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特集「ベストコレクション」

2016年11月8日

特集「凍れる月のベストコレクション」⑧
これが私の人生設計(2016年 事実に基づく映画)

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監督 リッカルド・ミラーニ

出演 パオラ・コルテッレージ/ラウル・ボヴァ/ルネッタ・サビーノ

 

シネマ365日 No.1929

マイノリティへ応援歌 

特集「凍れる月のベストコレクション」

数々の国際賞を受賞、天才女性建築家と世評も高いセレーナ(パオラ・コルテッレージ)は、故郷ローマで腰を落ち着けることにした。でもそこは典型的な男社会。やっと最終面接にこぎつけたそこの会社は、免責事項に「妊娠」。「妊娠したら解雇ですか」と訊くセレーナに「当たり前だ」。バイクは盗まれる、求職はみな不採用、貯金は食い潰し、アルバイトでレストランのウェイトレスに。イケメンのオーナー、フランチェスコ(ラウル・ボヴァ)はセレーヌが気にいり、疲れたといえば靴を脱がし、靴下を取りゆっくり足をもみほぐす、セレーヌはうっとり、思わず「たまらんわ」。でもそこまで。彼はゲイなのだ。セレーヌはある日公共住宅のリフォームのコンペがあることを知り応募する。その住宅に行き居住者たちの実際の声を訊いた。長年住んでいる老婦人は、どの階もみな同じ造りだから迷う(そこは巨大団地である)、若い女性たちに「何があればもっと快適に暮らせる?」と訊くと「女同士で集まれるスペースね」▼セレーヌの設計は見事採用となった、が、「女の設計士なんか」と、男社会から締め出しを食っていた経験から、設計者は男性の上司である、自分は彼の助手であると偽って対応した。採用が決まったら契約と、そして具体的な詰めに入るから、上司本人に同席してほしいとなった。セレーヌは急遽の一策として、フランチェスコを上司に仕立て上げる。国際的に能力を認められた女性が、イタリアではこんな扱いなのか。日本だけが男社会ではないのだ。コンペの事業主の会社では社長秘書のミケーラ(ルネッタ・サビーノ)が実務一切を把握し、現場を仕切っている。が、彼女が30年やり続けてきたことは、社長が出社したらまずコーヒーを運ぶ、フロアの全員が社長の十年一日のごとき声かけにニッコリして答える。コンペ案契約の席でも、社長は実質何も知らず、質疑応答に答えるのはミケーラなのに、仕事の成功はみな社長が持っていく、そんな構図がすぐセレーヌにはわかった▼フランチェスコもにわか上司を無事通過、採用が決まると事業主の社長が設計を一部手直しすると言いだした。セレーヌが最も力を入れた女性共有スペース「緑の廊下」をバッサリ削除、テナントにするというのだ。「あなたはバカよ」ついにセレーヌは怒鳴る。「あの建物で住人たちが何に困り、どうリフォームしてほしいかひとつも知らないで勝手なこと言わないで。設計者はわたしよ。ミケーラ、そこまで献身的に尽くすことないわ。女子社員が妊娠したっていいじゃないの」。女性のサポートの上にあぐらをかき、美味しいところだけ持っていく男たちにガツンを食らわせたアッパーカット。ある女子社員は隠していた大きなお腹を突き出し、若く見せるためカツラをかぶっていた、中年の男性社員はカツラをむしり取る。つわりに苦しんでいた若い女性は涙ぐむ。ミケーラはコーヒーを運ぶのをやめた。セレーナの採用を無効にするという社長に「やってみれば。あなたの不正をみな暴いてやるわ」▼出来すぎかもしれないが痛快です。ゲイであり、女性であるという社会のマイノリティが冷や飯を食う現場を、怒りもせず、恨みもせず、甘やかしもせず、大げさにもせず、言うべきことをいう、なかなかの手練の手管であります。ゲイのフランチェスコはパートナーの男性と無事一緒になり、セレーヌは自分が本当の設計者だと見抜いた男性と言い関係に。ミケーラはセレーヌと友情を深め、きょうはセレーヌの家で祝賀パーティー、父母に叔母、フランチェスコにパートナー、ミケーラも来て、テーブルにはうまいワインと料理が並ぶ。ゲイ・カップルと仕事女子、いまは社会のマイノリティかもしれないけど、人はみな、幸せになっていい、そんな応援歌が聞こえて来そうでした。

 

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