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シネマ365日

2017年1月8日

特集「じっくり見たいお正月の映画」①
神様メール(上)(2016年 ファンタジー映画)

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監督 ジャコ・ヴァン・ドルマル

出演 ビリ・グロワーヌ/カトリーヌ・ドヌーヴ/ブノワ・ポールヴールド/ヨランド・モロー

シネマ365日 No.1989

家出した神様の娘 

じっくり見たいお正月の映画

何度吹き出したかわからない。そのくせしみじみと胸を打たれる。オープニングからジャコ・ヴァン・ドルマン監督は虚を衝く。「神様は実在する。ブリュッセルに住んでいる」楽しいではないか。語りは神様の娘エア(ビリ・グロワーヌ)である。「彼は嫌なやつでひどい態度ばかりとる。神の息子は有名でも、娘の存在は知られていない。娘。つまりわたしのこと」ついでにいっておくと有名な息子とはJ・C(イエス・キリスト)、エアの兄貴だ。「これが父だ」と映ったのは、ヨレヨレの部屋着をだらしなく着て紐を垂らし、日本の親父で言えばパッチかステテコふうスタイルで、書斎に閉じこもり、意地の悪い指示を下界に出している、薄汚い中年男(ブノワ・ポールヴールド)。「天地創造の前から父は飽き飽きしていた。初めにブリュッセルを創った。その後いくつかの種を作ったがことごとく失敗」▼スクリーンには映画館の観客がニワトリだったり、トラがベッドに寝そべっていたり、カバ、ライオンが現れ、ダチョーがスーパーを歩いていたりする。「どうもしっくりこない神様は最後に自分に似せて人を、次にイヴを創り、子孫が次々生まれ、父は神の名のもとに彼らを戦わせた。わたしエアはここで生まれ10年間閉じ込められている。入り口も出口もない家だ。父の書斎には入れない。テレビはスポーツ以外見ない。母・女神(ヨランド・モロー)は哀れな女。反応が遅く何もしゃべらない。刺繍か野球カードを見て過ごす。父は無の空間に住み、一歩も出ない。妻を愛しもせず、自分では何もできない。気分転換するため何かが必要だったから人類を作ったのだ。玩具が苦しむのを見て楽しむために。多くの不幸、わずかな幸福、偽りの希望。父の技術は名匠の域だ。今では毎日普遍的な不快の法則を作っている。例えばこういうものだ。バスタブに身を沈めた途端電話が鳴る。必要な睡眠あと10分で起こされる。ジャム付きパンはジャムの方から落ちる。食器は洗ったあとに割れる。レジで隣の列が早く進む。嫌な出来事はいくつも同時に起こる…」▼エアは書斎に入り、パパ神がパソコンを操作して、知りもしない人を平気で傷つけているのがわかる。「サイテーだわ。思い知らせてやる。まず父を痛い目に合わし、台無しにされたわたしの人生の仕返しをする。これを怒りと呼んでいい」エアは兄貴に「この家を出たいの」。兄貴は「外に出るなら使徒が必要だ。僕は12人だったけど好きに選べ」。エアは6人にする。元使徒と合わせて18人。ママは野球が好きで、「18」という数字が奇跡をもたらすと信じているからだ。エアは人類に各人の余命を一斉配信した。人は自分が後何年生きるかを知ってしまった。6人の使徒が選ばれた。彼らの名前と余命は、オーレリー(小さいとき事故で左腕を失った美女、11年6か月と5日)、マルク(セックス依存症の中年男性、83日)、ジャン=クロード(鳥の好きな会社員、12年9か月と5日)、カトリーヌ・ドヌーヴが扮するのはマルティーヌ(裕福な主婦、5年2か月と17日)、フランソワ(殺し屋、25年3か月と8日)、ウィリー(女の子になりたい少年、54日)▼余命をどう生きるかが人類の課題になった。今まで通りの生き方を変えない人もいたし、変えたい人もいた。各国の交戦地域は戦争が停止した。パパ神は怒り狂った。「余命を知るまで人間どもは俺に弱みを握られ、慎重に行動していたのに、余命を知って勝手なことをしだした」。コインランドリーの秘密の通路から下界に降りたエアは、ヴィクトールというホームレスに「新・新約聖書」を書かせることにした。彼は年老いた蛇のような肌をした「わたしには理想の父親」だった。余命を知ったオーレリーは決意した。「何も変えず今まで通り生きる」。エアはオーレリーを最初の使徒に選んだ▼彼女は美人なのに一人暮らし。美しく成功した血が混じっているが、彼女に必要なのは大理石の階段を転がる真珠のような華やかな笑い。同じ建物の7人が彼女に夢中。84歳以上が二人、11歳以下が一人、やりたいだけの男は218人。女たちは残らず、オーレリーをアバズレ女だと敵視する。オーレリーは寂しさと悲しみに溢れていた。7歳のときメトロで失った腕には600グラムのシリコンの義手がある。エアはオーレリーに言った。「父は神よ。わたしは家出した神の娘。この人は新・新約聖書の書き手のヴィクトワール。あなたは一人目の使徒なの」。オーレリーは言った。「一人ぼっちでいたら男が近づいてきた。蒸留所で死んだラクダのような臭いだった。人生はスケート場だ。大勢が滑って転ぶ。朝が来て鏡を見るたび、涙を集めているの」。エアには人の心の音楽がわかる。「夢を見させてあげるわ」やさしくエアはいった。オーレリーはその夜テーブルの上で軽やかに踊る、幸せに包まれた、自分の左手首のダンスを見た。

 

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