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シネマ365日

2017年1月11日

特集「じっくり見たいお正月の映画」④
マジカル・ガール(上)(2016年 社会派映画)

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監督 カルロス・ベルムト

出演 バルバラ・レニー/ルイス・ボルメホ/ホセ・サクリスタン

シネマ365日 No.1992

どやっ!おれの映画

じっくり見たいお正月の映画

見応えのある映画です。主たる登場人物は4人。12歳の白血病の少女アリシアと父ルイス(ルイス・ボルメホ)、心に闇を抱える若い美人妻バルバラ(バルバラ・レニー)と、12歳の彼女と教室で出会ったために人生を踏み外した、数学の教師ダミアン(ホセ・サクリスタン)。運命の歯車を狂わせる一瞬が誰にでもある。そのときは気づかないが、あのときのあの人物との出会いがそうだと思い当たることはあるものだ…何がいいたいかというと、この世界のどこにも境界線は引かれていない、こっちもあっちも渾然とした領域で生きていて、想像もしたことのなかった世界に迷い込んでしまう事こそが、人生の現実なのだ、監督はまあ、そういうことがいいたいのだと思います。彼はとても日本好きで、日本文化とくにコミックやアニメを愛すること人後に落ちず。マジカル・ガールに流れる冒頭の歌、どこかで聞いたことがあるな、と思ったら日本語でした(笑)▼アリシアはパパと二人暮し。教師だったパパはリストラで失職中。アリシアの白血病の治療代を捻出できない。古本を売りに行くが二束三文だ。アリシアの「願いごとノート」に書いてあったのは「誰にでも変身できる・魔法少女ゆきこのドレスを着て踊る・13歳になる」。アリシアの余命はいくばくもない。思いあまったパパは、宝石店のショーウィンドウをたたき割ろうとした途端、空から吐瀉物が降ってきて中止した。ゲロした人物はマンションの上に住むバルバラ。夫は精神科医で、治療のためバルバラが薬を飲んだか、口を開けさせて確かめるほど注意深い人物。バルバラは夫の膝を抱え、二人きりでいたいと訴えるが「君の守りばかりしておれない」と、夫は実家のパーティーに出席の約束を取り付ける。バルバラは生まれたばかりの義妹の赤ん坊を抱き、発作的に笑い出す。理由を聞かれ「この子を窓から放り投げたら、みなどんな顔をするかと思ったの」全員ドン引き。10年の服役を終え、出所が決まったダミアンは「実は刑務所を出たくない」とセラピストに訴える。「バルバラに会うのが怖い」。過去にあったことは明らかにされない、多分関係もあったろうが、誰にもできない方法で彼はバルバラを守り、刑務所に入ったのだろう▼ゲロがきっかけでバルバラはルイスを呼び止め、部屋に招じ入れて服を洗って乾かせ、飲み物を勧め一夜の関係を結ぶ。理由なんか本人もわからない。バルバラは「ハグしてくれない?」とルイスに頼むだけだ。これが気の迷いというのでしょうか。寂しさに勝てなかったのね。それ自体は責められることでも褒められることでもないけど、ルイスがどうしても7000ユーロ(90万円)を手に入れたいと、必死で念じているときだったことが、暗殺剣のような巡り合わせだった。翌日ルイスは恐喝してくる「昨夜のことはケータイに録音してある、7000ユーロ持ってこなければ旦那にばらす」。優しいパパは破廉恥でエゴイストで、卑劣な脅迫男に成り果てた。バルバラはアダの家に行く。アダは高級娼婦のエージェントだ。プールのある豪邸にモデルや女優や、それなりに地位のある男たちが集まり、日当たりのいいリビングで談笑している。サングラスに黒いブラウスとパンツにハット。影のように入ってきたバルバラに一同し〜ん。アダは振り向き「バルバラね」と微笑む。別室で乾杯した後「突然姿を消してごめん」とバルバラが謝る。「わたしが怒っているのは急にいなくなったことじゃないの。あなたがわたしを恐れたことなの。怖がらせることなんか何もしていないのに」とアダ。「今はどう」「結婚したわ。ファナと」「いい娘よね」まあ、そういう関係だったのね。「挿入なし・午前中一回限り」というバルバラの、難しい条件をアダは手配してやる。別れ際にいう。「その傷、いいわね」。バルバラの額には、自ら鏡に打ち付けて額を割った、縦一文字の傷が、異界に滑り込んだ者のシンボルのように刻まれている。バルバラとルイス、役名と実名が一緒ということも、監督の意図をシンボライズしていますね。映画は現実だ、現実こそ映画だ、二つの世界に境界はなく、白日のもとにあるのは現世(うつしよ)に過ぎず、夜の夢こそ心の現実…ばれたかな(笑)。そう、江戸川乱歩の主張です。カルロス・ベルムと乱歩は、精神的な双子の兄弟ですよ。どや、俺の映画、乱歩兄貴! といいたそうです。

 

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