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シネマ365日

2017年1月5日

特集「どっぷり楽しいお正月の映画」⑤
ミラクル・ニール(2016年 ファンタジー映画)

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監督 テリー・ジョーンズ

出演 サイモン・ペッグ/ケイト・ベッキンセール/モンティ・パイソン/ロビン・ウィリアムズ(声)

シネマ365日 No.1986

最高のワンちゃん 

特集「どっぷり楽しいお正月の映画」

モンティ・パイソンのテリー・ジョーンズが監督していることと、ロビン・ウィリアムズの最後の映画になったことで、思い入れのある映画。モンティ・パイソンというコメディ・グループは、本当はよく知らないくせに、とにかく彼らは天才集団だと勝手に思っていました。日本人とは息も肌も合わない、コテコテでグロテスクな笑作りかと思えば、ものすごく知性的でイミシンのコメディの奥が深い。本作でもパイソン・グループが演じるのは銀河系優良種保存閣議のメンバーだ。名前からしてふざけているね。いかにもエラソーで高踏的だ。彼らは地球人を生かしておくに足る優良品種かどうか、審査することにした。というのも、観測する限り「知性も感性も足りんな。お粗末だ。絶滅させるのが連中のためだ。この交尾の仕方を見ろ」とチーフがいう。穏健派が「一応審査してみてはどうでしょう。もし優良種と証明できれば仲間に入れてやることにしたら」と提案した▼そこで地球人を一人無差別に選び、彼・彼女に全能の力を与える、悪用したら地球は破壊、善用したら銀河系の仲間入りと決めた。宇宙人の一人は「これまで4億4534万9722種がテストを受け、優等種と認められたのはゼロ。答えは明らかです」と「地球人おバカ・愚か率100%」だったが、公平を期すためテストすることになった。選ばれたのが中年の冴えない中学の英語教師ニール(サイモン・ペッグ)だ。授業には遅刻、生徒の指導能力ゼロ、だれもニールの指示を聞かない、授業は荒れ放題、熱意のないことおびただしい落第教師だ。彼は小説家志望であるものの、原稿を書いていた試しがない。詫びしい部屋に犬のデニス(声=ロビン・ウィリアムズ)と住んでいる。デニスは賢い犬だから、おバカな飼い主に辟易している。同じアパートの上の階にいるキャサリン(ケイト・ベッキンセール)とデートしたいが彼はゲイだと思われている。親切で繊細で独身だから▼キャサリンにストーカーする軍人のグラント。キャサリンの気持ちに配慮なし、強引に結婚を申し込み、家を決め、競争相手を腕力でやっつける。クレージーなキャラという点では、もっともパイソンらしいと思うのですけどね。万能の力を得たニールは何を望んだか。お粗末としかいいようがない。立派な体にしろ、犬のウンチを消せ、生徒を消せ、消された(死んだ)生徒を生き返らせろ、校長が俺に好意を持つようにしろ。うだつのあがらない男がスーパー・パワーを持つことほど恐ろしいものはない。善行どころか愚行の連続、彼のエゴを満たすためだけにパワーは使われ、次々ひどいミスを犯し、銀河系評議会は「地球破壊」に決める。デニスはつくづく飼い主がアホだと思うが、気のやさしい、善良な男であるだけに憎めない。強力なパワーには責任が伴うことを、ニールは気づかない。キャサリンに自分を愛させようとするが、ニールの秘密を知ったキャサリンは「人の心をあやつるなんてサイテー」と怒ってしまう▼このままでは地球が壊滅する前に人類は錯乱する。そこでジョーンズ監督のとった最善の策はなんだったか。デニスである。ニールと同じ能力を持つようになっていた彼は、銀河系評議会が、破壊ビームを地球向けて発射したのと同時に「万能の力を永遠に使えないようにしろ」と逆指示。破壊光線は地球に届く前に消滅した。もちろんニールはただの教師に逆戻り。校長は元通りいかめしく、ニールが担当する生徒たちは悪ガキに。でもキャサリンだけは「食事でもどう」とニールに声をかけるのだった。ううむ。人の弱みをつく映画ですね〜。誰しも憧れる万能の力。願い事はすべてかなう。パイソン流のブラックは人殺しや戦争、テロまで可能にするのだけど、さすがにそこまで深くは具体的にしません。しかし身にあまるスキルをつけた人間は、果たして幸福なのか、不幸なのか。力とは誰のために、何のために使うべきものなのか。知性のないパワーなど、デニスではないが取り上げたほうがいいのである。ベストの判断を下したのは人間ではなく犬だった、このサイコーの皮肉で、モンティ・パイソンは本領を発揮しています。

 

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