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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2016年12月10日

特集「美しい虚無=妄想映画の魅力4」⑩
心霊ドクターと消された記憶(2016年 ミステリー映画)

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監督 マイケル・ペトローニ

出演 エイドリアン・ブロディ/サム・ニール

シネマ365日 No.1961

よかったわ。 

美しい虚無=妄想映画の魅力4

一言でいうと、殺された霊が、精神科医ピーターにサインを送り、真相を究明させる映画です。ピーターは娘を自動車事故で亡くしてからすっかり気落ちし、妻ともどもボロボロになってしまった。それでもなんとか立ち直ろうと、患者に対応しながら、自分も同業の医師ダンカン(サム・ニール)のセラピーを受けている。ダンカンは「目を放した隙にイヴィー(娘)が事故に? 君は何を見ていたのだね」と訊く。何だったろう。ピーターは思い出せない。こういう役ってエイドリアン・ブロディにピッタリですね。マイナス・オーラを一身に集めた憂鬱な顔、ひょろ長い体つき、もぞもぞした喋り方。霊が取り付くのに選んだ適任者としては正解ね。ジェイソン・ステイサムなら、振り落とされていたわね▼ある日エリザベス・ヴァレンタインという、黒いフードの少女が待合室に現れ、言葉を発せず「87712」と数字だけメモした紙片を残して消えた。そして驚くべきことに、自分の患者の全員が23年前に死んでいるのだ。自分は死者と話していたことになる、そして患者はみなあなたの紹介だったと、ピーターはセラピストに問い詰めた。ダンカンは言った「では、わたしは何者なのだ」…。メモの数氏はピーターの故郷に関係があった。ピーターは何年ぶりかでフォルクス・クリークの実家に帰る。父親が温かく迎えてくれ、少年時代の自分の部屋を使う。子供の頃のおもちゃ箱を開けると、新聞の切り抜きがあった。日付は1987年7月12日、列車事故があり46人が死亡している。ピーターは親友バリーに当時のことを聞きだそうとしたが、彼は「事故だったのだ」というばかりだ。夜になり事故現場の線路に立つと、何かに導かれるように記憶が鮮明になった。あの夜、ピーターとバリーは自転車を線路上に放置し、「覗き」をしに行ったのだ。その自転車のため列車は転覆、大勢の死者が出た▼良心の呵責に耐え切れず、ピーターは警察を訪れ女性巡査部長、ベニングに事実を打ち明けた。なぜ今になって、という質問に「けじめをつけたかった」とピーターはいう。ベニングは心を動かされ、すでに解決済みの事件であり、警察はこれ以上対応しないと、ピーターに引き取るように言う。彼女は列車事故で死んだエリカの娘だった。けじめをつけたことで落ち着いたピーターは、新聞を燃やそうとした。そこへ悪鬼の形相でエリザベスと、ダンカンが現れた。どっこい、まだ事件は終わっていませんぞ。「自転車の放置くらいで列車が転覆すると思うかね?」とダンカン。「我々は君に取り憑いた。君は真実を告白してけじめをつけたつもりだ。だが人間は受け入れがたい記憶は忘れ去ろうとするか、それが無理なら違う記憶に捏造する。君の娘の死をほぼ覚えていないだろう。だが君の無意識は覚えている、あの日、君が見ていたものは、君が思い出したくないものだった…」。ピーターは見ていたものはおもちゃ屋の、走ってくる汽車に踏み切りが上がったり、降りたりする列車セットだった▼ベニングは古い資料を調べ直していた。事故の現場にパトカーで、一番先に駆けつけたのはピーターの父だった。なぜ。あの日、現場に通じる橋は渡れなかったはず…。バリーは線路切り替えの踏み切り小屋で、首を吊って自殺した。あの夜見たものは何だった。ピーターが封印していた記憶がよみがえった。見たくなかったもの、知りたくなかったことが。踏み切り小屋にいた人物は二人だった。少女はエリザベスで、男は父だった。全てがさらけ出された。父親は少女をパトカーに連れ込み、踏み切り小屋で陵辱していた。行為のときに誤って線路のポイント切り替えレバーを倒した。列車が脱線した。父親は殺したエリザベスの遺体を転覆した列車の席に移し、事故の犠牲者として処理した▼少女暴行が原因で引き起こされた事故、それによって死んだ47人は「無念の死」です。たぶん霊界会議を開き、犯人の息子に取り憑き真相を暴かせようと意見一致したわけね。ピーターにすれば残酷な結果だったけど、殺されたほうはもっと残酷だったのだから、痛み分けね。小刻みに、テンポよく進む筋運びに無駄がないし、そんな、バカバカしい、としらけないのは、やっぱりブロディの深刻顔のおかげです。

 

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