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シネマ365日

2017年2月3日

特集「決断する女」③ 
ショックプルーフ(1949年 サスペンス映画)

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監督 ダグラス・サーク

出演 パトリシア・ナイト/コーネル・ワイルド/ジョン・バラグレイ

シネマ365日 No.2015

ナイトの脚

決断する女

「脚」だけのシーンで覚えている映画がある。綺麗な脚であることはまちがいないが、いわゆる美脚とは限らない。そのシーンの一瞬の動きで記憶にとどまった「脚」だ。どんな映画があったろう。「氷の微笑」のシャロン・ストーンが堂々と組んだ脚。「狂恋」のマレーネ・ディートリッヒがゆっくり階段を降りてくるときの脚。「何がジェーンに起こったか」のラストシーン、ベティ・デイビスが砂浜でステップを踏む軽やかな脚。ケイト・ブランシェットが「耳に残るは君の歌声」でダンサーを演じたとき、高々と上がる脚に「まあ、案外やるのね」そう感嘆した。裸の脚ではないが「オルランド」で、ティルダ・スウィントンが黒いタイツで走った脚の長いこと、速いこと。ストップ・ウォッチを押したくなった。「アクトレス」のクリステン・スチュワート。後ろからの寝姿の一部しか映らないが、Tバックが可愛くて、きっとすんなり伸びた気持ちのいい脚だろうと思えた。「恋のモンマルトル」のカトリーヌ・ドヌーブ。特に細い脚ではないが、すくすくとした健康な脚で、あっけらかんと「ジグジグ」(やりましょう)と歌い踊るのだから笑った。最近ではこの人。「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」のレベッカ・ファーガソン。水のように床に流れる黄色のドレスから惜しげもなく見せた、片膝を立てた脚…▼さっきから何をごちゃごちゃ書いているのかというと、この映画のオープニングの脚が決まっているのだ。ここだけで引き込む力がある。女優はパトリシア・ナイト。この人のデータが少なくて、出演作品は本作と「独裁者の最後」しかわからなかった。同じく主役のコーネル・ワイドとは当時夫婦だった。もう一人、ナイトに近づく元カレのワルにジョン・バラグレイ。主たる登場人物はこの3人で、尺は80分。あっという間に終わるはずだが、脚本にサミュエル・フラー、監督がダグラス・サーク。キリキリ揉み込むようなストーリーの展開と、弾丸のようにテキパキしたセリフ運びでタルミを一瞬もタルミを見せない。こんな映画を見ると、つくづく無駄に長く、セリフ美のない映画が増えたと思う。ジェニー(パトリシア・ナイト)は仮釈放で刑務所から出たばかりだ。「ハリウッド大通り」を歩く彼女の脚だけが映る。闊歩するという歩き方ではない。考え事をしているような、ゆっくりした足取りで、ブティックの前で立ち止まる。5年間刑務所にいた。華やかなもの、きれいなものは、見もしなければ聞きもしなかった。シャバの空気を確かめるように彼女は店に入っていく。ナイトの容貌はシャープで、第一印象をいえば、キャサリン・ヘプバーンに似ている。視線は鋭く眉は細く、笑いを置き忘れたようにクールだ。髪をブロンドに染め変え、身なりを一段華やかに整えた。うらぶれた女と思われたくない。そして保護観察官のグリフ(コーネル・ワイド)のオフィスに入っていく。グリフは一目見てジェニーの美しさに心を奪われる▼ジェニーにはムショ入りまえから腐れ縁のギャンブラー、ハリー(ジョン・バラグレイ)がつきまとっている。ジェニーは彼のために人を殺したが「誰も相手にしなかったわたしを、5年間待っていてくれた」と、男と別れる気配はない。グリフは保護観察中の規則をあれこれ言い渡し、破れば再収監で刑期を終えた頃君は老婆だと通告する。厳しいグリフをジェニーは忌み嫌っていたが、彼が盲目の母親の面倒を見る孝行息子で、弟を可愛がり、弟がまたジェニーになついて、母親はやさしくジェニーに接し、家庭的な温かさに気持ちがほぐれてくる。その一方で、自分がグリフの妻になどなったら、彼の将来はめちゃくちゃだ、自分には塀の上を歩いているハリーが似合いなのだと思う。ジェニーとグリフは結婚する。保護観察中の結婚は禁止だ。グリフは「秘密にしていよう」と自分からルールを破っちゃうのだ。それをばらしてやる、そうしたらグリフもお前も人生を失うと、ハリーが嫉妬のあまり恋路を邪魔し、ジェニーはやめてと哀願するが聞き入れず、拳銃で撃ってしまう▼車でメキシコ国境を越えようと盗難車で出発した二人。グリフの判断に首をひねる。ジェニーはこんな逃避行など続くはずがないとわかっている。油田の発掘人夫になったグリフは、毎日ブタ箱みたいな人夫小屋の暮らしと、逃走の疲れで当たり散らす。ジェニーが言うのだ。「自首します」「終身刑だぞ」「一つだけ手があるわ」何の手か後でわかります。どんでん返し同様のラストです。ハリーは命を取り留め病院で回復していた。撃ったのはこの女か、と刑事に面通しを求められ「違う、あれは事故だった」と証言する。逮捕もヘチマもない、ジェニーは釈放、保護観察中の「逃亡」も監察官が同行していたから規則には触れないと、いいことずくめでハッピーエンドだ。馬鹿らしいのはもう一つ、あれほど逃亡に躍起になっていたグリフが「自首するわ」の女の決意を聞いたとたん「わかった、じゃここを出よう」と豚小屋を後にする。バカに軽く終わってしまったけど、テンポのよさと、ナイトの存在感で◯。

 

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