女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2016年12月2日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力4」②
エクスポーズ 暗闇の迷宮(2016年 サスペンス映画)(下)

Pocket
LINEで送る

監督 デクラン・デイル

出演 キアヌ・リーブス/アナ・デ・アルマス/ミラ・ソルビノ

 

シネマ365日 No.1953

男の寂廖

美しい虚無-妄想映画の魅力4

オープニングは秀逸だ。義弟が送っていくというのを断ったイサベル(アナ・デ・アルマス)が、ディスコ・バーを出て一人で地下鉄に向かう。階段を降りた通路には誰もいない。イサベルは怖がるふうもなく、普通の速度で歩いていく。目の前に男が現れる。黒いコートを着た白い顔に白い頭の男。一目で死に神だとわかる。彼はイサベルの目前を横切り、レールの上で空中に浮遊するのだ。これは虚無か現実か。イサベルには時々白い顔をした男や女が見えるようになる。イザベラは保育所の先生をしている。子供たちが帰った後、エリサが教室にひとりで泣いていた。訳を聞くとおもちゃの馬がいなくなったという。イサベルはある日玩具屋でエリサの馬と同じ馬を見つけ、買って帰った。エリサは馬にイサベルという名前をつけた。イサベルはエリサに「子供の頃、エリサという名前が好きだったのよ」と話しかける…▼ニューヨーク市警ではスコッティ(キアヌ・リーブス)の相棒の刑事ジョーイが刺殺された。ジョーイは評判の悪い警官で、犯人逮捕によって彼の悪事が露見してはまずいと、上層部は捜査を打ち切りたがった。ジョーイの妻ジャニンは泣き叫ぶ。ジョーイは悪徳警官だったかもしれないが、妻に先立たれたスコッティを家に迎え、励ましてきたのがジョーイ夫婦だった。スコッティの息子は姉の家に預けてある。妻の次は相棒を失くし、気落ちしているスコッティを気遣って、上司は配転をいうが彼は断る。本作の粗筋は二本立てだ。一本は刑事殺し。もう一本はイサベルの別世界だ。犯罪者を追及するリアルな世界とは異なり、謎めいた物語がイサベルの身の上で展開されていた。彼女はドミニカからの移民。夫はイラクに出征中。帰米が決まった直後戦死する。イサベラの周囲には死が立ち込めている。イサベラは地下鉄で宙に浮く白い男の話を家でして、正気をからかわれる。その後彼女は妊娠に気づく。「神様が下さった子よ」と喜ぶイザベラに夫の家族は激怒。家を追い出され実家に戻る▼ジョーイ殺しの捜査は行き詰まりを見せていた。上司はスコッティにいう。「君の相棒は悪に染まり、くたばったが、せめて遺族に年金くらいは残してやりたい。しかし下手に動けば遺族年金までフイだ。これ以上犯人逮捕に動く気はない」。スコッティはジョーイが殺される直前まで撮っていたカメラに写っている人物たちの中で、美少女の正体がわからなかった。それがイサベルだった。ジョーイはなぜこんな写真を撮り続けたのか。やがて彼の正体が露見した。上司はスコッティを呼んでいった。「奴はレイプ犯だった。被害者から届けが出た。捜査終了だ」。両親の元に戻ったイサベルは、家に帰りたがらないエリサが、虐待を受けていると捉え、自宅に連れて帰り、自分の部屋に匿った。イサベラの幻想が蘇る。彼女は地下鉄の誰もいない通路を歩いていた。後ろから襲われ強姦された。犯人はジョーイだ。イサベラは行為を終えて隙を見せた男を突き飛ばし、ホームに転げ落とした。白い死に神が見ていた。これでいいか、とイサベラが目で聞くと男は微笑して頷き、間もなく列車がホームに滑りこんだ▼ここはイサベラの実家。部屋から父親とエリサが出てきたのを見た。父はイサベラを見て「すまん」という。イサベラはエリサを取り戻し、父親を刺殺した。シーン転換。イサベラは公園のベンチにエリサといる。エリサに何か食べさせ「おいしい?」と訊く。エリサが答え、イサベルはまた話しける。カメラが引き、再びふたりを捉える。イサベルはひとりだ。ベンチにはイサベルのほか誰もいない。彼女は幻に話しかけているのだ。性的虐待を受けていたのはイサベルだった。過去のトラウマから彼女はエリサという少女を幻想の中でこしらえ、彼女を守ろうとする。強姦の結果の妊娠も、彼女には強姦された記憶は残っていない。空中に姿を現した「神」の導きで妊娠したのだと信じている。婚家から蹴り、父親の虐待が再び始まろうとしたとき、イサベルはエリサを守ろうとして父親を殺した。真相が分かったスコッティは(彼女に罪が問えるのか)…長い間、狂気の世界をさまよい、妄想の中で生きていたイサベラを痛ましく見詰める。細かいところを突っ込んでいけば、例えばジョーイが写真に撮っていた男たちが次々殺されていく連続殺人の因果関係とか、ぼかされたような箇所はあるのですが、全体のホラー感、特にイサベラと少女のくくりのよさで一票。キアヌは、子供に「パパ、会いたいよ」と言われ、「パパも会いたいよ」と答える。妻に去られ恋愛にも目下心は動かず、人生に置き去りにされたような男の寂蒔と哀感をにじませ好演でした。

 

Pocket
LINEで送る