女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss
  • ブックマーク

特集「ザ・クラシックス」

2016年12月18日

特集「ザ・クラシックス5」⑥
バクステール(1988年 社会派映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ジェローム・ボワヴァン

シネマ365日 No.1969

クソ映画

Classic5

史上サイテーのアニマル映画だわ。出演者はほとんど知らないし、監督も知らない。少なくとも俳優に罪はないと思うから調べてもよかったのだけれど、あまりの後味の悪さにげんなりしてそのままにした。悪口を書きながらもどこか、あるいは主役でなくとも脇役でピカッとした映画があるものだけど、本作の感想? こんな映画に出さされた犬がかわいそうだった。バクステールとはワンちゃんの名前。実に不細工なブリタニア犬が、でもアップになると思慮深い瞑想的な雰囲気を醸すのは、やっぱり犬が持つ本来の威厳よ。犬種・年齢を問わず、犬には犬の自尊心があるわ。風に吹かれて遠くを見つめ、目を細めている犬なんて、本当に思索的よ。でもこの映画最初から、どことなく相性の悪いものを感じたわ。第一の理由。DVDパッケージのこれ。「あなたの知らない闇がある。犬目線で語られる異色サイコサスペンス」。なによこの上から目線。結論からいえば「これが犬目線」と捉えた人間目線のお粗末さが、暴露しているわ▼次がこうよ。「僕を可愛がってください。さもないと何かが起こります」。犬にこんなことをいわせるなんて、つくづく嫌な性格ね〜。可愛がってくれと哀願し、そうしなきゃ「何かが」起こると脅しているのね。そもそも動物を主人公にしたときの設定が狂っているわ。人間をかみ殺す人食い狼がいたっていい、毒蛇がいたっていい、畑を荒らすイノシシやサルが撃ち殺された、やむをえまい、しかしこの設定はまずい。犬という、あるいは動物という自然に反している。リージョンの合わないブルーレイと一緒で、どこを探してもこれじゃ犬の共感にも具体像にもイマジネーションにも出会えないわ。人間に死と厄災をもたらす犬が文学史上いなかったわけじゃないです。メフィストフェレスなんか黒犬の姿で登場するし、誰かをイヌに例える場合、あまりいい意味で使われないのも事実。だから、犬だから清廉潔白、永遠の友とは限らない、悪と偽善と狡猾の使徒、そう受け止められるケースもあるわけよ。それはそれでいいと思うわ。だからといってイヌの尊厳が貶められたわけじゃないでしょ。むしろ「悪と偽善と狡猾の使徒」なんて、それこそ人類発祥以来人間の「お友だち」ではないですか▼バクステールの犬目線による哲学的独白を聞こう。隣に若い夫婦が越してきた。彼はこうくる。「ある日、奥さんがハダシで庭にやってきた。彼女に触られたとき、木の匂いを感じた。僕の中にある欲望を呼び起こす、強い何かを感じた。あれはまさに快楽だ。日が暮れて静かになったら彼女の声に耳をすまそう。声だ。服を脱いだときに発せられる彼女の体臭を想像する。家の明かりが消えたら二人のたてる物音を待つ」。覗きのヘンタイ趣味を犬に押し付けているだけじゃないの。隣家が見える窓辺に座って、妄想に耽っているバクステールを飼い主の奥さんが探しに来たら、「僕の楽しみを邪魔すると痛い目にあうか、思い知らせてやろう」。かわいそうに、人間のおかげでサイコ犬にさせられてしまったバクステール▼美人の奥さんに赤ちゃんが産まれた。愛情の移ろいに、バクステールは赤ちゃん殺害計画を立てる。赤ちゃんをプールに突き落とした数秒後を見計らってバクステールは吠え、危機を知らせ、赤ん坊が助かると「教えるのが早すぎた…」なんと邪悪なセリフだ。そこへ中学生くらいの少年が出現する。自分の掌を画鋲で刺したり、秘密基地だと称して粗大ごみ捨て場に隠れ家をこしらえたりするサイコガキである。バクステールは秘密基地で軍用犬として「襲え、殺せ」の訓練を受ける。基地に侵入した同級生を「襲え、殺せ」と命じたが「敵意のないやつは俺に関係ネーヨ」。怒ったサイコガキはバクステールをムチ打ちの刑に処し、水も食べ物もなく放置する。ヨレヨレになったバクステールがなんとか鎖を外し、基地から出ようとしたら(なんだ、この臭い)。掘り返した土の中には自分の子供の死体が埋まっていた。あの野郎。バクステールに怒りがこみあがる。そこへ姿を現したサイコガキは「死ね、死ね」とバクステールに石を投げ、足を滑らして穴に落ちた。バクステールは歯をむき出し、野生の本能に目覚めたか、と思われた瞬間、大声で「待て」の指示。忠実に「待つ」姿勢をとった犬を、クソガキは鉄のパイプで滅多うち。ピクリとも動かなくなったバクステールを、気が狂ったように殴り続けているところへ親父が現れやめさせる。バクステール? 死んじゃったわよ、きっと▼クソガキは何を考えているか。窓辺から若い夫婦と赤ん坊の幸せそうな風景を見ながら「もしパパとママが火事で焼け死んでも、あの夫婦は僕を引き取ってくれるだろう。バクステールでさえ二人は可愛がってくれたのだから」。オチは連続殺人鬼の誕生かい。クソ映画。二度と見てやらん。

 

Pocket
LINEで送る