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特集「最高のビッチ」

2017年1月27日

特集「最高のビッチ1」⑫ シャロン・ストーン②
氷の微笑2(2006年 サスペンス映画)

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監督 マイケル・メイトン=ジョーンズ

出演 シャロン・ストーン/デヴィッド・モリッシー/シャーロット・ランプリング

シネマ365日 No.2008

ビッチの時代

最高のビッチ

シャロン・ストーンによってキャサリン・トラメルは命を吹きこまれたのか、キャサリン・トラメルはシャロン・ストーンによってスクリーンの永遠のビッチとなったのか。「氷の微笑」から14年、シャロン48歳となり、VFXで小ジワを消したとか、修正したとか、本作がゴールデンラズベリー賞の7部門にノミネートされ、最低作品・最低女優・最低脚本・最低前編続編の4部門で受賞したとか、シャロンの容貌の衰えは隠せないとか、とにかく公開当時、褒めるよりけなされることの方が多かった気がする。シャロン・ストーンという女優は、なんでこう番外編の話題メーカーなのだろう。目立つからよね。いるかいないかわからない女優じゃなくて、何をしても目立つのよ。食べても飲んでも、服を着ても脱いでも、痩せても太っても、男を変えても養子を取っても、年を取っても目立つのよ。女冥利につきる女優だと思うわ(笑)▼それなのに、そういうゴシップでシャロンを笑い者にするのは、数えたわけじゃないけど、ほとんど男性記者の気がするのよ。ハリウッドそのものが、女優は年をとれば用済みだという男社会だったわけね。今でもそうだと思うけど、でもね、こないだ、ジョニデの離婚の原因の一つに、ジョニデの容色の衰えと書いてあったのを読んで、ンまあ、男にとっても生きづらい時代になったわね、と実感したわ。飛ぶ鳥落とす勢いだった30代、40代の彼を知っていたら、こういう記事が平気で世間に出てくること自体に無常を感じるわ。この頃「ジョニデ」と目にするのは「ジョニデの娘」じゃない。泣きそうだわ。つまり、こういう過酷な映画ビジネスの環境を、シャロン・ストーンが生き抜いてきたのが立派だってことを言っているのよ。VFXの小ジワ消しくらい、笑って見てあげな▼そもそも何でこうムキになるのかというと「ビッチ」のやれる、あるいは似合う女優が少なくなってきたからです。娼婦ができることは女優の通過儀礼と言われるのだけど、ビッチはもっと難しいわよ。そこにいるだけで悪を感じさせる、それだけでも足りない、悪と言うだけなら犯罪者だって悪だ。ビッチとは犯罪者のことではなく、社会に溶け込んでいながらにして「犯罪を孕み、生み落とす女」だ、とわたしは思っているものです。「ファム・ファタール」というのは男性からみた「宿命の女」でしょ。それとも違う。「宿命の女」なんて、ビッチに出会ってひどい目にあった男が与えた「女」の呼称に過ぎないけど、男に出会おうと出会うまいと、ビッチはビッチであり、女の原型の、あえてもっと大袈裟に言うなら、根元の一種なのです。だから大物なのよ。「最高の悪役」でも書いたけど、悪役ってスキルのある役者でないと貫目が合わないのよ。軽い役者には務まらないの。それと同じで、ビッチのやれる女優にはどうしようもない「凄さ」と、ある一瞬に、何もかもかなぐり捨てる狂気が要る。愛と平和の使者だけでビッチは務まらないのだ▼しからば本作のシャロンはどうか。似合っているじゃない(笑)。待っていたぜ、キャサリン・トラメル。シャロンは自分の役をこう分析している。「彼女は存在自体が破壊的で、性的快楽に貪婪、恐ろしいほどフシダラでモラルも良心もない。彼女だけの秩序と彼女が勝手に決めた真実の中で生きている」…で、シャロンはそんなヒロインを引き受けたわけね。マイケル・ダグラスは二度とごめんみたいだったけど。キャサリン・トラメルは人を操る天才で、このたびは小説を書くために次々罠を仕掛け、精神分析医を破滅に追いやります。分析医マイケル・グラス(ダを抜かしたのはシャレか=デヴィッド・モリッシー)は、例によってキャサリンに翻弄され、肉体に溺れ、殺人を犯し、大学を追われ医師免許は剥奪され刑務所入り。キャサリンはマイケルに嘘を吹き込むわ、彼の元妻とは寝るわ、大学の恩師は籠絡しマイケルの昇進をオジャンにするわ、友人でもある刑事はマッチポンプだと耳打ちし、それでなくても真面目人間のマイケルは疑心暗鬼の虜。彼の盟友にして優秀な女性分析医、ミレーナ(シャーロット・ランプリング)は、マイケルを助けようと、あの性悪女は自分が診る、と手を貸す。キャサリンの次の標的はミレーナだと知ったマイケルが、急遽ミレーナの家に駆けつけると、迎えた彼女の後ろから薄笑いを浮かべ姿を現したのはキャサリンで、なんと、ミレーナは「マイケル、病院で治療するのはあなたよ」だって!▼キャサリンのマンションはメゾネット対応の豪邸だ。室内に長い階段が二階に続き、寝室は瀟洒にしてゆったり、ジャグジーは下界を見下ろすベランダに、日本ならリビングに平屋くらい建てられそう。暖炉の火は赤々と暖かく燃える。こんなビッチなら、なってみるのも悪くないでしょ。でも誰もがビッチにはなれない。試験も資格も不要だけど、ビッチの意味は、今まで少なくとも男性が意図していた女とは違ってくる。男にも女にもセックスにも、犯罪にさえ向き合い、自分の秩序と真実に充足する、女さえ羨望する女の中の女、そんな女性像を、キャサリン・トラメルは予見させていました。いやいや、それを言うなら半世紀前に、次に来る「ビッチの時代」をスクリーンで体現した素晴らしい女優がいました。ジャンヌ・モローです。

 

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