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シネマ365日

2016年11月17日

特集「アクション愛」①
ミッション:インポッシブル(1996年 アクション映画)

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監督 ブライアン・デ・パルマ

出演 トム・クルーズ/ジョン・ヴォイト/エマニュエル・ベアール

 

シネマ365日 No.1938

トムの勝利

actionLove

ミッション・インポッシブルの成功と、それに続くシリーズを通しで見て、改めてこのシリーズの面白さをこしらえているのは、トム・クルーズの、がむしゃらなまでの「アクション愛」に違いない、と思う。彼は本作で初めて製作に携わり映画の一から十まで、すべてに責任を取る立場になりました。トムは19歳でデビューし、現在まで少なくとも40本以上の映画に出演していますが、一度も監督に色気を示していません。そのかわりプロデュースには並々ならぬ関心と手腕を示してきたことを考えると、ビジネスとして成り立つ映画を作ることが、彼の仕事人生の極北の目標に違いない。採算の取れる映画というのは、実にわかりやすい価値の指標です。では何の技術を以ってその指標を実現するか。トムが選んだ必殺得意技が「アクション」だったと思えるのです▼彼は大げさでなく、アクションに映画人生を賭けている。体調管理の完璧な安定を期すため、過酷な減量も増量もしない。スタントは可能な限り自分でやる。アイデアも出す。トムのセルフ・プロデュースの卓抜さをあれこれ数えたところで、トム・クルーズという俳優の、サクセスのキモがいえたことにはならないでしょうし、只ただ、感心して映画を楽しめばいいのかもしれません。話は元に戻るようですが、製作業と俳優業の間に、監督業を飛ばしているのは、トムが自分の限界をはっきり認知しているからではないでしょうか。彼はアクション以外のものにもはや未練を持たない、そんなふうにすら思えます。過去に演じた政治家は、ひとつもやり手に見えなかったし、魅力的でもなかった、暗殺者の映画は暗殺自体が失敗だった。当たり役・はまり役に固定されることを嫌う俳優は多いですが、問題は当たり役・はまり役しかできないことであって、一流の俳優が一つや二つ、当たり役もはまり役も持っているのは当たり前ではないですか。誰も彼も自分というフレームの中で、限界の中で仕事をする。トムは一般に、あまりいい意味で使われることのない「限界」という意味を、最強の武器にした数少ない達人です。この実感は、本作から5作続けて「ミッション」シリーズを取り上げますが、5作目の「ローグ・ネイション」まで、たぶん変わらないだろうと思えます。プロデュース第一作にトムは万全の態勢をとったに違いありません。ブライアン・デ・パルマの起用、脇を固める豪華な俳優陣、スクリーンを圧する16トンの水の放水。セリフはいらん、言葉もいらん、度肝を抜く迫力で、これまでなかったアクション・シーンを作ることを必死で考えた。彼が編み出したのは、湯水のごとく金を使う金襴緞子の超歴史大作でもスペクタクルでもなく、特撮であっけにとらせるSFでもない、自分の体ひとつで打ってでるアクションだったことに、わたし、トム・クルーズのファンの一人としてしびれるのです▼本作の粗筋を書く退屈さは勘弁してもらいますが、エマニエル・ベアールの起用は誰の案だったのでしょう。たぶん、ヨーロッパ系の好きな監督、デ・パルマあたりでしょう。ジャン・レノがチョイ役で出ているのも贅沢だ。贅沢といえば、ヴァネッサ・レッドグレイヴが、裏社会のボスだなんて。「007」で、ジョディ・デンチが「MI6」の「M」になったのは、ヴァネッサという先例があったからか(笑)。どこかで見た顔だと思うと、ま、クリスティン・スコット・トーマスが、ニコリともしない辛気くさい顔で、イーサン・ハント(トム・クルーズ)チームのメンバーとなってあっさり殺される。イーサン・チームは映画が始まって早々全滅します。文字通りトムの一人舞台となります。チームの司令塔がジョン・ヴォイト。でもこれは失敗ね。彼が現れたらどう考えても悪役だもの、先が読めてしまったわ。ミッション。シリーズで今回から最新第5作まで、通しでイーサンとチームを組むルーサーがハッカーの名手、ヴィング・レイムス。本シリーズのよさのひとつにチームワークが挙げられます。裏切りと謀略が当たり前の世界で絶対にイーサンは裏切らない。トムばかりがやたら目立つ仕組みになっているかもしれないけど、ヒーローもの、ヒロインもので、それがけしからんと言い出したら成り立つものの成り立たなくなる。だいいち、これスパイ映画なのだけど、こんなド派手なスパイなんかいませんよ。基本、目立たせるために作っているのだから、ワンマンショー以外の何物でもないのよ。イーサン・ハントというパーソナリティに出会った、あるいはこしらえあげたトムの勝利よ。

 

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