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シネマ365日

2017年1月14日

特集「じっくり見たいお正月の映画」⑦
アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー(下) (2016年 ドキュメンタリー映画)

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監督 アルバート・メイスルズ

出演 アイリス・アプフェル

シネマ365日 No.1995

長生きはするものよ 

特集「じっくり見たいお正月の映画」

アイリスはジーンズをはいた初めての女性といわれている。一説にはマリリン・モンローだという説もあるが。ギンガム・チェックのターバンと、大きなフープイヤリングと、シャツとジーンズを合わせてみたいと思ったアイリスは、ジーンズを買いに行った。「でも店の人は、女性はジーンズをはかないぞ、といって売ってくれず店から追い出された。5〜6週間粘って何度も店に行き、ある日連絡があり、店主がうんざりしてわたしのためのジーンズを特注したって。サイズもぴったりだった」。アイリスがネックレスやイヤリングを組み合わせると、それらがただの寄せ集めでなく、深みと立体感が出てくる。彼女はこういうのだ。「センスなんかなくても、その人が幸せならいいの」。心強いではないか。だから彼女は人のファッションを批判しない。自分が楽しく生きるためにファッションはあるのだ▼美容整形についてはこうだ。「大反対よ。鼻がピノキオみたいだとか、大やけどを負ったとかいうなら別だけど、失敗したら元よりひどくなる。ピカソの絵みたいになった人を知っているわ。数本のシワのためにそんなリスクをおかせる? 芸能人は、若く見せたいだろうけど、年は知られているし、手のシワはウソをつかない。やがて頬もたれてくる。わたしは自分が美人だと思ったことはないわ。美人には憧れていないから別に平気よ。美人じゃなくてよかったくらい。かわいい顔を利用して世の中を渡ってきた女性を知っているわ。でも年を取り、美しさが消えて衰えたいま、すごくつらそうよ。何も残っていない。わたしみたいな女は努力して魅力を見つけるのよ。そうしたら味のある人間になれるし、年を取っても変わらないわ。美人でなくてけっこうよ。誰が何といおうと」。夫のカールはめでたく100歳の誕生日を迎えた。子供はいない。「望まなかったの。全てを手に入れるのは無理とわかっていたから、キャリアと旅行を選んだの。母は産後、仕事を離れたことを後悔して、私が11歳のとき、復職した。日中のほとんどの時間を一人で過ごしたわ。ものすごく寂しかった。だから自分の子供にそんな思いをさせたくなかった、子守に任せたくなかったの。全ては手に入らない。諦めることもときには必要なのよ」▼「わたしは大胆で派手なものが好き。死者も目覚めるようなインパクトのあるものがね。毎日無難なことを繰り返すくらいならいっそ何もしなきゃいい。平穏に生きたいという人にも、刺激は必要なの。本や音楽や美術から歴史を学んだわ。だからわたしには歴史観がある。全ては絡み合っていることを学んだわ」「積極的に世の中に出たいわ。それがわたしの生き方なの。母の友人で、体調を聞くと朝から体のあちこちが痛いと弱音を吐くの。年を取り、体が弱ってくると後ろ向きになる人も多い。でも重症じゃないなら、自分を駆り立てなきゃ。外へ出て調子の悪さを忘れるのよ。ずっと家に引き込んでいたらダメ。わたしだって昔と違うわ。疲れも感じる。年相応の衰えは誰にでもあるのよ。無理しないでもいいし、悲観することでもないのよ。アイリスさん、調子はと聞かれたら、絶好調よ。どこへお出かけと聞かれたら、仕事に戻るのよって答えているわ」▼ね、明るいでしょう。彼女を見ていると、お金があるから人は明るくいられるってものでもないし、病気だから沈んでしまうってことにもならないのね。美しい立ち姿はそれだけでも彼女の人生が、心の生活が恵まれていたことをうかがわせる。彼女の終生のテーマは自由で楽しく生きること。その極意のようなものが本作に散りばめられている。90歳を超えた現役のデザイナーであり実業家である彼女は「ルールはない、あっても破るだけ」なんて、どこまでもラディカルです。長生きはするものよ(笑)

 

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