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シネマ365日

2017年1月4日

特集「どっぷり楽しいお正月の映画」④
トロピック・サンダー 史上最低の作戦(2008年 コメディ映画)

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監督 ベン・スティラー

出演 ベン・スティラー/ロバート・ダウニー・Jr/トム・クルーズ

シネマ365日 No.1985

トムの選択 

特集「どっぷり楽しいお正月の映画」

心底バカらしい映画です。しかし考えてみればバカらしさとは、映画の一翼を担ってきた主体にして、興収の大黒柱だったのですね。お下品・おバカ・お下劣オンパレードの本作に溢れる、コテコテの押し付けがましさに辟易しながらも、その破壊力には誰しも一驚するにちがいありません。下ネタ満載。そのどれもが、こんなネタを言ってのけるために男子は大人になるという、由緒正しい伝統に裏打ちされている。思うに、ベン・スティラーやトム・クルーズ、ロバート・ダウニー・Jrのような仕事人間が、必死こいてふざけると、こんなハチャメチャになるとでもいえばいいのでしょうか。トム・クルーズは「ミッション:インポッシブル」シリーズとはまったく異なる精彩を放ち、思えば「オースティン・パワーズゴールドメンバー」以来の破壊力を爆発させました。ハゲ・デブ・メタボオヤジのトムが、漫画みたいな大きな手を振り、数分間、ソロでダンスを踊るというエンディングの扱いは、出演を了承してくれた大スターへのおもてなしか▼なんじゃコレ、次から次出てくる見たことのあるシーンは。「プラトーン」「カンフーパンダ」「マダカスカル」…ベトナム戦争を題材にした「トロピック・サンダー」の製作は、わがままな俳優たちのせいで、撮影5日目にして予算を食いつぶす。怒りまくったプロデューサー、レス(トム・クルーズ)は、制作費をドブに捨てたスタッフたちに激怒、ありとあらゆる罵詈雑言をテレビ電話で浴びせかける。主演のタグ(ベン・スティラー)は落ち目の過去のスターだ。人気シリーズも打ち止め。賞狙いの作品も惨敗。今度こけたら業界から抹殺。起死回生を「トロピック・サンダー」の主役に賭けていた。共演するジェフは下ネタ主義。相変わらずの「おならプー」を頻発させるが、実はドラッグ中毒で、撮影が進むにつれ禁断症状を悪化、その彼がアジアの麻薬工場に突入するという、皮肉なめぐり合わせになる▼カーク(ロバート・ダウニー・Jr)はオスカーを5度も受賞した演技派だ。「トロピック・サンダー」では黒人の役に。メイクアップではなく皮膚整形で本物の黒人になるというスーパー没入ぶり。人気黒人ラッパー、アルパ・チーノはもちろんアル・パチーノのパロディ。黒人ぶるカークと衝突ばかりする。彼はゲイだ。原作者ジョンにはニック・ノルティ。自分の体験を綴ったというが、どことなく怪しい。戦争の地獄を知らない俳優たちに本物の演技はできない、ジャングルに叩き込むべきだと提案したのは彼。この映画の監督デミアン・コックバーンはイギリス人。個性派ぞろいの俳優たちをまとめるのに四苦八苦。原作者に入れ知恵されジャングルに行くが、到着後地雷を踏んで爆死する、いちばん損な役。マシュー・マコノヒーがタグのエージェントで出演。タグを助けるのに勇躍ジャングルまで乗り込む熱血漢だ▼彼らを待ち受けていたのは本物の戦場だった。密林の奥地で大麻を栽培する麻薬シンジケートは、突如侵入してきた撮影班を一掃しようと襲撃。はじめは撮影の一環とタカをくくっていた一行は、様子がおかしいと疑いつつも、まさか本物の銃撃だとは思わない。カークだけが異様な気配を感じ取るものの、そばの誰が吹っ飛ばされようが「計画通り撮影を進める」とタグは一顧も与えない。そのタグが捕虜になった。撮影隊は一致団結、嵐のような銃撃・爆破・ヘリコプター脱出へ、タグ救出を敢行する▼ベン・スティラーのくどくどした演出が、うるさくなるところがありますが、チームワークあり、自己犠牲の精神あり、誰も死なない、見せかけだけと分かっていても、コメディと感動が渾然一体となったシークェンスを作り出す。しかしどのアメリカ人がとってもこうなる要素はあると思うが、彼らにとってアジア人とは、本質的に信用ならない人種なのか。その扱いは画一的で一方的だ。特に麻薬組織のトップが子供で、憎々しい形相でアメリカ人を攻撃するに至っては、笑って見るにはクドすぎる。やっぱりいちばんいいところを持っていったのはトムですね。過剰にイヤミを与えない役を、上手に選んでいます。

 

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