女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集「ザ・クラシックス」

2016年12月16日

特集「ザ・クラシックス5」④
警部(1978年 アクション映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ジョルジュ・ロートネル

出演 ジャン=ポール・ベルモンド/マリー・ラフォレ

シネマ365日 No.1967

マリー・ラフォレ

Classic5

正しくは「ジャン=ポール・ベルモンドの警部」。ベルモンド全盛期のパワーが炸裂している痛快作、ということもありますが、本作を選んだのはもう一つ、マリー・ラフォレの出演です。「太陽がいっぱい」のヒロイン、マルジュが日本でよく知られていますが、実は彼女、ジャン=ポール・ベルモンドとの共演が多く、初期の「男を追って」や本作など、7本くらい一緒に撮っていた。「太陽」のデビューが21歳、本作は40歳のときです。ベルモンドがカジノに現れる場面で、ルーレットの前にいる客のひとりがマリー。若いときから、年に似合わぬアダルティな雰囲気があったのですが、そのままいい中年になっています。全然上手じゃないのに、彼女が左利きのギターなんか爪弾くと、妙に聞かせてしまう得な人でした▼ベルモンドが白いクラシックの、二座のスポーツカーを、革ジャン・革ブーツでぶっ飛ばし、原題通り「刑事か無法者か」どっちかわからん、正体不明の男として登場します。場所は南フランスのニース。モーテルで地元警察の警部が娼婦と一緒のところを殺された。ベルモンドは警部の未亡人の家に乗り付ける、それも車ごと窓をぶち破って侵入という荒っぽいやり方で。彼はセルッティと名乗り、カナダの刑務所から出所してきたばかりであり、殺されたのは妹だと自己紹介して金を請求する。セルッティは本名ボロウィッツ。パリ警察で「洗濯屋」と異名を取る、警察内部の捜査専門の警部だ。警部と昵懇の仲になるマリーは、エドモンド・ロスタンという小説家の役。「作家」だと彼女が言うのを聞いても、警部は「俺はマンガ以外読まない」と、エラソーにおバカを丸出しにする。彼は暗黒街の黒幕同士を一騎打ちさせ、どっちも潰してしまおうと目論んでいるのだ。つまりフレンチ「用心棒」である▼エドモンドの風雅な屋敷には時々、旦那がやってくる。彼は元大臣という大物政治家であるが、どこか影が薄い。エドモンドはボロウィッツとすっかりウマが合い、彼の娘が押しかけてきても嫌な顔ひとつしないが、パパっ子の娘は面白くない。いつもの通り、ベルモンドのパーソナリティが陽気きわまりなく、「せっかくロンドンに留学させたのに、なんで帰ってくるのだ」「パパに会いたくなったの」といわれるとそれだけでニコニコ。私生活でもベルモンドは子煩悩だった。この娘が誘拐され、逮捕した犯人と引き換えに返すという。筋書きとしてはかなり大雑把だが、(小さなことは気にしない)と思わせてくれるのは、それぞれの役者が目一杯、気まま・わがままに個性を競っている、そう見える元気が溢れているからだろう▼マリー・ラフォレにしても、こういっちゃナンだが、重きのある役でも中心的な役でも、連続殺人犯でもなく、実際には小説も発表しているが、劇中どう見ても本など書いたこともない小説家にしか見えない。おまけにパパを取られたと思っている娘に「ババア」なんて呼ばれる。しかし監督と俳優の相性がいいというか、息があうというか、シャンシャン進むプロットの歯切れがよくて退屈しない。監督のジョルジュ・ロートネルは今年(2016)90歳。フランス映画の歴史を記す監督の一人で、彼のお気に入りの女優にミレーユ・ダルクがいる。「女王陛下のダイナマイト」「太陽のサレーヌ」「狼どもの報酬」「愛人関係」など、彼女のたいして長くなかった女優生活のうち、主だった映画の多くはロートネルの監督だった。一言で言うと、彼はミレーユとか、マリーとか、暑苦しくなく、重苦しくなく、セクシーであるとか、色っぽいとか、グラマラスで油っぽくてダイナミックなタイプより、針金みたいなユニ的女優が好きなのである▼後になってしまったが、冴えない警察署長にミシェル・ガラブリュが扮する。フランスのコメディ映画では国民的人気を誇り「Mr.レディMr.マダム」シリーズ「3」は、ロートネル監督である。ベルモンドのツッコミを受けるボケの呼吸、それにあの顔芸は達人級だ。それからもう一人。撮影がアンリ・ドカエだ。「死刑台のエレベーター」の、ジャンヌ・モローがさまよう夜。刃物のような非情なパリを思い出す。ジャン=ピエール・メルヴィルを、クロード・シャブロルを、ルイ・マルを、フランソワ・トリュフォーを支え、晩年はロートネルと組むことが多かった。

 

Pocket
LINEで送る