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特集「ベストコレクション」

2016年11月10日

特集「凍れる月のベストコレクション」⑩
ジャッジ|裁かれる判事(2015年 家族映画)

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監督 デヴィッド・ドブキン

出演 ロバート・ダウニー・Jr/ロバート・デュバル/ヴェラ・ファーミガ/ビリー・ボブ・ソーントン

 

シネマ365日 No.1931

新しい家族の関係 

特集「凍れる月のベストコレクション」

二人のロバートと脇に絡むのがヴェラ・ファーミガ、ビリー・ボブ・ソーントンというあたりで、ほぼ映画の色合いがわかりそうです。人は希望と後悔を繰り返しながら生きていくのね。金持ちの依頼人を無罪にして、ガッポリ弁護料を巻き上げるためなら、脅迫、証拠隠滅、なんでもやる、ほぼ悪徳弁護士スレスレのハンク(ロバート・ダウニー・Jr)は、父親と折り合いが悪く、何年も故郷インディアナ州の田舎町に帰っていない。母親が交通事故で死んだ知らせを受け、久しぶりに帰郷する。父ジョセフ(ロバート・デュパル)は、正義が歩いているような厳格な判事。42年間を裁判長として職務に尽くしてきた。家は男兄弟ばかり3人。長男グレンに末弟のデイル。グレンは野球に将来を託していたが、次男ハンクの品行不良、少年院行きでスカウトから外された。末っ子は写真マニアだが、知的障害がある▼母の葬儀を終えたハンクに、父親がひき逃げ・殺人容疑で逮捕された連絡が入る。自分を一つも可愛がらなかった父だが、ジュリストとしての責任と正義への愛は疑ったことがない。ハンクは父の弁護人となる。検事はハンクをやっつけようと手ぐすね引いているディッカム(ビリー・ボブ・ソーントン)だ。芸達者ふたりの、法廷でのやり合いは見応えがある。裁判を通じて父親と息子は、気持ちを通わせていく。厳しい判決で知られた父親が、16歳の少女を殺そうとした男に、たった30日の拘禁で済ませたのはなぜかとハンクが訊くと、「お前とよく似ていた。反抗的でひとつもいうことを聞かなかった。つい、お前のことを考えた」ハンクは涙ぐむ。父が末期がんだとわかった。医師は「手術はできない」。結腸がんである判事は、症状が進み、脱糞したり、うわ言を言ったりする、薬の副作用で、記憶障害も起こるようになった。22年間自分の元で勤務している廷吏の名前が思い出せないのだ。父はひき逃げしたのか。故意に。判事はしかし30日の拘禁という軽い刑を後悔していた。そのマークという男は根っからのクズだったのだ。その償いのために、判事は事件当日の記憶がなかったにもかかわらず、ひき逃げは故意であったと認め自ら縛につく▼田舎町の名士だった判事の晩節を、汚すことにもなる事件だった。有罪か、無罪か、陪審員の判決は「殺人」には「無罪」、故意の障害には「有罪」4年間の服役が課せられた。刑務所行きである。ハンクは裏から手を回し、恩赦で数ヶ月ののち釈放。父帰る。お前が最高だと思う弁護士は誰だという父の質問に、先輩弁護士の名をハンクはあげる。父親と釣りに出たボートで、父は「お前こそ最高の弁護士だよ。そう思っていた」と打ち明ける。ハンクが嬉しそうに、声をかけると返事がない、父親は眠るように息をひきとっていた。ハンクは父の葬儀を終えた。元カノのサム(ヴェラ・ファーミガ)の娘は自分の子ではないかと思ったが、意外、兄グレンとの子だった。肩透かしを食ったようなハンクに、サムは「あなたを愛していたし今も愛している、でもあまりの毒舌に、自分が否定されるばかりだと思った」といった。ハンクは離婚調停中だ。うまくいきそうなサムとハンクと、町に残り弁護士としてやっていくハンクの将来を暗示してエンド。謎を解明する法廷劇というより、男親と息子の絆を取り戻す家族劇ですね。ロバート・デュパルが曲がったことの大嫌いな一徹な判事が、ふとかけた温情が仇になった後悔とか、不良あがりのハンクが猛勉して法科大学に入り、しかも首席で卒業したのに「パパは褒めてくれなかった」とか、親父は長男も三男もすごい才能があるとか、肉親の感情をぶつけ合い、吐露しながら新しい関係をつくっていく、他人から見ると(しょうもない)ことでも、肉親同士のことになると摑み合いでもする、そんな地べたの感情を、練りこんで描いてあったのがよかったです。

 

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