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特集「最高のビッチ」

2017年1月26日

特集「最高のビッチ1」⑪ シャロン・ストーン①
氷の微笑(1992年 サスペンス映画)

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監督 ポール・バーホーベン

出演 シャロン・ストーン/マイケル・ダグラス

シネマ365日 No.2007

晴朗なビッチ 

最高のビッチ

この映画を何度見ても、行き着くところはシャロン・ストーンだという感を深くします。美しいとか、魅力的だとかいう言葉がどうでもよくなるくらい、彼女を見ていると面白い。面白いという言葉で言い表せるかどうか心もとなくさえあるのだけど、よくありませんか、気に入った器やグラスを、その彫り込みや手触りや、色模様や、自分にとって「めでたき」としか言えない愛着を感じ、飽きがこない…それに近いのです。本作のシャロンは天下無敵だった。そう断言しても太刀打ちできる女優は極めて少なかった。カトリーヌ・ドヌーヴの「インドシナ」があり、バーブラ・ストライサンドの「サウス・キャロライナ」が、メリル・ストリープの「永遠に美しく」が、イザベル・ユペールの「ピアニスト」が同年公開されています。演技力、美人度、映画賞受賞キャリア、超一級の女優ばかりなのにこの一点にのみ関しては、自分に対する晦渋も、悔恨も疑問も、反省も、不安の一片もない晴朗なまでの「ビッチ」という一点に関しては、シャロンは突き抜けていました▼例えばシャロンが登場するファースト・シーン。刑事のマイケル・ダグラスがシャロンの別荘に聞き込みにくる。海を見下ろすサンフランシスコの、小高い海岸の上に立つ瀟洒なベランダで、シャロンが海を見ている。振り向いて微笑する。どんなに不機嫌でいても、ついつられて笑ってしまうような、女優がこんな笑顔を見せていいのだろうかと思うような、あどけない笑顔だ。ポール・バーホーベン監督は、シャロンをいじりまわさなかったのだろうと思うのです。トラやヒョウが、サバンナを勝手に歩いたり、走ったりするときが最も美しいように。本作はゲイ映画とも言える側面を持ちます。シャロン扮するキャサリン・トラメルは、女友だちと密着した関係にあることを強調する。マイケル・ダグラスの刑事ニックは、一言でいうと、キャサリンに翻弄されたくてたまらない。彼の相棒が殺され、殺人事件が相次ぎ、有力な容疑者としてキャサリンが浮上してもなお、彼女に会いに行くのに、捜査という名目を利用しているのだと、監督は平気で観客にそう思わせる。マイケル・ダグラスは「氷の微笑2」のオファーを断ったそうだけど、そらそうよ。ここまで最初に「シャロンありき」の映画に仕上がったら、共演者はアホらしくなるわ▼「可愛い悪女」はたぶん男性の造語だろう。女にとっては「可愛い女」はいるだろうし、「悪女」も是認するが、「可愛い悪女」なんて意味をなさない。「悪女」と呼ぶ同性がいることにさえ、実感として仰々しすぎると感じる。もっと心の深い部分で魂が変化し、それを密かに自覚し、かつ自足し、人を傷つけるエゴイストであり、その代わり傷つくことも恐れず、何を奪われても恬淡と耐え、攻撃と復讐の一撃に瞬時のためらいもない女。そんな女がどこにいる? 案外いると思うのだ。世間は広い。何かをやり抜くと決めた女は、前述の一面を必ずどこかに備えているものだ▼女性監督の進出には目覚ましいものがあります。カンヌで最有力視されながら、無冠で終わりましたがドイツのマーレン・アーデ、BBCの大人気ミステリー「シャーロック」に起用された初の女性監督レイチェル・タルライ、そしてカンヌ国際映画祭のプレミアで、ジョディ・フォスターが監督として帰ってきた「マネーモンスター」が上映されました。ただ不満を言えば、「ビッチ」を描くのが今のところ、圧倒的に男性監督であり、女性監督による激越な「ビッチ」はまだ登場していないように思われます。これは飛び過ぎた想像かもしれませんが、男性のほうが「ビッチ」の明晰なイメージを持っているのではないかと思えるのです。どこかで(女は魔物だ)という深層心理がある。それは残念なことに、女に対するリスペクトと同義語だとは言えないのですが、あっさり言えば男性に捉えがたい「何か」というしかないもの、男性の社会的な訓練や教養の範疇で馴致できないラディカルなものを女は持っているのでは…「ビッチ」の本質はそれではないかとわたしには思えるのです。だとすれば、女自身は案外気がつかないのも故なしとしないのですが、今後の女の魅力市場を考えると、旧来の範疇では収まりきれなくなる。「魅力」とか「美人」とか、まして「可愛い」とか「チャーミング」など死後に等しくなる刺激的な要素が必要になる気がします。そのときガハハハと豪快に笑っている女優の一人は、きっとこの人、シャロン・ストーンにちがいない。

 

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