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特集「最高のビッチ」

2017年1月21日

特集「最高のビッチ1」⑥ リンダ・フィオレンティーノ
甘い毒(1994年日本未公開 サスペンス映画)

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監督 ジョン・ダール

出演 リンダ・フィオレンティーノ

シネマ365日 No.2002

話すことなく、語ることなく 

特集「最高のビッチ1」

昨年の1月1日「ピッチ・パーフェクト」から始まった2016年の「シネマ365日」。最も心に残る映画と女優を挙げるとすればどんなピックアップになるか振り返ってみました。「キャロル」のケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ。「アリスのままで」のジュリアン・ムーア。「黄金のアデーレ」のヘレン・ミレン。「虹蛇と眠る女」のニコール・キッドマン。「マッド・マックス/怒りのデス・ロード」のシャーリーズ・セロン。「家の鍵」のシャーロット・ランプリング▼ベテランだけではありません、台頭する最右翼に「アクトレス」のクリステン・スチュワート、地味目の映画でしたが着実にチャレンジと進化を遂げるジェシカ・テャスティンは「アメリカンドリーマー野望の代償」「オデッセイ」、オスカー女優ヒラリー・スワンクを向こうに回し一歩も引けを取らなかった「サヨナラの代わりに」のエミー・ロッサム。「ピッチ・パーフェクト1・」のアナ・ケンドリック。独特の雰囲気を「ムムムの女」と密かに名付ける女優ヴェラ・ファーミガは「ベイツ・モーテル」でサイコな母親を怪演。「M:I5」で彗星のごとく登場したレベッカ・ファーミガ。やっぱり出てきた怪物女優二人の新作は「パリ3区の遺産相続人」のマギー・スミスに「マリーゴールド・ホテル2」のジョディ・デンチ、気風(きっぷ)よく脱ぎまくったエヴァ・グリーンの「300帝国の進撃」「血塗られた秘密」ふうむ…ため息をついていたとき、ドカーン! 隕石が落ちたようなショッキングなこの人、本作の主演リンダ・フィオレンティーノが現れ、いかれました▼こういう存在をなんというのでしょうね。詩篇にこうあります「この日は言葉をかの日に伝え、この夜は知識をかの夜に告げる。話すことなく、語ることなく、その声も聞こえないのに、その響きは全地にあまねく、その言葉は世界の果てまでに及ぶ」ちょっと大げさですが、女優に限らない、アーティストとか、あらゆる芸術作品は「話すことなく、語ることなく」その存在を全地に伝えるものだと思うのです。わかりやすくいえば、一目見てドキッというか、心を奪われるというか、そこにいること自体が物語であるような、そういう女優だったのです、彼女は。褒めすぎかな〜(笑)。でもね、ファムファタールなんて演じようと意図して演じられるものではないでしょう。この項目を書くのに、資料といえばリンダの画像2枚だけ見て書いているのですが、それくらい彼女の顔がいい。冷たくもなく、鋭すぎもせず、意味深であるが率直でもある。シンプルな中に豊かさを感じさせる。ファムファタールとは男を惑わす複雑系の女と思われるかもしれないですが、単刀直入、分かりやすい女であるからこそ、男は入りやすいのです、ああでもない、こうでもない、いつまでたっても本音の見えないややこしい女など、仕事ができて忙しい男はまともに相手にしておれない。だから本作のリンダなど直球豪速球ですよ。「わたしは正真正銘のビッチよ」。こうまできっぱり正体を告げて、それでもいいといって男は行動を共にするのだから仕方ないですね。ついでだからいいますが、みなさん「本音のおつきあいをしましょう」といったりいわれたりすることがあると思いますが、怖い話だと思いません? 本音なんかいちいち口にしていたら世の中、混乱の真っ只中、世界中が紛争地になっているでしょう。本音はファムファタールだけに任せておこう▼嘘も隠しもなく、リンダは正真正銘のビッチです。自分の欲得のために使えるものは全て利用する。殺しも騙しも彼女のプログラムにインプットしていないものはない。真面目で堅物の田舎の青年マイクを手なずけ、殺人の相棒を担がせようとする。そもそもニューヨークにいた彼女が片田舎に流れてきたのは、麻薬取引で一儲けした亭主の70万ドルを横取りしたからだ。どうしてあんなことをしたのだと訊く夫に「あなたが私を殴ったから殴り返しただけよ」。これでもわかるように、リンダは殴らせてから殴り返す女です。自分から先に殴ろうとしていない。殺人計画でも選んだ殺しの対象は「女を泣かせるクソジジイ」であって、リンダ自身は女を泣かせない。彼女は女を泣かせる男が嫌いなのです。そんなこと言っても「殺人じゃないか、逮捕されるじゃないか」と怯えるマイクを冷たく一瞥「あなた、ルールが好きね」そういう問題じゃないだろ、と思いますが。リンダは田舎町の保険会社に就職し「全世界のために」消えたほうがいい男を数人選び、マイクに殺せという。なんで俺がそんなことを。マイクが後ずさりすると「世の中は公平でなければならない。私が殺したのだから、あなたも殺して」…どこを押したらこんな理屈が出てくるのか、マイクは完全に思考能力が麻痺します。夫が放った探偵はあえなく殺されちゃうし、マイクはリンダにいちばん知られたくない秘密を握られ、首根っこを掴まれたようなもの。彼はゲイで、男と関係中妻に見られ、離婚に至りましたが、ゲイであることを必死で隠していたのです。それと彼女がタバコをふかすシーンがいい。こんなにうまそうにタバコをのむ女優は少ない。ケイト・ブランシェットもうまかったが、わたしはリンダに軍配ですね。コートがよく似合います。長身のせいもありますが、のっぽなら誰でもコートを着こなせるとは限らない。彼女が黒いコートを着て、大都会ニューヨークを歩いているシーン。服を着るだけなら猿でも猫でも着る。街も背景も彼女を引き立てるためにあると思わせるセンス、それが着こなしなのだと納得します。ちょっと古い資料ですが、英誌「Total Film」の「映画史上最高の女性キャラクター100人」(2013)の16位にリンダがランクされています。

 

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