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特集「ベストコレクション」

2016年11月15日

特集「凍れる月のベストコレクション」⑮
小間使いの日記(下)(2015年 日本未公開)

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監督 ブノワ・ジャコ

出演 レア・セドゥ

 

シネマ365日 No.1936

不機嫌なレア 

森の中で少女の惨殺死体が発見された。12歳のローズだ。ジャンヌ・モローの「小間使い」では、この事件が大事な役割を果たすのだが、本作では不問である。ただ少女の死をめぐって、近所の小間使いたちの休日の懇親会みたいな席で、お腹を割かれていた、死後1週間らしいとか、犯人はランレール(セラフィーヌの雇用主)にちがいないとか、面白半分の噂話が行き交うにすぎない。あるときセラフィーヌは同僚のマリアンヌが部屋から出てこないのでノックする。妊娠したかもしれないとマリアンヌは泣いている。相手はランレールだ。彼は妻の留守を狙って召使いに手を出す。マリアンヌがタバコ店で小間使いをしていてクビになったときも理由は妊娠だった。「髪はブロンドで、ヒゲを短く手いれした若い男」だった。「まだいいわ」とセラフィーヌ。「わたしの相手は毛深い年寄りで体臭もち。ミサの後処女を奪われ代償はオレンジ1個。でも怒っていない。子供はどうしたの」「…」セラフィーヌはマリアンヌに尋ねる。「旦那さまはやさしいの?」「もちろんよ、かわいい人よ」「奥さまにばれたら?」「仕方のないことよ。追い出されるわ」なんと弱い立場なのだ。セラフィーヌは言葉もなく部屋を出る▼ジョセフが言った。「故郷のシェルブールにいい店がある。カフェだ。軍人と船乗りが酒を飲んでセックスをする、陽気な町だ。カフェをやれば繁盛する。ただこの商売には女が必要だ。美しく、気さくな女。俺はここをやめる」「あなたのいないここに、わたしにおれと?」「一緒にやらないか。結婚するのさ」「つまり、店を持って、わたしが体を売ってあなたを助けるのね」「そんなふうに考えるな。カフェで明るく暮らすことを想像してみろ」。ジョセフは女主人に惜しまれながらやめた。セラフィーヌは「完璧な小間使いになる」と誓って、女主人にやさしく、嫌な顔一つせず、明るく接した。女主人も打ち解け、セラフィーヌにやさしくなった。ジョセフからの知らせを受けて、セラフィーヌは辞意を伝える。女主人は残念がり、給料を上げる、部屋も広い部屋にすると引き止めた。迎えに来たジョセフの馬車に乗り、屋敷を去るときのセリフが「ジョセフの支配に幸せを感じた」云々だ▼この前段に、別の回想シーンがある。セラフィーヌが紹介所で雇用を断るのだ。いかにも見高な女性で、雇用にうるさい条件がいくつもある。最初から彼女が気にくわないセラフィーヌは、難癖をつけさっさと断ってオフィスを出て行く。その様子を見ていた婦人が追いかけてきて、うちで勤めないかと声をかけた。「うちは上客ばかりよ。政治家に大統領だってくるわよ。あなたが来たらすぐ売れっ子よ」「経験ないわ」「わたしの目は節穴じゃないのよ」「派手な下着を持っていないの」「心配いらない。うちは自然の美でいくの。ストッキング一枚でいいわ」「でしょうね」「3か月契約にサインしてくれたら、必要なものはこちらで揃えるわよ。考えてみて」婦人はそういって連絡先の名刺を置いていった。セラフィーヌはテーブルに残り、その連絡先に見入る。もちろん娼館だ。じっと見つめるセラフィーヌの目から、ほろほろと涙がこぼれ落ちた▼思うに、数々の経験を経てきたセラフィーヌは、疲れ果て、安住の家と男が必要となり、シェルブール行きに希望と未来を見出したのだろうか。そこはカフェとはいうものの、ジョセフが仕切る売春宿ではないか。妻とはつまり、第一線で働く立場であるのだ。どういう理屈で犯罪すらともにしていいと思うほどの「幸せ」が成り立つのだろう。いや、あの時代の女性にとって仕事といえば身を売るか小間使いか、修道院入りくらいしかない、セラフィーヌの判断はおかしくも間違ってもいない、確かにそうだ。ということは、ぶっちゃけていうならこの映画は、女はこういう生き方しかできなかった時代なのだ、仕方ないだろ、嘆くなり怒るなり、好きにしてくれとでも言いたげではないか。レアちゃんが、それでなくとも仏頂面に輪をかけて、終始不機嫌な顔でいるのがもっともに思える。

 

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