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シネマ365日

2017年2月5日

特集「決断する女」⑤ 
跪く女(2013年 日本未公開)

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監督 マニ・モータセット

出演 グスタフ・スカルガルド/アンナ・オーストレム/レベッカ・ファーガソン

シネマ365日 No.2017

やっぱりレベッカ

決断する女

日本で公開されなかったけど、割といい映画でした。それにしても「跪く女」のどこが「決断する女」なのか。考えるまでもなく、この映画でマトモな女性とくると、ただひとり、この人だけ。ヒロイン、イダ(アンナ・オーストレム)の同僚の女性教師リンダ(レベッカ・ファーガソン)です。レベッカの若いときの映画が見たくて探し当てた作品だから、彼女に甘くなっているかもしれないけど、本作の登場人物を分かりやすくいうなら、主人公である学校教師のクリステル(グスタフ・スカルガルド)とイダは、ヘンタイ男にサイコ女よ。イダはクラスの悪ガキどもになめられっぱなし、大騒ぎを「ねえ、お願い、静かにして」なんて言ってますますつけ上がらせ、仕方なく男教師のクリステルに収拾してもらった。ふたりはその後急接近、同棲する▼スマートでやさしいクリステルは、一緒に暮らし始めるととんでもない男だった。イダの父親が来ることさえ嫌がる独占欲。自分は夜の2時に母親に電話し、壁塗りは僕がやるとか、買い物はどうこうとか、急ぎの用でもないのに母親にべったりのマザコン。イダもちょっとおかしな男だと思うが、何しろ「君を死ぬほど愛するよ。覚悟しろ」とか「僕が悪かった。君の人生だから好きにする権利があるのに、自分でも嫌なほど、君を独り占めしていたいんだ」とかき口説きながら、男はのたうつのだ。普通なら気色悪くなると思うが、それにほだされるイダも「ごめんね、わたしもウソをついたわ」とか、この辺りからイダには虚言癖と妄想癖があることがわかってきます。最恐のコンビネーション。遠からず事件が起こるのは目に見えています。イダはクリステルに抑圧され、リンダに救いを求める。リンダはクリステルの性向が常軌を逸していることがすぐわかる。だからクリステルは、自分の正体を見誤らないリンダが大嫌い。丸め込めるイダがいい。リンダ「飲みに行きましょうよ」「でもクリステルが」「少しは息抜きすれば?」リンダはイダに真っ赤なルージュを引き、明るい服に着替えさせメイクをばっちり。綺麗になってハツラツとした自分たちを眺めてにっこり、機嫌よくチュッとキスなんかしている。イダは初めて羽目を外し、飲み歩き、しゃべりまくり…そのころ家ではクリステルが、深夜に眠りもせず待っている。ジト〜こわい目つき。翌朝は大変だった。もうリンダと付き合うな、あの女は普通じゃない、不良だよ、人を不快にする、酔って電話してきたぞ、リンダに会うときは教えろ、変人だよ…イダが学校に行こうとすると「話が済むまで家を出るな!」と思うと一転、「この泥沼から抜け出さないと。君を泥沼に連れ込んだ、許してくれ」どこまで疲れる男なの。イダはおろおろするばかりだ▼そこへリンダが近くの「リングホルム校に教師の空きがあるの。一緒に面接を受けてみない?」じっとイダを見つめ「こんなに賢くて美人なのに」と言葉が続かない。クリステルにとってリンダは厄病神である。イダはリンダといると気持ちいい。おおらかで、あっさりしていて、細かいことにごちゃごちゃ言わず受け入れてくれて、的確な判断をくだす。リンダはリンダでサイコ男に籠絡され、振り回され、自分を見失いかけているイダが心配でならない。面接は明日だ。「最近あなたがわからない」とイダに言う「わたしたち(クリステルとイダ)、お互いが解り合って居心地いいの」そう言うイダの顔色は鉛色で生気がない。飲み物をこぼし、服を汚したイダに、リンダがテキパキズボンを脱がせ、シミ取りをしてやっているところにクリスタルが通りかかった。下半身むき出しで何を? リンダと火花が散る。「あなたって気むずかしくてケチくさい男ね」「君はうわべだけの女だ」「あら、ばれちゃった」「君は中身が空っぽの怖がりというわけか」「わたしはあなたと腹を割って話をしようなんて思っていない。器の小さな人で残念だわ。そんな人だからイダにすがりついているのね」「黙れ!」「人の話を遮らないで。イダはいずれ去るわ。手を離して。わたしやイダに触れたら警察を呼ぶわ。生徒に尊敬されるのが何だっていうの? そんなこといい加減に卒業したらどう?」悔しそうにクリステルはその場を離れるが、さてその夜▼しつこい男は当然のようにむし返す。「僕はあまり君を尊敬していない。なぜ僕を侮辱する」そう言って泣くのだ。「僕のことを恐れているのか。いつか刺されそうだ。君がリンダといると混乱する。耐えられない。彼女に全てを壊される。君はどんどん頑固になった。リンダは精神を病んでいる」リンダこそいい面の皮だと思うが、イダは男に押し切られ、リンダとは付き合わないと約束する。「なぜ無視するの?」とある日学校でリンダ。「例の学校があなたにも来てほしいといっているわ」「リンダ、もうあなたと会わない」「クリステルね。いいの、謝らないで」。イダの教室は荒れ放題だ。イダに絡む男子生徒がいる。イダはリンダにこういった。「あの子ヘンなの。わたしに床に這いつくばれというの」「なんですって」リンダは色をなす。「それで、わたしにおしっこをかけたのよ」リンダはまさかイダの妄想だと思わない。「校長に報告するわ」そこへクリステルが通りかかる。こんなにしょっちゅう通りかかるのは、彼がイダを監視しているからだろう。ふたりを見て「邪魔か?」即座に「ええ」とリンダ。「いいさ、そこでリンダと話していれば」不貞腐れて離れていく。「ほらね、いい人でしょ。子作りするの」とイダ。「彼と?」とリンダはきき返す。不安で真っ黒な雲が押し寄せるような気がする▼その日、下校してからのイダとクリステルの会話。「妊娠したかも」「出て行け。君は嘘を繰り返す。現実と妄想の区別がついていない」「わたしは病んでいるのよ」「どうしてほしい?」「わたしにおしっこをかけて」と横になる。「今すぐ立て。いかれている。立てよ」クリステルの目はサディスティックにメラメラ。望み通りにしてやり「3分で荷物をまとめて出て行け」大きなバッグに荷物を詰め込むイダに「待て、本気で出て行くつもりだったのか」どこまでややこしい連中なの。イダはシャワーを浴び、服を着替えさっぱりして再びバッグを持つ。「待て、愛している」と後を追うクリステル。外に走り出たイダはおんぶお化けを振り切るように全力疾走。走りながら顔が生き生きしてくる。よっぽど逃げたかったのね。でもねえ、サイコ男に「出て行け」と言われるまで自分で自分のこと、決められなかったの? このまま走って学校へ一直線、リンダに駆け込み、再出発することね。

 

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