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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2016年12月3日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力4」③
ザ・フォッグ(1980年 ホラー映画)

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監督 ジョン・カーペンター

出演 ジェイミー・リー・カーティス/ジャネット・リー/エイドリアン・バーボー

 

シネマ365日 No.1954

亡霊殺人事件 

美しい虚無-妄想映画の魅力4

冒頭エドガー・アラン・ポーの詩「夢のなかの夢」が引用されます。「わたしたちが見るものや/見えると思うものは/みな夢のなかの夢なのだろうか」…ジョン・カーペンターの描く妄想と虚無と亡霊の世界は、夜の海辺に焚き火を囲んだ子供たちを相手に語る土地の古老の言い伝えから始まります。100年前の4月21日、真夜中に起こった遭難事件がそれです。「スパイヴィー・ポイント周辺の海で、小さな快速船が陸に引き寄せられた。夜の暗闇に霧が生じたとき、明かりが見えたのだ。キャンプファイアーだった。その明かりに引き寄せられエリザベス・デーン号は沈んだ。霧がアントニオ湾に戻ってきたら、死んだ男たちが、彼らを死に追いやったキャンプファイアーの火を探すと伝えられてきた。さあ、12時だ。4月21日だぞ」▼その夜は奇怪な出来事が相次ぎます。ガソリンスタンドのガソリンが流れ出し、車が宙吊りになり、駐車場の車の全部のヘッドライトがつき、クランクションが鳴り出した。教会の壁から見つかった古い日記。海上ではシーグラス号が光る霧の中から巨大な帆船を目撃した直後に消息を絶った。翌朝、港に戻らない夫を心配しつつ、町生誕100周年のイベント会場に来たキャシー議長(ジャネット・リー)は、マローン神父から町の創設者6人が犯した殺人事件の真相を知る。それはハンセン病患者を隔離するための資金のため、デーン号の乗組員6人を殺したことが日記に書かれていた。盗んだ金はマローン神父の曽祖父が管理していたことを知った神父は、事実の公表とイベントの中止を提案するが、当日のドタキャンは無理、イベントを強行することになった。シーグラス号の乗組員の遺体が発見される。デーン号の名前の残る木片も流れてきた。灯台の一室で、ローカルタジオ局を運営するスティーヴィー(エイドリアン・バーボー)は、海上に巨大な光る霧の塊を見た▼霧は急速に町を覆い、電話は不通、発電機は故障、やがて霧の中から数人の黒い人影が現れ、鉄のかぎ爪で手当たりしだい町の人を惨殺し始めた。つまり、100年前に金目当てで殺された乗組員たちの復讐なのですが、もちろん彼らは生きているはずがなく、亡霊なのです、亡霊。でも呪文も何もなく、例えば墓を暴かれたショックでとか、雷が落ちて岩が裂けたからとか、こういう場合にありがちな、もっともな理由抜きで、いきなりおじいちゃんが「さあ100年目の真夜中だ」と言ったら、亡霊たちが霧に乗じて陸に上がってきたのよ。凶器は鉄のかぎ爪で首をざっくり。彼らが近づくとドアの隙間から、煙のように霧が入ってくるのね。馬鹿力といったらありゃしない。ガンガン爪で叩いてドアに裂け目を入れ、バリバリ引き裂いて侵入する、100年も眠っていた割にはパワー充分、それにしても事件の犯人たちはとっくに死んでいるのに、その子孫や罪のない町の人たちを殺すのだから、襲撃されるほうはひどい迷惑だわ▼でも子孫の一人である神父さんには、だんだん経緯がわかってきて、彼らは100年前に盗まれた自分たちの金を奪い返そうとしているのね。そういえば古い十字架があった、あれにちがいないと神父さんは重そうな十字架を担いでくる、これが金の十字架「アトミック・クロス」で、お返しするからお引き取りくださいと神父さんが頼むと、亡霊はしっかり貰い受けるのよ、地獄か天国か知らないけど、一体どこに運ぶのだろう。それで満足したかというと、そうじゃないの、神父さんまで殺してしまうの。なんなの、こいつら、欲の深い上に殺人狂じゃない、海から海藻つけて陸をフラフラしている、藻屑みたいな亡霊の皆さん、どっか消えてくれ〜、本当ならそういいたいわ。ところが、ここがカーペンター監督の腕の見せ所で、叙情的な旋律が響き、昼間の光景は美しい海岸線にロマンティックな灯台、波頭の彼方には茫々たる水平線、ポーでなくとも夢のまた夢かと思いたくなる、遥かなる海と空間が、地球45億年の秘密を波の揺籃の中に秘めている、亡霊の一人や二人、現れても不思議はない、とまあ、そんな気にさせちゃうわけね。同じ「ハロウィーン」に比べたら、ずっと静的な映画ですけど、それなりに確かです。ジャネット・リーとジェイミー・リー・カーティスが親子共演しています。

 

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