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シネマ365日

2017年2月4日

特集「決断する女」④ 
ミルドレッド・ピアース(1945年 家族映画)

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監督 マイケル・カーティス

出演 ジョーン・クロフォード/ザカリー・スコット/アン・ブライス

シネマ365日 No.2016

絶句する娘 

決断する女

親はどこまで子供に苦労させられるのだろう。この映画でミルドレッド・ピアース(ジョーン・クロフォード)は、挙式の日以外は台所にいて、家事と育児に専念した母親だ。娘が二人いる。上がヴィーダ(アン・ブライス)、下がケイ。夫バーとは、妻が子供のバレエや声楽やピアノや、習い事に金を使いすぎるとポロリと言った。夫が近所の未亡人と昵懇であることを知っている妻はカチン。「我が家は最優先よ。嫌ならあの夫人と暮らすがいいわ」「そうするよ。子供たちは?」「私に任せて。荷物をまとめて出て行って」。夫はあっさり家を出る。ケイは活発な子供らしい遊び盛りの少女だが、ヴィーダはわがままで子供にして金の亡者で、偏見の強いすえおそろしいクソガキである。父親は長女の性格を見抜いていて、妻が長女に金をつぎ込むのに「あの子は君を見下している娘だぞ」と真実を言うが妻は耳を貸さない▼夫に頼れなくなった家計は火の車。ミルドレッドは職探しに足を棒にして町を歩き、くたびれてふと入った喫茶店が人手不足なのを知り、ウェイトレスに就職する。同僚のアイダは気性のさっぱりした姉御肌の女で、世間知らずなミルドレッドに仕事を教えるが、熱意の塊でありミルドレッドはたちまちウェイトレスが天職と思えるまでに職務に上達する。チップも増えた。ところがヴィーダは「呆れたわ。ウェイトレスだなんて。品位を落としても驚かないわ。ママの出自を考えれば当然よ」。なんだと。「誰に食わせてもらっている。文句あるなら出て行け」と追い出して当然の言い草だ。薄給からコツコツ貯金し、バレエを習わせ高い服を着せ、綺麗に装わせ、上流家庭の雰囲気の中で育てようと、懸命に母親は働いているのではないか。このイカレポンチの発言は絶句の連続である。哀れな母はでもこういうのだ。「違うのよ、ヴィーダ。ママはお店をいくつも持つ経営者になるの。そのために現場の勉強をしているのよ」…娘だけじゃない。母親も絶句の連続だ。ミルドレッドは死に物狂いで働き、3年で5軒の店を持つまでになった▼どの店も繁盛している。親友のアイダが右腕となってマネジメントを仕切ってくれている。心強かった。ところが「とにかくお金が必要だった」と警察でミルドレッドは述懐した。後先になったが、ミルドレッドが再婚した夫モンティが海辺の別荘で射殺死体になって発見され、ミルドレッドやアイダら、店の関係者が警察に呼ばれているのである。容疑はミルドレッドの先夫、バートにかかっている。理由は嫉妬だ。「バートじゃない」ミルドレッドは断言する。この辺で犯人が絞られてしまう恨みはあるが、軽薄男のモンティ、語るに堕ちる娘、娘への溺愛で後先見えなくなった母親。ミルドレッドが愚かだと決めつけるのはたやすいが「娘は私の命なの。娘のためならなんだってやるわ」。こんな彼女の我が身を捨てた言葉に、身に覚えのない世の母親はいるだろうか。彼女の愛は純粋なのだ。だから狡猾な娘につけこまれたのだ。何と言ってもミルドレッドは、専業主婦からある日いきなり仕事について、がむしゃらに働いてきた世間しらずである。ヴェーダは小娘とはいえ生まれながらのファム・ファタールだ。ウブな母親の太刀打ちできる相手ではない▼ヴィーダはあろうことか義父のモンティを誘惑し、高飛びする計画だった。モンティと娘が抱き合っているところへ来合せた母親に「お金がいるのはママから逃げるためよ。チキンやパイやママの匂いや、ウェイトレスや労働者ばかりの町から。高い服を着たってレディにはなれないわ。ママは所詮雑貨店の店主とウェイトレスの娘だもの」。言いたい放題ね。わがままなんてものじゃなく、本性が邪悪だわ。ところがモンティはさすがに「俺がいつお前と逃げるといった、お前みたいな性悪女と誰が暮らす」。三行半を突きつけられたヴィーダはモンティを撃ち殺してしまう。ところがミルドレッドの決断と来たら、娘の罪をかぶって「自分が殺した」と自白するのだ。警察もバカではなく、周期の聞き込みによって、殺人現場にいたのはヴィーダだと突き止める。高飛び寸前、捕まったヴィーダは、なんと母親に「話が違うじゃないの、わたしの罪をかぶるといったのに」となじり「ママ、助けて。このことはママにも責任があるのよ。ママが育てた娘よ」ミルドレッドは「ごめんなさい、力不足だったわ」…最後の絶句。もはや空いた口がふさがらん。一部始終を見ていたバートは、妻をいたわりながら警察を出る。深夜の取り調べは終わり、町は夜明けだった。この母を演じてジョーン・クロフォードはアカデミー主演女優賞受賞。でもこれがケチのつき初めというか「大砂塵」みたいな戦う女から一転「やられ役・被害者役」がふえ、なんとなくモノのわかった弱いキャラになったことは否めません。女優なんて仕事、自分と心中する以外にいい仕事をする方法なんかないんじゃないの。

 

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