女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「最高のビッチ」

2017年1月24日

特集「最高のビッチ1」⑨ ジェシカ・チャスティン
クリムゾン・ピーク(下)(2016年 サスペンス映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ギレルモ・デル・トロ

出演 ミア・ワシコウスカ/トム・ヒドルストン/ジェシカ・チャスティン

シネマ365日 No.2005

狂気の愛 

特集「最高のビッチ1」

ホラー映画はジェシカにとって初めてではありません。「MAMA」がありました。霊にとりつかれた少女を取り戻す、ちょっとパンクな女を演じました。今回のルシールはパンクなどころか、明らかに狂っている。イーディスの幼馴染で、医師となったアランは、イギリスに渡ったきり音信不通になったイーディスを心配し、父親の死因にも不審点があった。探偵の存在を知って訪ねたところ、彼が調べた事実はとてつもない姉弟の犯罪歴・殺人歴だった。これじゃ結婚などとんでもない。父親は彼らを追い払ったが、まだイーディスは犯歴を知らなかったから、彼らは先に父親を殺しちゃったのね。いよいよトロ独特のゴシック世界が幕を開けます。セットというにはあまりに重厚な荘厳な建築。トーマスが粘土を採掘する屋敷の地下の採掘場。イーディスは子供の頃、母親の幽霊が「クリムゾン・ピークに気をつけるのよ」といったことを覚えていました。「クリムソン・ピーク」とは赤粘土の土壌のため、降った雪が赤くなるこの土地であり、この屋敷のこととわかる。恐怖の本拠地にヒロインはきてしまったのだ、うわ〜、助けて〜▼ルシールは言葉少なく、ピアノを弾いたり料理を作ったり、お茶を入れてくれたり。でもトーマスに囁く「なぜ犬が生きているの。殺さなかったの?」「捨ててきたのさ。凍え死ぬと思ったから」「何を食べていたのかしら。残飯ね。わたしたちと同じだわ。彼女の財産を手に入れたの?」「まだだ」「最後の書類にサインしたら始末して」。イーディスとトーマスは結婚したものの実質行為は何もしていない。「父の喪に服しているので何も。旅行中も部屋は別々でした」という義妹に「優しいこと。じきに何もかもうまく行くわ」と謎のようにルシール。トーマスは屋根裏部屋で、器用に人形やら小物を作っている。「ルシールのためにね」だそうだ。彼らの母親の肖像画があった。それを見た夜、イーディスは床をのたうちまわって自分に近づこうとする肖像画そっくりの幽霊を見た。骨と皮の枯れ木のような体は真っ赤で、悲しげに手を伸ばすのだ▼この映画の幽霊は、イーディスに危機を告知する「いい人」なのである。「そこにいるならわたしの手に触って」と頼むと、バターンとイーディスが倒れるほどの勢いで触り「今すぐ出て行くのよ、イーディス、彼の血であなたが染まることになる」と声が聞こえたではないか。その頃アランは探偵から驚くべき事実を告げられた。古い新聞の見出しには「アデラールホールで惨殺死体」「母を亡くした子供二人」そして探偵の取り寄せた書類によるとトーマスは既婚者で、少なくとも3人の女性と結婚していた。うち一人のこんな手紙をイーディスは屋敷で発見した。「彼の目的は粘土採掘機を動かすための資金集めだ。二人が来る。早く隠さないと。これを見つけた人はわかってほしい。わたしは殺される。お茶にも毒が入っている」。いますぐこの屋敷から出て行くというイーディスにルシールは冷たく「行くところなどないわ」。薬で眠り目が覚めたイーディスのベッドに座り「母は寝たきりになったの。わたしは介抱して風呂に入れ、傷に薬を塗り、元気にしてあげた。あなたもわたしが元気にしてあげる」…ひたすら不気味▼弟は姉に聞く。「どうしても殺すのか」「警察に行かれたらわたしたちは縛り首よ。わたしたちは離れられない。今までもこれからも」。そこへ遠路はるばるアランが到着した。彼は真相をつかんだのだ。姉弟の犯罪が明らかにされた。「あなたたちの母上が浴槽で殺された事件があった。一撃で頭を割られている。犯人は捕まらず屋敷にいたのは子供ふたりだけ。トーマスは12歳。取り調べの結果、寄宿学校へ。14歳だったルシールはスイスの修道女学校にとあるが、たぶん別の施設だろう」そう、彼女が入ったのは精神病院だったのです。「あなたたちはあちこちで獲物になる女を物色した。ロンドン、エジンバラ、ミラノ、アメリカ。夢に破れ、お金持ちで、身寄りのない女を。この屋敷の維持と採掘機の発明のための資金源だ」「幽霊は赤ちゃんを抱いていた。その子も殺したのね」とイーディス▼ルシールは「殺してないわ。トーマスは結婚した女の誰とも寝なかったわ。わからない? わたしの赤ちゃんよ。許されぬ子だった。死なせてあげるべきだったけど諦めきれなかった。エノーラ(嫁の名)はいったわ、助けられると。でもウソだった」ルシールは続ける。「結婚は財産目当てだった。けれど殺したのは愛のためだった。弟を愛するあまり、血が上りどうしようもなくなる。この愛はズタズタに傷つけ、心を歪ませてしまう狂おしいほどの愛。人をケダモノにする。子供の頃のトーマスを見ればわかるわ。完璧だった。彼がいたずらしたときは、わたしが代わりにお仕置きを受けたわ。母に何度も打たれた。わたしたちの関係を知ったときの母の顔ったら。わたしとトーマスの愛はお互いに本物だった。この屋敷の中だけの秘密だった」。もう殺すのはよせという弟に「愛しているのね、あの女を?」「愛してしまったのだ」聞くなり、ためらいもなくトーマスをグサッ。胸、喉、顔にブスブスとナイフを突き刺し、顔に刺した深手が脳に達してトーマスは死ぬ。アランも瀕死の重傷、トーマスも死んだ、残るイーディスとルシールは雪の降る屋敷の外で対決。トーマスが幽霊になってイーディスを助けます。キミ、さっき死んだばっかりやないか。おかしいと言えばおかしいですが、幽霊の手でも借りないと、最強のお姉さんをやっつけることはできなかったのでしょう。最強にして最恐、最凶です。遅疑なく殺しに至る一瞬の判断、心を歪ませた狂気の愛。ラストにイーディスの独白が流れます。「幽霊もいろいろなものに縛られている。土地や屋敷、時代だったり凄惨な事件の現場だったり、それ以外に感情に縛られている幽霊もいる。衝動、喪失、復讐、愛、彼らはさまよい続ける…」なんですって、ルシールが縛られていたのはこれ全部じゃない。強いはずだわ。ともあれよくやったジェシカ、新機軸になることを祈るわ。

 

Pocket
LINEで送る