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シネマ365日

2017年1月12日

特集「じっくり見たいお正月の映画」⑤
マジカル・ガール(下)(2016年 社会派映画)

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監督 カルロス・ベルムト

出演 バルバラ・レニー/ルイス・ボルメホ/ホセ・サクリスタン

シネマ365日 No.1993

ワープする異世界 

特集「じっくり見たいお正月の映画」

ソコは車椅子の初老の男性だ。バルバラを豪壮な邸宅に招き闘牛についていう。「牛を殺す行為を嫌いながらスペイン人は闘牛を好む。北欧は頭脳の国。アラブ・イランは激情を迷いなく受け入れる国。スペインは中間でバランスをとっている。闘牛とは本能とテクニックのせめぎ合いだ。本能を受け入れ雄牛のように戦えば怪我しない…服を拭いでくれるか」。バルバラの腹部(衣服で隠れる部分)には大きな傷が何本も刻み込まれている。プレイによるものか、バルバラの自傷かわからない。一枚の紙片が渡され「ブリキ」と書いてある。「一旦部屋に入るとその言葉しか止められない。忘れないでくれ。その言葉を言えば全てが終わる。言わずに我慢すればするほど稼げる」。バルバラはこうして7000ユーロを受け取った。娘にドレスを買った親父は、付属品の魔法ステッキがなかったことに気づく。別価格で2万ユーロだ。バルバラは悪夢のような電話を受け取る。「あと2万だ。俺が最低男? 旦那を裏切ったのは君だ。明後日までだ。わかったか」男の口調はだんだん命令調になる。バルバラは再びアダの元に。アダはバルバラを止めるが、闇のエージェントを通じて直接ソコの屋敷に行く。渡された紙片は白紙。サドを止める言葉はないということだ。バルバラがトカゲの絵のついた部屋に吸い込まれる無音のシーン。不気味です▼第三章「肉」ダミアンの登場です。トカゲ部屋で半死半生の目にあったバルバラは、ダミアンの部屋の前で倒れていた。救急車で病院に運びこまれる。ダミアンのことをバルバラは「守護天使」と呼ぶ。バルバラはダミアンの宿命の女だった。彼女を守るために10年の服役という罪を犯す。バルバラのことを思うと自分が再びどうなるか怖い。会うことが恐ろしく出所したくなかった。しかし身体じゅう包帯を巻かれ、ベッドに横たわるバルバラを見て思いは断ちがたい。ある男に犯され重傷を負わされたとバルバラは途切れ途切れにいう。ダミアンは銃を手に入れ、ペドロを、いやルイスを尾行した。あるバーに入り、ダミアンはルイスを射殺する。目撃したバーテン二人も殺す。録音したケータイを取り返しにルイスの部屋に行くと、アリシアが、魔法少女のドレスを着て踊っていた。アリシアに後ろを向けというが少女は臆せずダミアンを直視する。銃声が響く。非情のダミアン。病室で。ダミアンがバルバラのベッドのそばにいる。「全部片付けた。二度とあの男はこない。二度と恐喝もしない。ケータイだ」。バルバラが手を伸ばし「(ケータイを)くれないの?」「無理だ」「どうして」「持ってないから」ダミアンがひらいた手のひらの中はからっぽ。バルバラが12歳のとき、教室でダミアンにして見せたマジックと同じだ。そこで映画はエンド▼一言で感想のいえない映画でした(笑)。アリシアが殺されちゃうの、かわいそうでしたね。いちばん、いやらしいのは親父ね。自分の娘のためとはいえ恐喝するなんて。バルバラもバルバラだけどさ。寂しい人間はいくらでもいるの。寂しいたびに情事に走っていたら、体はいくつあっても足りないわ。これでダミアンは刑務所に逆戻りね。年齢からして獄舎で寿命は尽きるかも。バルバラは、寄る辺なくさまよう心のまま、再び闇に沈む。みな助からない。健全で間違いなかったはずの世界に生きていた人間が、一歩ずれてしまうと底の見えない泥沼に飲み込まれる。ホラーのような話のはずなのだがこの映画には終始、妙な明るさが漂っていて、それがどこから来るのかというと、わたしたちは大抵、自分がいつ滑り込むかもしれない、そういう異世界があることを、どこかで知っている、どこかで感じているからだと思える。怖いかもしれないが無縁ではない。人間なんか、いつ異次元にワープするか知れたものじゃない。感情が狂ったりおかしくなったり、見知らぬ男を求めたり、トカゲ部屋に行ったり。板子一枚下は地獄と、昔から人はいいならわしてきたではないの。確実にあるのだけれど誰にも決して見えないし、わからない。だからマジカル…。

 

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