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特集「最高のビッチ」

2017年1月16日

特集「最高のビッチ1」① シャーリーズ・セロン
スノーホワイト/氷の王国(上)(2016年 ファンタジー映画)

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監督 セドリック・ニコラス=トロイ

出演 シャーリーズ・セロン/トム・ヘムズワース/ジェシカ・チャステイン/エミリー・ブラント

シネマ365日 No.1997

「母に。最強の女性に」

最高のビッチ

いきなり脇道に入るようですが、案外これがキモだなと思ったのは、エンドロールに出た献辞ね。

 

To my mother, Jocelyne.The Strongest Woman I know.

 

本作のプロデューサー、ジョー・ロスがこの映画を母親に捧げています。自分が知る、最も強い女性である母に、と。3人の女性が本作の主たる役柄です。一人はむろん、悪の女王ラヴェンナ(シャーリーズ・セロン)、その妹フレイヤ(エミリー・ブラント)、フレイヤの氷の王国で悪の権化に変身を強いられる美少女戦士サラ(長じてジェシカ・チャステイン)。ロスが描きたがった強い女性のタイプは、このうちだれだろう。もちろん3人ともがそれぞれ、強い女性のイメージを分担しているのだけれど、そんな模範解答で映画は楽しくなるだろうか▼ジョー・ロスの作った映画をみてみよう。最近10年で「ヘルボーイ・ゴールデン・アーミー」「アリス・イン・ワンダーランド」「ナイト&デイ」「スノーホワイト」「マレフィセント」など。お見事なファンタジー系で、うち魔女ものが三作。好きね(笑)。ジェシカ・チャステインの戦士サラは、基本、正義の味方であり、良識ある市民の代表だ。恋をし、愛を知り、裏切りにもあい、犠牲を払い、家族を得てそれを守り、生きていくことに幸福を感じる。フレイヤはどうか。ラヴェンナという姉の庇護のもとにいるような妹である。妹だった。魔法の鏡を手に入れた王妃ラヴェンナは当時無敵。言い忘れたが本作は「スノーホワイト」前日譚である。妹フレイヤを従え次々王国を広げていった。「これでお前の魔力が目覚めれば敵なし」「いいえ、姉上のような力はわたしにはないわ」控えめな妹に鋭い視線を投げ「身ごもっているわね。知らなかったの?」▼妹は恋人と王国を出て子供を産み、静かに暮らそうとしたが、姉はそうはさせなかった。安っぽい愛で魔女パワーを消費させたくないと、恋人も赤ん坊も殺してしまうのである。身を潰しそうな悲しみがフレイヤの秘めた力を解き放ち、あたりは一瞬のうちに氷に閉ざされ、フレイヤは姉の元を去って北の領地に自分の王国を築く。強大な軍隊を組織し、緑の大地を凍てつく荒地に変え、要塞を構え氷の女王として君臨した。村の子供たちを召集し(誘拐みたいなものだが)、最強の戦士となるべく訓練した。彼女の教えとは「愛はまやかしです。愚かで弱い者をたぶらかすペテンです。棄て去りなさい。二度と愛に惑わされてはなりません。わが王国に掟はひとつ。愛してはならない」。ひえ〜、愛はペテンかよ。まあ恋愛となると、似たところもあるけど。でもね。エミリー・ブラントって、20歳のころから彼女の映画見ているけど、どっちかいうと顔立ちがやさしげなのよね。とぼけているといってもいい。もちろん厳しい女優道で成果を上げていくからには、百面相だって朝飯前でなくちゃいけないのだけど、彼女の地の性格がたぶん穏やかなのだと思うのよ。だもんで、こういう台詞、ドスが利かないのよね(笑)▼でもこの人は違いますよ、シャーリーズ番長は。先走りしないで、ともかくビッチに変身したフレイヤ女王をみよう。子供たちを戦士として鍛え、育成した最強軍団で女王は次々他国に宣戦布告、兵士たちは戦争に明け暮れた。少年少女戦士だったエリック(クリス・トムズワース)とサラは愛し合うようになる。「夜が明けたら逃げましょう。心はひとつよ」とサラ。「生きても死んでも決して離れないと誓う」とエリック。でもその囁きは女王の情報源として目を光らせているフクロウによって筒抜け。ふたりの前に現れた女王は「よくある話ね。結果は惨め。わたしを裏切るの?」「充分仕えました。行かせてください」「哀願するのはおやめ。弱い証拠よ」。子供を抱いてあやす日を夢見ていた、やさしいフレイヤの口から悪夢のような台詞。次に現れるのがいよいよ、シャーリーズ番長です。苛烈な経験によって愛を棄て、悪に変身せざるをえなかった妹と、運命のもとに悪を選んだ姉。「強い女」といちがいにくくれる女性像なんてない。本作は、批評家の点数や一般紙の見方としては低かったのですが、強い女性を愛する製作者の賛意のもとに、生まれ変わった「悪のファンタジー」として、もっと評価されていいと思います。

 

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