンです。「アビゲイル」という名前、覚えていないかな。「リトル・ミス・サンシャイン」で10歳11カ月にしてアカデミー助演女優賞にノミネートされ、映画のステージで、ポルノ好きなおじいちゃんが教えてくれた、妖しげなダンスを大真面目に踊った女の子▼シュワちゃんの妻キャロライン(マギーの継母)にジョエリー・リチャードソン。父がトニー・リチャードソン監督、母がヴァネッサ・レッドグレイヴ、遡ればサー・レッドグレーヴ一族という名門で、ブロンドの長身は母親譲りです。という具合に、打てる手は全部打って製作に臨んだって感じで、小粒ながらきちっとしまりのある映画になっています。シュワちゃんが頬も額も深いシワを刻み、ヒゲは白く、喉はたるんで、アクションなしの朴訥な農夫をやる。妻を亡くし再婚して、子供は3人。先妻の子がマギーだ。父ウェイドはこの娘が可愛くてたまらない。時代は近未来のアメリカ。ゾンビ映画には違いないが、ゾンビの大群が押し寄せて銃撃戦になる、ゲテモノゾンビではない。ウィルスに感染したらゾンビ化し、凶暴になって血や肉を欲しがる、感染者は隔離され、収容所で処理されるのだ。マギーが感染した。自分がいれば家族に感染る。マギーは家出するがパパが連れ帰る。そしてどんなことがあってもこの子を手放さないと、警官が来ようと医者が来ようと、追いはらうのだ。でもそれによって家族は分裂する。妻は下二人の子を親戚に預け、夫と家に残ったが、狐を食い殺し、皮膚が黒色化し、感染の特徴である、異様に鋭敏な臭覚という兆候を見て、夫に隔離して欲しいと頼むが「ノー」。妻は去った▼ウェイドはこのままではいずれ、マギーは自分を襲撃することがわかっている。マギーにしても、いつまで正気を保てるかわからない。ウェイドは猟銃を手に毎夜、椅子で眠る。映画のトーンは一貫して青みがかった灰色だ。広い農地はウィルスの感染を防ぐため焼き払われ、赤い夕日が何もない土地に沈む。ウェイドの家は荒野の一軒家である。ヘンリー・ホブソンの作品はこれしか見ていませんが、ただならぬものを感じさせる監督です。主要な出演者は3人、ウィルスに感染した娘を手放すか、手放さないか、それだけの物語です。家族がいてよかったこと、一緒に暮らせて幸福だったことをマギーは言い残す。父はたとえ自分の身に危険が及んでも、娘を収容所などで死なせないと誓う▼取るべき手段は、父親がマギーを殺すか、マギーが自殺するか、どっちかしかない。遠からず娘は獣のような外観になる。父親は娘を膝に抱きやさしく肩を撫でる。娘は残る正気をかき集め、父親の手のひらの温かさを確かめる。シュワちゃんはアビゲイルをベタボメしましてね、彼女は撮影時18歳で、学校があったから仕事の時間は制限されていたのに、自分の出番が終わっても、他の俳優のシーンを勉強のために見ていた、しかもそうさせてくれと監督に頼んだのは、アビゲイルの母親で、「えらいお母さんだ」とこれまた激賞。いわゆる「シュワちゃん映画」とは一線を画してやる、そんな気合がほとばしっていました。シュワルツェネッガーという人、基本的に頭のいい人だと思うのよね。インタビューを聞いていても、書き上げた文章を読みくだすような完成度があって、「あの〜」とか「その〜」とか、まず挟まりません。なかなかこうはしゃべれないものよ。新しいシュワルツェネッガーの試みとしては、成功作と言っていい。

 

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