女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集「ベストコレクション」

2016年11月11日

特集「凍れる月のベストコレクション」⑪
ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります(2016年 家族映画)

Pocket
LINEで送る

監督 リチャード・ロンクレイン

出演 ダイアン・キートン/モーガン・フリーマン/シンシア・ニクソン

 

シネマ365日 No.1932

部屋からの眺め 

特集「凍れる月のベストコレクション」

「わたしたちは何を求めているの? いい人生なのに。場所はどこでもいい。ブルックリンでもモスクワでも。あなたと二人でさえおれるなら」。家探しに疲れはて、ブルックリンのわが家にもどったルース(ダイアン・キートン)が、夫のアレックス(モーガン・フリーマン)にそういいます。結婚して40年。住み慣れた家はブルックリンのド真中。引っ越してきたときは田舎だったが、いつの間にかニューヨーカーたちが集う人気の町。買い物は便利で、ご近所との付き合いも良好だ。ただ一つ5階に住む夫婦にとってエレベーターのないのが苦になってきた。階段の上り下りは、特にアレックスと、老犬ドロシーに応える。ルースはエレベーターのある住まいに引っ越そうと、姪の不動産屋であるリリー(シンシア・ポートマン)に仲介を頼んだ▼主要人物はこれだけ、もっというならルースとアレックスの二人劇だ。40年連れ添った夫婦の味わい、年々少なくなっていく残された時間への慈しみ、一緒に暮らすこと、何を大切にするか、ふたりにしかわからない、ふたりでしか決められないそんなことが、押し付けがましくもなく、説教がましくもなく、軽すぎもせず、重すぎもせず、スマートに演じられているのは、やはり主演ふたりの力量だろう。アレックスは画家だ。画廊主は「君の絵は売れなくなってきた。若い画家がいくらでも出てきている」から、画風を変えてみたらどうかと提案する。ルースは芸術家を相手にするときの心得がなっていないと、画廊主に教訓を垂れる。今さら画風がどうのこうのと言われる筋合いはない、誰のために描けというのだ。自分のために描けばたくさんではないか。アレックスは「売れない画家」をジョークにする。ルースは夫の絵が大好きだ、どんな画家も真似できないと思っている。これでエレベーターのある家に引っ越せたら万事、順風満帆、文句はないはずだった▼リリーはやり手の不動産屋だ。叔母夫婦の依頼を受け、条件に適った部屋さがしに奔走する。アレックスたちの部屋の内覧会には何組かの客が来た。100万ドルで売れるとリリーは強気だし、ルースは早くも引っ越す部屋を物色、気にいった物件を見つけた。しかもマンハッタンである。手の出ない額じゃない、とルースは契約することにする。妻が望むなら、とアレックスも了解する。しかし手附金を今日3時までに小切手で、という強引な催促にアレックスは嫌気がさす。もともと彼は家を売りたくないのだ。日当たりのいい、大きな窓のある、今やブルックリンの一等地になったレトロでシックな家。部屋の隅々にも家具にも、夫婦の歴史が刻み込まれている。黒人と白人の結婚が30の州で認められず、20の州で嫌悪されているときにふたりは結婚した。ルースの実家の反対も、子供ができないとわかったときの悲しみも乗り越えた。折しも家探しに追われていたその日、トラック事故で橋が封鎖され、テロ騒ぎが持ち上がった。引き出された容疑者は路上にひざまずいていた▼まとまりそうだった物件は話が食い違って暗礁に乗り上げた。リリーは「わたしは9.11にでも家を売った女よ」と腕まくりして仲介の労をとるが、夫婦は「別にあせらなくても、自分たちの家は自分たちで探そう」という気になってくる。アレックスが言った。「ひざまずく若者を見たら、僕らもから騒ぎをしているだけではないかと思った。僕らはなぜ引っ越す?」老犬ドロシーの椎間板ヘルニアの手術は無事終了し、ドロシーは歩けるようになった。アレックスは思う。いずれあの家は売らなくてはならないだろう。永遠には住めない。でもどこの家にいってもいつかはそうなるだろう。今はここでいいさ…階段は辛いが、今すぐ歩けなくなるわけではない。いつその日が来るかわからないが未来を恐れるより、充実した現在を多とすればいいのではないか。アレックスとルースは売るのを止めた。ブルックリンの歩き慣れた通りに、ドロシーを連れてアレックスは散歩に出た▼もう一人、存在感を放っているのがこの人。リリーのシンシア・ニクソンです。彼女は「セックス&ザ・シティ」で弁護士ミランダを演じました。ニューヨーク州が同性婚を認めるまで待つと、婚約者と8年の同棲をへて、2012年結婚しました。

 

Pocket
LINEで送る